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佐々木彬文の「四季・色・贅・食」 第11話 お茶壺の話

by staff on 2012/11/10, 土曜日

 

11月はお抹茶の「新茶」を楽しみます

 今回は茶壺の紐のお話です。 お茶人にとって11月はとても忙しい月です。 先ず、炉開きがあります。 今年は11月10日が大陰の日ですので、その日に炉を開かれる方が多いかと思います。 そして使われるのが新茶なのです。
 「ええっ?!」っておっしゃる方が多いと思います。 「新茶って八十八夜では?」 「はい、八十八夜は、御煎茶の旬なのです。」

 御抹茶は、茶壺に入れ和紙で封をして半年待ちます。そして、京の宇治より送られてくるのがこの時期なのです。

 

道を譲った 『茶壺道中』 の心 その1

 昔(江戸時代)は茶壺が旅をしましたので『お茶壷道中』という言葉がございました。

 お茶を御存じ無い方々が 『お茶壷道中』 と言いますと茶壺の前を横切って手打ちに成った話とか、大名の参勤交代と茶壺が出くわすと茶壺に道を譲らないといけない話とか、面白おかしく、さもとんでもない権力の象徴のように申されますが、それは違うと思います。


(佐々木彬文の茶道教室/くらしの器と絵 匣・くらしの教室 匣:https://www.supportyou.jp/saya/
 

 先ず、大名の参勤交代の話の場合です。 大名は、武家の嗜みとして茶道をいたしておりました。 茶道の心を重んじ、お茶を大切にし、権力よりも無為のお茶に対し敬意を払うことが、自然と『茶壺道中』を優先し、道を譲られたものであります。 決して権力の象徴なのではございません。 また、『茶壺道中』を邪魔したとしてお手打ちになった話は、茶道の心からは真逆な思想であります。
 正しき事を皆様お心にお止下さいませ。

 

伊勢神宮の鮑のお供えものが起因です

 さて、茶壺の紐の話なのです。 すっかり脱線してしまいました(笑)。
 茶壺には三つの結び方を飾っています。 それは、『眞・行・草』です。 草が属に結われます『淡路結び』なのです。これも、実は伊勢神宮にお供えされる鮑から起因しています。

 伊勢神宮の鮑のお供え物は古来より鮑を薄く細く剥いていき長い紐を作ります。 それをお供えしています。 その折の作業風景を表した絵は上野の芸大が所蔵しております。 職人が鮑の貝柱を紐に剥いていき、天日に干して、御供えするまでが描かれております。

鮑の貝柱を紐に剥く
鮑の貝柱を紐に剥く

 

干鮑を熨斗にする
干鮑を熨斗にする

 現代でも、この紐状の鮑を7センチ程に切り、お参りなさった方々に縁起物としてお配りしております。 鮑の紐を神様のお清めとして御供えの紐で結いましたものが始まりです。

水引の淡路結び
水引の淡路結び

 淡路では家内工業として盛んに水引が作られておりましたので、その水引で鮑結び(アワビむすび)の結び方を致し、その結び方が転じ「淡路結び」と呼ばれるようになりました、今回のお話も淡路結びとさせて頂きます。

 

鮑から淡路結び?

 茶壺の正面の結びには環が六つ御座います、是は六道の輪廻を表しているのではと思います。 そして、右が、行で淡路結びの変形で下の輪が結纏められております。 そして、左が祝袋等に水引で結ばれて居ります『淡路結び』です。

茶壺の正面:環が六つある
茶壺の正面:環が六つある

 

向かって左が『淡路結び』
向かって左が『淡路結び』

 お茶人は、口切のお茶事の日は朝からそわそわです、飾りひもの結びを練習したりと・・・そうなんです、茶壺は最初網掛けの袋に入っております。 それを解き、茶壺の口の和紙の封印を小刀で切り茶を取り出し、また封をして、次に紐飾りを『眞・行・草』と結び飾ります。

 取りだしたお茶は臼で挽き、茶入れに入れ、お点前へと移って行きます。 紐を結ぶのに与えられる時間10分も有りません。 速やかに結ばなければ成りません。 とろとろしてはいけないのです。 ですから朝早くから気合を入れてそわそわしています(笑)。

 

草のお点前は大切な基礎

 茶壺の眞・行・草の紐の配置をお話しさせて頂きましたが、とても大切な関連が有ります。 それは、水差しの蓋を置く位置なのです。

 眞のお点前は(このお点前はほとんどの方が目に触れる事が委と思います。 奥義でも有り人様に見せるお手前では無いからです。) 「眞の位置」に水差しの蓋を置きます。

 行のお手前では「行の位置」に。 そして、多くの方が普段ご覧に成っているお点前の草のお点前は「草の位置」に水差しの蓋を置きます。

 眞のお点前が許されて初めて関連に気づきます。 ですから、多くの方がお稽古なさっている草のお点前は基本中の基本、とても大切なのです。 「あれはあれ・これはこれ」では無く、全てのものが関連付けられて成り立っております。 心に一つ一つを刻みながらお稽古して頂きますと眞に登りました時に、なぜ「草のお点前」が大切な基礎なのか気づかれると思います。

 御茶のお点前は集中する訓練でもあります。 集中する事を鍛え上げます。 五感を鋭敏し廻りの気配に気を配り、背中にも目が付いているように気を配る事が出来るようになると思います。

 

道を譲った 『茶壺道中』 の心 その2

 とても大切な事なのですが、最近街を歩いておりまして気に掛かることがございます。

 道の真ん中を2~3人が広がって歩き道をふさいだり、お一人でも道の真ん中を悠々と歩かれる方をお見受けいたします。
 早い話が交通の邪魔をしている方を、高齢者から若い方々まで数多く見掛けます。

 中にはお急ぎの方もいられると思います。 自分の道だと言わんばかりに自分中心で歩かれずに、少し人に譲るお心を持って頂きたいのです。

 『道は端を歩きなさい』と親から教わった事はございませんでしょうか。 私が子供の折厳しく言われておりました。 このお話を読んだ方だけでもちょっと心して頂きますと、横浜の街も風通しが良く成るのではないかと思います。

 人に譲る心を持たれる方は争い等には無縁ではと思います。

 

童歌「ずいずいずっころばし」に残る『茶壺道中』
 
「ずいずいずっころばし」ごまみそずい
茶壺に追われてとっぴんしゃん
抜けたら、どんどこしょ
俵のねずみが米食ってちゅう、
ちゅうちゅうちゅう
おっとさんがよんでも、おっかさんがよんでも、
行きっこなしよ
井戸のまわりで、お茶碗欠いたのだぁれ

 

茶懐石料理を楽しむ

 

佐々木画伯絵画展のお知らせ

日時:2012年11月23日(祝)、24日(日) 午前11時~
会場:横浜舶来館『ワインとグルメフェア』主催:ワインブティック伏見(TEL 045-771-4587)
横浜ワールドポーターズ6階「イベントホールA」

イベントのチラシ表示(PDF)

 

佐々木彬文プロフィール

 日本画家(彬文会主宰)
 茶道講師(裏千家 佐々木宗秀)
 クラッシックギター演奏者

文・絵:佐々木彬文(日本画家・裏千家茶道講師)/編集:高野慈子

 

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