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ビジネスの創造方程式で勝ち抜こう(第7回)

by staff on 2012/11/10, 土曜日

デジタルハリウッド大学大学院/NVD株式会社 松本英博

1.収益モデルの基本は?

 事業としてアイデアを事業ネタにして、次に考えるのは採算が取れるかということですね。 今回は、採算が取れる、つまり、利益がでるかどうかを考えてみましょう。

 利益を収めて、継続的に、つぎの取引に使える、さらに、欲しい仕入れや人財が確保できる必要があります。 一過性で終わることではなく、継続的に、といったことが重要になります。収益モデルは、ビジネスモデルと同じと思われるかもしれませんが、特に利益がでること、収益に着目した儲け方や手段を指します。

 収益モデルの基本は、事業体というクルマが、継続的に走れるための燃料 (利益) にあたると考えれば分かりやすいでしょう。 クルマが走るためには、燃料を継続的にエンジンにおくらねばなりません。燃料がなくなればエンジンはそのうちに止まります。 同様に、利益が出なくなり収益が著しく低下すると事業は採算が取れなくなり、継続できなくなります。 燃料がなくなると止まってしまうことを防ぐために、燃料を貯めて必要な時にエンジンにおくる仕組みが必要となります。 つまり燃料タンクと燃料系統が必要になります。収益モデルは、燃料タンクと燃料系統を指し、具体的に利益を確保して、必要な時に事業に再投資するといったメカニズムを指すのです。 前回のビジネスモデルの検討で出たように、独立採算が取れる仕組みが出来ていれば、利益をある程度蓄積しておき、燃料タンクの役目を果たしてくれます。

 それでは、この燃料にあたる利益はどうして手に入れるのでしょうか。

 

2.利益源泉を探ろう

 利益はどこから生まれるのか。先ず、下の式を見てみましょう。

 ご覧のように、利益は、大きくつかめば、売上とコストの差になります。 つまり、売った対価からコスト(売るために必要な仕入れや人件費、販売管理費、その他の経費)を除いたものですね。 利益が0(ゼロ)であれば、収支トントンですが、これでは、燃料タンクに燃料を貯める余裕がないのと同様、次の取引で、事業を拡げることはできません。

 さらに、この構造を詳しく分解すると上図のような構造になります。 売上は、販売数と商品単価を掛けたものですから、どんどん要素に分解すると、上図のようになります。 面白いことに、販売をしなくても掛かる費用が浮き上がってきますね。固定費です。 つまり、売上数に応じてかかるコストとは別に、商品を置いておく場所やサービスを提供するためのインフラ、それを管理するモノやヒトにかかるコストです。

 お分かりでしょう。 この固定費がエンジンの比喩でいえば、アイドリングに必要な燃料というわけです。

 さて、上図の左辺、つまり利益を大きくするには、どんなことをすればよいのでしょうか。 ここで、一般的に自社がコントロールあるいは管理できる要素で考えるのが普通です。 そこで、要素をピックアップすると、
①販売数、②商品単価、③変動費、④固定費
となります。 最も売上に関わるのは①~③で、自社での努力は先ずは④固定費となります。 ④固定費を低く抑え、次に手をつけられるのは、①~③ですが、ここでちょっと注意が必要です。
①販売数と②商品単価のペアは、利益源泉とも言うべき要素です。 一般的に、単価を短期的に上下させることは一部の業種を除き出来ません。 となると、①販売数を上げることが重要になります。 しかし、①販売数は、③変動費に連動していますから、原価や発送費、手数料といったことを削減することも重要となります。
③変動費の削減の難しいところは、すべてが自社でコントロールできないことです。 例えば、仕入れ原価ですが、大量の仕入れが恒常的に行われるといった条件が成り立たない限り、仕入れ先も原価を低減してくれません。 つまり、①販売数が大きくなってこそ、③が低減できることになります。

 

3.事業当初は売上からかんがえよう ~積算方式の収益モデルの限界~

 筆者のところに相談に来られる多くの起業家の中に、積算方式の収益モデルを考える人がいます。 つまり、収益方程式で利益が出るには、コストを積み上げ、いくら売り上げればよいかという逆算を行う人です。

 ここに落とし穴があります。つまり、積算方式で収益モデルを考えると、コストを下げる検討もなしに、すべて売上数や商品単価に反映させることになります。 問題は、売上数で考えれば、予想以上に高い、背伸びした計画になりやすく、商品単価も、顧客のニーズに合わない、高価な設定になりかねません。

 このような落とし穴を避けるために、現状のニーズで適切な商品単価を設定してから、初期の販売数を予測して、どの程度のコストで抑えるべきかを考えましょう。 場合によっては採算が取れない場合もあります。

 しかし、予想した販売数が売れて初めて、商品単価や変動費のコントロールができることから、当初は赤字でも、やがて利益が出始めることもあります。 となると、この赤字期間にも収益モデルで、燃料があり続けるために必要な資金が必要となります。これが資本金の大方の姿です。

※「創造方程式」による発想のトレーニングがしたいというなら、参考に拙著「ヒット商品を生み出すネタ出し練習帳」をどうぞ。

次回(最終回)の予告

次回は、資本金のあり方を検討し、創造方程式の応用について考えます。

松本英博 プロフィール

 

松本 英博(まつもと ひでひろ)

デジタルハリウッド大学大学院 専任教授/NVD株式会社 代表取締役

 京都府出身。18年にわたりNECに勤務。同社のパーソナルメディア開発本部で、MPEG1でのマルチメディア技術の開発と国際標準化と日本工業規格 (JIS)化を行い、MIT(マサチューセッツ工科大学)メディアラボで画像圧縮技術を習得のため留学。帰国後、ネットワークス開発研究所ではWAPや i-モードなどの無線インターネットアクセス技術の応用製品の開発と国際標準化を技術マネジャーとして指揮。

 NEC退社後、ベンチャー投資会社ネオテニーにおいて大企業の新規事業開発支援、社内ベンチャーの事業化支援を行い、2002年9月にネオテニーから分離独立し、NVD株式会社(旧ネオテニーベンチャー開発)を設立、代表取締役に就任。大手企業の新規事業開発・社内ベンチャー育成などのコンサルティング 実績を持つ。

 IEEE(米国電子工学学会)会員、MIT日本人会会員。神奈川県商工労働部新産業ベンチャー事業認定委員、デジタルハリウッド大学大学院 専任教授、現在に至る。

 

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