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ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第1回)

by staff on 2013/4/10, 水曜日

大浦総合研究所 代表/大浦勇三

ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第1回)

 平安時代末期、「梁塵秘抄(りょうじんひしょう)」という歌謡集が編まれました。

 平安時代末期は、日本の歴史の中でも先が見えない激動の時代でした。編者は後白河法皇で1180年前後のものといわれます。書名の「梁塵」は、その歌で梁(はり)の塵(ちり)も動いたという故事からとられました。
多くの方は、
   遊びをせんとや生れけむ、戯れせんとや生れけん
   遊ぶ子供の声きけば、我が身さえこそ動がるれ
という代表的な歌を聞かれたことがあるのではないかと思います。

 今日、日本をとり巻く環境は、平安時代末期に負けず劣らずの大変革期にあり、その規模はグローバルな広がりを持っています。グローバル規模の動きになればなるほど、あらためて日本の文化風土、日本人の特性が一段と問われることになります。

 この20年、日本はなかなか前に進めず、ある意味で後退を余儀なくされましたが、”後ろ向きで前に進む”ことには限界があります。前へ進もうとする以上、きちんと正面を向く必要があります。平安時代の日本人は、乱世の中での人生を”遊び”"戯れ”と肚をくくり、難題や障害と真正面から向き合い、それを乗り越え生き抜いてきました。

 21世紀の我々も、この文化風土と特性を再認識し、覚悟を決めて思いを深め、生活と仕事に希望や喜び、愉快さや面白さを見出したいものです。

 

 このコラムでは、本業の経営コンサルティングを通じて少しずつ抽斗(ひきだし)に溜め込んできたものを、
   「遊びは仕事、仕事は遊び」
   「仕事は学び、学びは仕事」
   「学びは遊び、遊びは学び」
の思いのもと、「遊び()」「仕事()」「学び()」の形でゆるやかに束ねながら、しばし遊び戯れてみたいと思います。

“遊びをせんとや生れけん” 「遊」

世の中は地獄の上の花見かな、と小林一茶 葛飾北斎の心情とそのまま重なる
絵を描くことしか眼中にない人間の覚悟と楽観 七〇歳までの絵はすべて否定
九〇回も転居し、画号は三〇回も変えた 九〇歳を超える年齢まで頂点を追う
小布施でも 目覚めた床の上で、毎朝三枚の獅子図を描く、その遊び心と執念

 一茶が受け止めた心情は、そのまま葛飾北斎にも重なります。100歳まで生きることができれば絵の何たるかを感得できるとの執念も及ばず、90歳でその道を絶たれました。最高傑作の”富嶽三十六景”は73歳の作であり、これ以前のものはすべてとるに足らないと自ら切り捨てました。後には、ゴッホなど印象派の画家や、ドビュッシーなどの音楽家にも大きな影響を与えたのです。毎朝三枚の獅子図を描くという修練を最後まで自らに課しながら、その一方で”北斎漫画”という絵に関する膨大な知識ベースを作成しました。作業の段取りが極めてプロセス志向であることに何より驚かされます。やりたいこと一筋に生き抜いた人間としての凄さには感服するのみです。

“仕事をせんとや生れけん” 「献」

一九二九年の世界大恐慌は 何をどうしたらいいのか、誰にもわからなかった
大事なことは、何があっても逃げず信じる どんな馬でも、千里走れば、名馬
新技術、新素材、新製品の開発 それに加えて人材育成や契約の仕組みづくり
世も末と思われた大恐慌時代 これだけの新しいものが、次々に誕生している

 昨今では一時、世界大恐慌の再来との声も聞かれ、閉塞感が広く世界全体を覆っていました。しかし、1929年に襲った世界大恐慌の中でも、人類は時代環境を冷静かつ覚悟をもって受け止め、新たな未来を見据えて前向きにイノベーションに立ち向かい、その後の大きな繁栄のきっかけをつくりました。ナイロンや合成樹脂などの素材革命をはじめ、コピー機、ポラロイドカメラの登場にも道を切り開いたのです。”不況も人間がつくり出したものだから人間がなくせばいい”"不況は物の価値を知るための得難い経験であり、かつてない困難や不況からはかつてない革新が生まれ、かつてない飛躍が生まれる”との松下幸之助の洞察と確信は今でも世界に通用するものです。

“学びをせんとや生れけん” 「学」

巨財を築いた大阪商人 あらゆる道楽をし尽くし、究極の道楽は学問
自分の人生、心から納得したい お金があるだけでは、往生できない
学問は 自らの身を守り、他人さまを助ける術 人生を味わい尽くす
着物も人生も 時間をかけてこそ、身に馴染む それを最上と心得る

 浪速の大商人は、使い切れないほど稼ぎ、寄付し、大いに遊んだと聞きます。いくら遊んで蕩尽してもお金が増え続けるのであれば、とても使い切れるものではありません。もともと、道楽には、お金に対する不浄を洗い落とすという考え方があり、必要悪として商人の世界ではいい逃げ口上になっていたとも聞きます。しかし、それにも限度があり、道楽も行くところまで行くと、最後の到達点は何と学問。すべての欲得から解放されるところで現れるのが人間の本性であり芯棒。それが知的好奇心だとすると、人間も捨てたものではありません。それを生身で経験できたとなると、ある意味では、お見事というほかありません。

 今回とりあげた「遊・献・学」それぞれの4行文は、拙書「ビジネス梁塵秘抄(一)~(五)」(全10巻)から抽出したものです。次回以降も「遊・献・学」から各々4行文を一つずつ抽出してご紹介していきたいと思います。

「ビジネス梁塵秘抄」購入ご希望の方はこちらからどうぞ!
http://www.syplus.jp/ooura/

 

大浦勇三(おおうら ゆうぞう) プロフィール

大浦勇三(おおうら ゆうぞう)  

大浦総合研究所 代表 (http://www.mmjp.or.jp/ooura/

石川県七尾市出身。
早稲田大学卒業、筑波大学大学院修了。
米国経営コンサルティング会社 アーサー・D・リトル 主席コンサルタントを経て現職。
主担当領域は、経営改革/企業再生、経営戦略/情報通信技術戦略策定、業務改革/組織改革、研究開発/商品開発マネジメント、マーケティングマネジメント、ナレッジマネジメント、イノベーションマネジメント、サプライチェーンマネジメント、人材マネジメント、コーチング/メンタリング、プロジェクト/プログラムマネジメント、ベンチャービジネス支援等のコンサルティング。

筑波大学大学院講師、城西国際大学客員教授、名城大学講師、産業能率大学講師、中小企業大学校講師などを歴任。

主な著作物:

  • 「ビジネス梁塵秘抄(一)~(六)」<全10巻>(大浦総合研究所:PDF版)
  • 「イノベーション・ノート」(PHP研究所)
  • 「ITプロジェクトマネジャーのためのコーチング入門」(ソフトリサーチセンター)
  • 「図解 日本版LLP/LLCまるわかり」(PHP研究所)
  • 「IT技術者キャリアアップのためのメンタリング技法」(ソフトリサーチセンター)
  • 「よいコンサルタントの見分け方、かかり方」(清話会)
  • 「日本のモノづくり - 52の論点」<共著>(日本メンテナンス協会)
  • 「現場主導型の組織運営とスピード戦略」(日本監督士協会)
  • 「eコミュニティがビジネスを変える」<訳>(東洋経済新報社)
  • 「ナレッジマネジメントが見る見るわかる」(サンマーク出版)
  • 「図解 ナレッジ・カンパニー」(東洋経済新報社)
  • 「ナレッジマネジメント革命」(東洋経済新報社 )
  • 「図解 グローバル・スタンダード革命」(東洋経済新報社)
  • 「業務改革成功への情報技術活用」(東洋経済新報社)
  • 「情報化戦略と投資評価・システム運用管理の実際」<編著>(企業研究会)
  • 「会社改革実務辞典」<共著>(産業調査会)
  • 「プロジェクトマネジャー(PM)の育成・スキルアップのためのメンタリングの進め方と実践法」 (ソフトリサーチセンター:CD-ROM版)   など

 

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