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佐々木彬文の「四季・色・贅・食」 第17話 烏帽子(えぼし)のお話

by staff on 2013/5/10, 金曜日

 五月空が綺麗な季節に成りました。空に泳ぐ鯉幟! やはり この様な景色を見ると安心して暮らせる平和な世の中であって欲しいと願います。美しい日本の景色の一つです。

 今回は、端午の節句に因んだお話です。それは、烏帽子(えぼし)のお話です。

 

烏帽子とは?

 「烏帽子ってご存知ですか?」
 皆様、結構目にしています。先ずは、神社の神主様、それから、テレビ時代劇の(平安時代から江戸城松の廊下事件までの)役者さんがかぶっているのをご覧になられているはずです。

 では、「烏帽子の種類は?」って聞かれると、「どれまでが烏帽子かしら?」となると思います。公家・武家・町人(安土時代頃までが多い、その後衰退して行きます)・・・皆さん被っている黒い被り物は、形が違いますが全て烏帽子なのです。じつに種類が多いのです。

 


日本画家 佐々木彬文画

 

烏帽子で身分や出身が伺える?

 先ず良く目にするのが神主様の被って居られる江戸時代からの立烏帽子。巫女の背の高い立烏帽子。この二つ呼び名は同じ立烏帽子なのです。全然形が違いますが同じ「立烏帽子」です! 背の高いのが平安時代の立烏帽子、宮司様の烏帽子が江戸時代の立烏帽子です。

 平安時代の立烏帽子は、風が吹くと飛ばされたり、結構厄介なものでした。そこで、ちょっとカジュアルに先端三分の一程を折り曲げた烏帽子が、鎌倉以降に工夫され流行りました。

 

 この烏帽子は、隠居なさった上皇・公家が良く使われ「風折烏帽子」と呼ばれています。此の折れ方に決まりが有り、右折れと左折れがあります。上皇並びに許された公家(地下家)が右折れ、一般的には左折れです。

 時代が下がり、宮司さんの被って居られる立烏帽子になりますと(右折れ・左折れが烏帽子の正面に)眉と呼ばれる箇所が有り、そこが右折れ左折れに伝わって参りました。ちなみに宮司様の眉は両折れでこれを『諸眉』と呼びます。

 家に伝わって居た物が右眉でしたので源氏が右・平家が左かと思って居たのですが、この度、端午の節句に因んだお話をと思い調べ直しましたら、この烏帽子結構厄介です。種類も多いし、紐の掛け方にも決まりが有り、一度のお話ではなかなか済みそうに有りません。今回は、気の向くままに独断と偏見で書かせて頂きます。

 

 

鳥と烏・・・えぼしは「からす帽子」と書く

 烏帽子の漢字の『烏』これ鳥という漢字では無いですよね、『からす・烏』です! 烏帽子は漆で塗り固め黒い色をしておりますので、烏の字が充てられたと思います。

 それに、日本では古来より烏は神の使いとして(ヒッチコックでは悪役ですが)大切にされてきました。皆様良く御存じの八咫烏がその代表です。そうです、サッカー日本代表のエンブレムの鳥です。


烏天狗

 それ以外に鞍馬山に住む天狗様は「烏天狗」を引き連れてお山を守って居られます。黒色はこの様な所から『烏』の漢字が使われています。

 

絽と和紙

 次に材質ですが、平安時代には絽が使われていました。絽は風通しが良いので頭は蒸れません。町人は、和紙に漆を塗ったものや布の烏帽子を付けて居りました。

 室町期の面白い絵が国立博物館に所蔵されています。それは、鎌倉時代に(賭け双六だと思うのですが)賭けに負けて身包み剥がれても烏帽子だけは被っている図です。そのころは、男子被り物を脱いだところを人に見られるということはとても恥ずかしい事だった様です。『裸よりはずかし~~~!』だったようです。(笑) 時代時代で価値観は変わります。皆様余り固定観念でものを決めつけませんように!

 時代が下がり江戸時代に成りますと殆ど紙製です。紙に漆を塗り、二つ折りに折畳み、袂に入れられるように作られたものも有ります。全部はかけません。今回はこの位で!(ペコリ)ごめんなさい。興味のある方は、調べてみて下さい。

 

烏帽子を注文するって?

 烏帽子作っている家がまだ四家在ります。宜しければ注文してみてはいかがでしょうか。そうそう、日本伝統文化関連暇だと思いでしょうが、この烏帽子を伝え作っている家(各御流儀が有るそうですが)は注文が多くて結構忙しいそうです。今すぐ発注しても待たされます。特に春秋に注文が集中するようです。お正月前とかお祭りに合わせて、その前に、注文が集中するようです。

 

日本料理人の帽子

 最後に、日本料理の料理人さん達が被っている帽子は、正面の眉は皆右折れなのです。これは、小生が考えますに四条家と関わりが有るのでは?! 四条家は、羽林家(※注1)のご家格であり、烏帽子の右折れを賜った家格で、四条流包丁道のお家柄です。現在も四条流の料理人は多く居られます。それで、帽子の折れが四条家に倣い、右折れになっているのではないかと思えるのです。調べると小さな事でも素敵な歴史があります。何にでも意味が有るものです。

 お茶の作法の中でも、ちょっとした事に、その深く見つめて工夫されたお手前に、驚かされることがございます。

注1)羽林とは「の如く速く、の如く多い」という意で、中国では北辰(北斗星)を守護する星の名称。それが転じて皇帝(天子)を護る宮中の宿衛の官名となった。日本では近衛府の別称(唐名)となり、近衛の将を任ずる家、すなわち羽林家となった。 (ウィキペディアより)

 

佐々木彬文プロフィール

 日本画家(彬文会主宰)
 茶道講師(裏千家 佐々木宗秀)
 クラッシックギター演奏者

文・絵:佐々木彬文(日本画家・裏千家茶道講師)/構成:高野慈子

 

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