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ビジネスのフレームワーク入門(第6回)

by staff on 2013/6/10, 月曜日

デジタルハリウッド大学大学院/NVD株式会社 松本英博

1.同じ図形でもフレームワークが異なると分析も違う

 これまではフレームワークレームの紹介に留まっていましたが、今回はフレームワークを使った分析を考えてみましょう。

ビジネスでよく使うフレームワークでの分析

 ビジネスでは、迅速な判断と実行、さらに競合や市場といった多くの情報の中で自社の採るべき戦略を練る必要があります。フレームワークは多くの先人が培ってきたノウハウや知恵があり、これを利用することで、自社の戦略の評価もできます。

 戦略評価で代表的なフレームワークとして、3Sがあります。多少日本的な3Sですが、3つのSは、「選択」、「差別化」、「集中」です。良く言われる「選択と集中」に「差別化」という戦略を継続して遂行する原点も分析しようというモノです。

戦略の3Sによる分析


図 1 戦略の3つのS

 図1に示すように分析と言ってもかなりシンプルな図で書くことができます。このフレームワークの特徴は
①選択、②差別化、③集中のどれが優位といった内容ではなく、3つのバランスで成り立ち、1つを変えれば、他の2つが変わると言った相互関係にあることが分かります。選択をすれば何に集中し、何をもって差別化することが出来るかといった流れを示します。一方で、差別化を検討対象とすれば、差別化の中で何を特に取り上げ、何を捨てるのかと言った流れとも読み取れます。

【3Sの分析】

①選択:重点である分野を明確にすることです。実行する、あえてしないを決めることと考えてください。また、選択することで、同時に選択できない事項も出てきます。そのような事項こそ、縮小撤退などの対象と考える候補となります。

②差別化:他社との違いを明確にすることです。差別化できる事項がなければ競合他社に勝てません。第三者的に自己満足ではなく、顧客に差別化のポイントをアピールすることが重要です。

③集中:経営資源(ヒト、モノ、カネ、情報)を集め、その分野でナンバー1を狙うことで、ナンバー2では、その分野での主導権は握れない事になります。
このように分析して、今自社の成長には、3つのSで専門特化する領域を見出し、それを実行する方法やアプローチを検討することになります。

本業の強みから新規の事業ドメインを見出すフレームワーク


図 2 事業領域を決めるフレームワーク

 図2は、図1と同じように見えますが、フレームワークはその軸の切り出しが違えば、使われる用途も変わることを見てみましょう。

 今回は、前回のように新規あるいは既存の事業とは無関係に戦略を考える場合ではなく、これから参入しようとする事業領域(ドメイン)を決定するものです。

 このフレームワークの要素は、図1と同じ3つですが、3Sのバランスでなはなく、同時に成立することを見出すフレームワークです。いわば、数学の時間で習った、連立方程式を解くようなフレームワークです。

【新規事業のドメイン分析】

①顧客層:どのような年齢、性別、地域、所得、経験と言ったプロフィールを持った顧客を狙うかということです。B2B(企業間取引)であれば、狙うべき顧客企業のプロフィールとなります。

②ニーズ:これは①を仮に決定した後で、その需要や希望を分析しなければなりません。さらに、そのニーズが顧客共通のニーズなのか、個別の重要や希望なのかも判断しなければなりません。

③コア・コンピュタンス:得意分野でどんな差別化できる力を想定あるいは発揮できるかです。この力は事業を継続させる源泉であり、成長の源でもあります。企業であれば、独自の経営資源(ヒト、カネ、モノ、情報)となります。あるいは顧客へのアクセス力、販売チャネルの力となります。

 さらに、狙うべきドメインは、自社事業のすそ野も含めた領域と考えてください。例えば、トヨタ自動車は、メーカーとして自動車を供給することもドメインですが、自社の自動車を買いやすくするために、金融・ファイナンス事業も周辺事業としてドメインに含め成功しています。こう考えれば、自社の既存事業の周りに多くの新規の事業が眠っていることが見えてくるはずです。その時、図2の3つの要素が同時に成り立たねば事業として進まない事も分かるでしょう。

2.図解とフレームワーク

 さて、類似した図で書き表すことが出来るフレームワークを紹介しました。図1と図2の根本的な違いは、バランスと同時解というように、その分析の方法や使われ方に依存します。

 そこで良くあるミスとして図解=フレームワークと考えてしまうことです。図解は読み手へのメッセージであり、フレームワークでの分析の「結果」に主眼をおくものです。従って、フレームワークは結果を図解していく際の「途中経過」の枠組みであって、読み手に興味があるかどうか分かりませんし、混乱を興す可能性もあります。

 例えば、3Sで商品戦略を検討していく際に、「選択」・「集中」・「差別化」を考えることはフレームワークを使っての検討で問題はありませんが、これを図1に書き込み、読み手に「このように分析しました」とだけ示すのは決してうまい方法ではないのです。図解したいなら、と問えば、集中すべき事項を大きく書いてその成功条件など、分析で得られた仮説を読み手に伝えねばならないのです。

 分析で使った図解をそのまま使うのではなく、読み手にその行動を促す意味でも、選択、集中、差別化の何れを今やるべきだという仮説まで表現できれば良いのです。

※発想や創造に関する「創造方程式」による発想のトレーニングがしたいというなら、参考に拙著「ヒット商品を生み出すネタ出し練習帳」をどうぞ。

次回の予告

次回は、フレームワークとロジカルシンキング(論理思考)の関係を解説してフレームワークについてまとめていきたいと思います。

松本英博 プロフィール

 

松本 英博(まつもと ひでひろ)

デジタルハリウッド大学大学院 専任教授/NVD株式会社 代表取締役

 京都府出身。18年にわたりNECに勤務。同社のパーソナルメディア開発本部で、MPEG1でのマルチメディア技術の開発と国際標準化と日本工業規格 (JIS)化を行い、MIT(マサチューセッツ工科大学)メディアラボで画像圧縮技術を習得のため留学。帰国後、ネットワークス開発研究所ではWAPや i-モードなどの無線インターネットアクセス技術の応用製品の開発と国際標準化を技術マネジャーとして指揮。

 NEC退社後、ベンチャー投資会社ネオテニーにおいて大企業の新規事業開発支援、社内ベンチャーの事業化支援を行い、2002年9月にネオテニーから分離独立し、NVD株式会社(旧ネオテニーベンチャー開発)を設立、代表取締役に就任。大手企業の新規事業開発・社内ベンチャー育成などのコンサルティング 実績を持つ。

 IEEE(米国電子工学学会)会員、MIT日本人会会員。神奈川県商工労働部新産業ベンチャー事業認定委員、デジタルハリウッド大学大学院 専任教授、現在に至る。

 

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