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ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第3回)

by staff on 2013/6/10, 月曜日

大浦総合研究所 代表/大浦勇三

ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第3回)

遊びをせんとや生れけむ、戯れせんとや生れけん
遊ぶ子供の声きけば、我が身さえこそ動がるれ

- 梁塵秘抄 -

 平安時代末期以降の11世紀後半から12世紀にかけて、当世風(今様)の俗謡、民謡、和讃などは下層階級にあたる老若男女に広く歌われましたが、武士階級や、上層階級の貴族、皇族の一部にも親しまれ、後白河法皇のように編者として、積極的に関わる支持者も現れました。この時代は、乱世でもあり、人々が生死の間をさまよう大変な時代でした。一方で管理とは無縁に近く、ひたすら自己責任・自由意志のもと、人間の本能に向き合った生き方をするしかない時代でもありました。どんな方法や手段を用いてでも生き続ける意志が要求され、食べることは生きるためのエネルギーであることを超えて、生命の輝き・日々の刷新でもありました。食い扶持を探し求めながらも、時に遊び、時に学ぶ生き方に人間の原点を見る思いがします。現在、労働の二極分化が静かに進行し、”生きる・働く”ということの再定義が求められています。“知的創造力(知的好奇心)”や“コミュニケーション力(関係性構築力)”の周辺を除く仕事が、静かで着実な形で人間からコンピュータにシフトしているように感じます。今年”プロ将棋界”で起こったことが、限定した用途の形をとりながらも様々な分野に広がっていきそうです。ただ、本質は“ライバルではなくパートナー”であることをもう一度再確認しておきたいものです。

“遊びをせんとや生れけん” 「遊」

宮本武蔵が決闘で使った木刀は 佐々木小次郎の刀より長くつくったという
常に相手より、長い刀で勝ってきた小次郎への 逆手をとった作戦といえる
勝機を冷静に見極めたうえで、周到に準備 神仏は敬うが、頼らない自然体
野生動物は、最後まで弱気を見せないもの 土壇場でも孤独だけは怖れない

 宮本武蔵といえば巌流島の決闘。相手の佐々木小次郎は、三尺三寸(約1メートル)の太刀(備前長船長光)、通称”物干し竿”による剣法”燕返し”で数多の敵を倒してきました。対する宮本武蔵は、常に相手より長い刀で勝ってきた小次郎への逆手をとった作戦をとり、佐々木小次郎の刀より長いものを用いたと伝えられています。武蔵は剣術家・兵法家として二天一流の祖であると同時に、重要文化財に指定されている”鵜図”"枯木鳴鵙図(こぼくめいげきず)”に代表される水墨画にも類まれな才能を発揮しました。剣と同様に一切の無駄をそぎ落とし、震えあがるような斬れ味を見せています。晩年には熊本市近郊の霊巌洞で”五輪書”を執筆、書名の由来は密教の五輪(五大)からきたといわれ、”地・水・火・風・空”の五巻からなります。あれほどの剣豪でも”最後は自分の心との闘い”であることを窺い知ることができます。

“仕事をせんとや生れけん” 「献」

事業とデザイン、デザインの意味が変化 意匠だけではなくアイデアや計画を包含
顧客の意向を重視し顧客の夢の実現に応える デザインはあくまで双方向で推進
顧客の反応をみてデザインを固める 韓国の躍進、日本製造業への冷徹な分析
技術では及ばなくともデザイン力で勝負できると見抜く 負けない自信を強める

 デザインという概念が従来の範囲を越えて使われるようになってきました。ビジネスモデルに直結し、収益構造の根幹と密接につながるようになっています。その本質を見抜き、日本の製造業に正面から挑戦してきたのが韓国企業、特にサムスンです。日本企業はもう一度、モノづくりの再定義が求められているといえそうです。企業におけるデザインの位置付けは、従来の意匠・造型だけでなく戦略や組織・制度など、“要素間のあらゆる関係性の設計”までをも含み、全体像の見える化と伝達・共有に向かっています。商品の構想・企画・開発からブランド確立までをも統合するものです。“デザイン”の問題を重要な戦略テーマと捉え、広義の技術/スキルとして新しく定義し直し、組織文化風土の中に浸透させていくことが急がれているように思います。

“学びをせんとや生れけん” 「学」

宝が眠る場所こそ人の心、とハプスブルグ家 頭で考える前に心眼で観察する
成功する人間は、失敗の反省もしっかりするが 成功の内省も手堅く怠らない
生きる道具を大事にすると 道具も人間の期待に応えて、成功に導いてくれる
武士は、トンボを勝虫と改名 トンボもムカデも、死を前に絶対後退りしない

 最後のよりどころは、いつの時代、どこの国でも“人の心”ということがいえそうです。失敗だけでなく成功した時の対応が、人間のその後の成長に大きな影響を与えるということでしょうか。トンボは絶対に後退しないということから、戦国時代は武士の世界で勝虫として重宝されました。後退りせず、ひたすら前に向かっていくということです。確かに、子供の頃のトンボ捕りでは、いつもトンボの正面に立って捕まえたことを思い出します。作家の村上春樹さんは、最近”魂のネットワーク”の大切さを語っています。人と人のつながりに強い関心を持つようになったこと、生身の人間への興味が増してきたことを理由にあげています。音楽の世界でもダニエル・ラノワが”ソウル・マイニング(魂の採掘)”の思いを伝えています。“何でもいいから深いところへ入れ。深いところではすべてが音楽や法則になる”と詠ったのは詩人リルケです。

「遊びは仕事、仕事は遊び」
「仕事は学び、学びは仕事」
「学びは遊び、遊びは学び」

 今回とりあげた「遊・献・学」それぞれの4行文は、拙書「ビジネス梁塵秘抄(一)~(五)」(全10巻)から抽出したものです。次回以降も「遊・献・学」から各々4行文を一つずつ抽出してご紹介していきたいと思います。

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(第3回了)

 

大浦勇三(おおうら ゆうぞう) プロフィール

大浦勇三(おおうら ゆうぞう)  

大浦総合研究所 代表 (http://www.mmjp.or.jp/ooura/

石川県七尾市出身。
早稲田大学卒業、筑波大学大学院修了。
米国経営コンサルティング会社 アーサー・D・リトル 主席コンサルタントを経て現職。
主担当領域は、経営改革/企業再生、経営戦略/情報通信技術戦略策定、業務改革/組織改革、研究開発/商品開発マネジメント、マーケティングマネジメント、ナレッジマネジメント、イノベーションマネジメント、サプライチェーンマネジメント、人材マネジメント、コーチング/メンタリング、プロジェクト/プログラムマネジメント、ベンチャービジネス支援等のコンサルティング。

筑波大学大学院講師、城西国際大学客員教授、名城大学講師、産業能率大学講師、中小企業大学校講師などを歴任。

主な著作物:

  • 「ビジネス梁塵秘抄(一)~(六)」<全10巻>(大浦総合研究所:PDF版)
  • 「イノベーション・ノート」(PHP研究所)
  • 「ITプロジェクトマネジャーのためのコーチング入門」(ソフトリサーチセンター)
  • 「図解 日本版LLP/LLCまるわかり」(PHP研究所)
  • 「IT技術者キャリアアップのためのメンタリング技法」(ソフトリサーチセンター)
  • 「よいコンサルタントの見分け方、かかり方」(清話会)
  • 「日本のモノづくり - 52の論点」<共著>(日本メンテナンス協会)
  • 「現場主導型の組織運営とスピード戦略」(日本監督士協会)
  • 「eコミュニティがビジネスを変える」<訳>(東洋経済新報社)
  • 「ナレッジマネジメントが見る見るわかる」(サンマーク出版)
  • 「図解 ナレッジ・カンパニー」(東洋経済新報社)
  • 「ナレッジマネジメント革命」(東洋経済新報社 )
  • 「図解 グローバル・スタンダード革命」(東洋経済新報社)
  • 「業務改革成功への情報技術活用」(東洋経済新報社)
  • 「情報化戦略と投資評価・システム運用管理の実際」<編著>(企業研究会)
  • 「会社改革実務辞典」<共著>(産業調査会)
  • 「プロジェクトマネジャー(PM)の育成・スキルアップのためのメンタリングの進め方と実践法」 (ソフトリサーチセンター:CD-ROM版)   など

 

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