くらしの器と絵 日本文化の魅力をヨコハマから世界に。重田葉子さんの美の世界
第三回 ヨコハマ趣味人は、有限会社 匣(さや) 代表取締役の重田葉子さんです。
東神奈川で「くらしの器と絵 匣(さや)」経営する重田葉子さん。サロン風の店内では、陶磁器や絵画の販売を行なう傍ら、作家さんの個展や、茶道教室、「源氏物語を読む会」、「簡易金継ぎ」教室、「ワイン&チーズ」の会など、各種お教室も好評開催中です。 高校の修学旅行で見つけた「現川焼」の湯呑みを原点に、日本文化に魅せられ続けてきた重田さんの世界を、サロンにお伺いして垣間見せていただきました。匣の人気商品、招き猫ちゃんたちも、「横浜逸品」で特別に販売します! |
名前:重田葉子(しげたようこ)さん |
「和の追求」の原点は、修学旅行で買った渋いお湯呑み
お仕事も趣味でも、和の文化に関わるものがお好きだと伺っていますが、それはいつ頃からだったのでしょう。
もともと、母が陶磁器が好き、料理も好きで器に凝っていたんですね。高校の修学旅行で長崎に行きまして、そのときになぜか、陶器屋さんにふっと入ってお湯呑みを買ったんです。後で調べると現川(うつつがわ)焼、といって、すごく渋い小ぶりの湯呑み五客揃い。若いのになぜこんなに渋いのを?というような。
当時からすでに、目が肥えていらしたんですね。
何か知らないですけどねえ。今思えばその頃から陶芸への目覚めがあったのでしょうかね。その後、大学1年のときから、友人のお母様にお茶を習い始めて通っていました。お茶はいろいろと日本の文化に触れる機会がありますから、そのときに陶器とかに興味を持つようになっていきました。
実は私は大学では体育会ヨット部だったんですが、葉山の合宿所のそばに、いつも陶芸の工房らしきものがあって気になっていたんですね。それで、卒業する年にそこを見せていただいたんです。そうしたら、芸大を出た栗山直子さんという方の工房だったんですが、その方が偶然私と同じ住宅にお住まいだったんです。それで「すごく興味があるんです」なんて話していたら、「新宿の朝日カルチャーセンターで教えているから来ませんか」と言われて、就職してからそこに通い始めたんです。
それから、結構夢中になってやったんですね・・・いまそこにひとつ作品があるんですけど・・・たまたまこれは自分でその頃の感性で手捻りで作ったんですけど、人に見せるとわりと褒められるから、お見せしていいかなって。(笑) でも3年くらいやって、陶芸は辞めちゃったんですよ。先生に紹介されて銀座のギャラリーに入ったんですね。そこが、物故作家というか、現代陶芸の素晴らしい陶器を扱うギャラリーだったので、魯山人とか、加藤唐九郎とか、素晴らしいものを手にして目にして、もう自分の作るものがお粗末に見えてきてしまって、作るのはそこで途絶えてしまいました。 |
勤めながらコツコツ貯金して、38歳で市ヶ尾に「匣(さや)」を開店!
むしろ、こういういいものをもっと広めなくちゃ、伝えなくちゃというお気持ちに?
日本の陶器ってこんなに素晴らしくて豊かなんだ、っていうのを、そのギャラリーで実感しました。釉薬の美しさとか、いろんな技術の高さとか。一般の方が買ったりするのは難しいですけど、技術を生かしてもっと手頃なものがいくらでもあるわけですから、そういうのを伝えることができたら・・と思ったんですね。
その後、ギャラリーでのんびりもしていられない、お給料を取ってちゃんと働かなくては、という家の事情もあって、また転職したりもしたんですが、いつか独立したいなという気持ちはずっとあったので、勤めながらコツコツと資金をためました。いろいろな職業を経験して、37歳でお勤めをやめて、独立したのが38歳のとき。青葉区の市ヶ尾に、「くらしの器と絵 匣」をオープンしました。
匣という文字は、「ハコ」と読んだりしますよね。
はい、「さや」という読みは辞書には載っていない。当て字なんです。本来は「ハコ」とか「コウ」でしか出てこないんですけど、焼き物業界では、この一文字、あるいは 「匣鉢」と書いて「さや」ということで、焼き物を焼成する道具なんですよ。大きさはいろいろとあるんですけど、箱状になっている蓋物の道具です。
市ヶ尾、という場所へのこだわりはいかがでしたか?
港北ニュータウンということで、これから新しく開ける地域。若い人がいっぱい移って来るし、地域的に延びるところだからいいんじゃないか、というのがまずありました。
あとは友人が市ヶ尾に住んでいたこともあって、その近くを見てみたんですね。当時社会人になってから友達になった同級生が呉服屋さんをやっていたんですが、移転したいと場所を探していた。それで、物件を一緒に見ているうちに、広いところを2人で借りて半々使ったほうがスペースもいっぱいとれるし、いいんじゃないか、という考えになって、20坪を半分に仕切って、共有スペースでお茶を飲める場所を作って、一番奥に和室、というような形にして、経営は別々、ということで始めました。
一軒に2つの違ったお店が入るというのは、面白い試みですよね。
そうですね。それが面白い試みだったので、結構日経流通とか、雑誌などにも取り上げられたりしました。
東神奈川へ移転して、お教室活動も本格化。
それで、7年前にこちらに越してこられた。
もうそのくらいになるんですね。契約更新の時期になったとき、自宅が東神奈川なのでどうしようかな、というのがあって、通勤も遠いので、長い目で見たら、自宅兼仕事場にしたほうがいいかと思い、引っ越しました。
お店の構えでやっていらっしゃったときと、今のサロンのスタイルになってからでは、何が変わりましたか。
やっぱり、お客様の密接度とかは変わりますね。こちらにいらっしゃるお客様とのほうが、親しくなりますね。
15階まで、通りすがりの人がのぞきにくる、ということはないですものね。
あはは(笑)、そうですよね。今はご紹介とかほぼ限定された方だけの形でやっていますので。あと、向こうでも茶道教室はやっていたんですが、ここに来てからはいろんなお教室にトライできてよかったなあと思います。3回で着られるようになる着付け教室とかもやっています。
他にはどんなお教室を?
定期的にやっているのが、「源氏物語を読む会」「茶道教室」・・・あと、「簡易金継ぎ教室」というのをやっています。源氏物語は、外国の方が記者として日本に赴任するときに読んでくるんだって新聞か何かに書いてありましたね。日本人の本質が全部含まれているんじゃないかなあと思うんです。根本的なもの。だから、記者の方はそれを読む、ということなのかなと。 最初は源氏物語はやるはずじゃなかったんですよ。もっとポピュラーな、百人一首とかにしようと思っていたんです。でも人が集まらなかったもので、源氏千年紀も近かったですし。来ている方は60-70代が中心なんですが、いろんな人生経験を経た方が読むとまた面白いみたいです。これにしてよかったなあ、と今になって思います。いろんなことが含まれていて勉強になりますし。 金継ぎは、美術品を修理するものなんですが、それをもっと簡易にした簡易金継ぎというのがあるんです。日常のものを安く直せますので、月に1回お教室を開いて、皆さん持ち込んできて千円くらいでやっているんですけど、もう2年くらいになりますかね。 |
主婦の方がまとめて持ってきたりとか、すごく喜ばれています。だってお安いものをそんなにお金かけて直せないですからね。バラバラに欠けた物を継いで・・・あと、急須の口とかお皿の縁がちょっと欠けたりしますよね。そういうときにパテで埋めて磨いて、金色の・・・金ではなくて真鍮の粉なんですけど、それを新漆と混ぜて仕上げしているんです。
かえって素敵な模様に見えますよね。
こういう時代ですから、皆さんモノを大事にされるようになってきているので、もっとこれは、広げて行きたいと思います。 これなんか、真っ二つに割れたんですよ。実はお茶会で使った菓子器なんですけど、雨の日で、持って帰ってきて車から家に運ぶ時に、梱包がちゃんとしていなくて、するっと落ちて割ってしまったんです。これは、銀座のギャラリーに勤めていた時に買って気に入っていたもので、すごく織部がきれい。でもこうして直って、今使っていますよ。 |
♪♪♪ 重田さんに教わったひとことアドバイス ♪♪♪
食器も「コーディネート」次第で素敵に見えます!やっぱり組み合わせですね。全部安いものばかり使っていると安っぽく見えてしまうんで、うまく組み合わせる。安くてもよく見えるものもあるし、ちょっといいものを取り混ぜていく、ということが大切ですよ。
「ご縁」でつながる、素敵な先生方との出会い。
金継ぎとか茶道のお教室は、重田さんご自身が教えていらっしゃるんですか?いえ、両方とも先生に来ていただいてやっています。 先生方とは、どういう風に出会っていらっしゃるんでしょうか?やはり皆さん「ご縁」ですね。向こうでお客様だった方がたまたま今源氏物語の先生なんですが、中央大学で古典の講師をしていらっしゃるんです。全然それは知らなかったんですが、話していてすごく楽しい面白い方で、よくよくお聞きしたらそんなことをやっていらして、この方の話を聞きたいなというのがひとつのきっかけですね。あとは、お友達の友達、とかご紹介とか、ほとんどそういう感じですね。 探しに行って見つけて!というようなことはない。自然な出会い。ないですね。自然に・・・という感じです。好奇心というんでしょうかね。何でも興味があるというか・・・自分では、縁の下の力持ちっていうか、「人を喜ばせたい」、サポート役みたいなのが好きだなあと感じますね。お教室をやっていても、素晴らしい才能ある先生が来て、生徒さんがそれで喜んで充実して帰ってくださることがとってもうれしい。 |
今後こんなお教室ができたらいいなあと言うようなお気持ちは?
テーブルコーディネートを中心にしていきたいと思っています。料理と器を、季節感を取り入れてご提案できれば、と。
ワインとチーズのセミナーはずっとやっています。これは大好評でいつも満杯、15人くらいになってしまうんですけど。やってよかったなと思います。日本人はチーズに慣れない方が多いんですが、ワインと組み合わせるとすごくおいしく食べられたりする。やっぱりこれは教わらないとわからない世界かな、と思うんですね。好きなのを勝手に飲んで食べればいいんですけど、ちょっと教わると食卓も豊かになりますし、器とも関連があるし、面白いなあ、新しい食卓文化、と思っています。
お茶もお花も大好きだから、それがまた仕事へと発展していく。
考えてみましたら、確かに趣味の延長が仕事になっているのかもしれませんね。そしてまた、仕事を通して趣味を深めていく、みたいなところがあるかもしれない。 じゃあ、改めて「ご趣味は何ですか?」と聞いてみましょう(笑)。仕事と趣味が重なっているので、「陶器が趣味」とは言えないですよね(笑)。でも、仕事を離れて今やっているのは、まずお花を習っています。広山流という、自然の形を大切にする自由花の流派。マイナーな流派だからないと思っていたんですが、市ヶ尾のときのお客様の中に、お教室をやっている方がいて、たまたま来てお話して、そこで習うようになったんです。 広山流は、花器だけでなく、なんでも器にして活けていいので、例えばビールのビンのようなものでもいいですし、急須にちょっとこう、お花を活けていいわけです。花は仕事を離れてホッとするから、やっぱり趣味なんでしょうね(笑)。 それにしても、すごく多趣味でいらっしゃいますよね。 |
考えてみると多趣味なのかもしれませんね。でもわりと広く浅く、という感じなのかしらと思います。和である、ということは共通していますよね。いつの間にかそういう風になってきたなあと思います。お茶とお花と源氏は、私の趣味になってきているかなという気がしますね。
お茶も本当に好きなんですよ。先生の資格は取っていないんですけど、18から習って、途中で先生や流派が代わったりはしているんですけど。本格的な正式なものじゃなくても楽しんでいいんじゃないかな、という気持ちがあるんです。例えば、テーブルで楽しむお茶、というお教室も以前に開いたんです。お茶の先生と相談して。そういうのはもっと進めていきたいなと思います。作法とかをあまり考えないで、テーブルでお客様をおもてなしするのはどうですか、という提案のような。
結局茶道って、すべてに気を配ってお客様を心からもてなす、というお作法なわけなんですよね。だからそれをもっとラフにした形で、テーブルで同じ心でもてなす、というのは通じているんだと思うんです。
今はなかなか床の間がある和室があって、というような家も少ないですからね。
そうなんです。ほんとにマンションなんかですと畳のあるところも少ないんですよね。そんなに人数はいないんですけれど、立礼もやるんですよ。イス席の茶道教室。脚がお悪い方も年齢がいくと増えてくるので、そういうのもこれからの時代には合うのかなという気がします。
9月の移転で、さらなる新しい広がりが楽しみです。
数年前に、ここの茶道教室で、白金の庭園美術館の中に茶室があるんですが、 そこを借りてお茶会を開きました。60名くらいの規模で、初めての試みだったんですが、私がコーディネートをして、先生に二席をお願いをして、一席だけ立礼を設けて、そこは私が担当したんです。いろんな流派の方に手伝ってもらって。
今神奈川県同友会の女性部会に所属しているんですけど、そこの会主催で、来年の3月13日には三渓園でお茶会をやることも決まっています。同友会は500-600人いるんですけど、そこの方々に呼びかけて、初めてお茶を体験する場を作りたいということで企画しました。
「婚活」じゃないですけど、堅苦しいものでなくて、今の若い女性たちが楽しむ気軽なお茶とかお花、テーブルコーディネートというのもありそうですよね。
そうですね、現代にマッチした、もっと手軽に楽しむ、というのもやっていきたいですね。実は7月いっぱいでここを移って、近くで2階なんですけど、場所が変わるんです。そうすると、広告宣伝もやりやすくなるので、一般の若い方に声をかけることもできるかなと思います。
8月は休みにして、9月にそのままポンと移るような形でやりたいなと思っています。駅からの距離はほとんど同じくらい。1階が駐車場で、2階を使って、という形になります。もう少し一般の方にも知ってもらえるようなものになると思います。ずっと探してはいて、なかなか適当な物件がなかったんですけど、急に希望するようなものが見つかったので、それもご縁かなあと思いますね。
将来、こういう風にしていきたいなあ、という夢はありますか?
今まではあまり横浜の地域にこだわっていなかったんですが、今度移転したらそこをベースに、本格的にやっていきたいと思っていますので、ちょっと地元、横浜とか神奈川のほうの作家さんをめぐってみたいなと思っているんです。横須賀のほうとか海沿いのほうにもいらっしゃるようなので、見てみたいなと思います。
あとは本当に夢になってしまいますけど、日本の陶芸を海外で紹介できたらいいなあと思います。たまたまこの前同友会の女性部会に、NYで働いていてジャパンセンターにいたという方がいたんですけど、その人と話していて冗談半分で「そのうちぜひNYで日本の陶芸を紹介できたら」なんて話をしていたんですよ(笑)。
ヨコハマ人としての思いに目覚めた、この頃。
1歳のときに横浜に引越してきて、育ったのはほぼ横浜です。でも私は中学から川崎の私立女子校に通いまして、大学も東京なので、遠距離通学だったんですね。横浜にお友達がたくさんいるような、地元に根付いた感じでは、あまりなかった。社会人になったときも勤めはずっと東京でした。横浜はすごく好きではあったけど、自分自身が横浜をベースに遊ぶ、というようなことはあまりなかったんですね。市ヶ尾に店を作った時に初めて、横浜との接点が深まったのかなという気がします。 あとはやっぱりここ。東神奈川に移ってきて、この辺りを中心に活動している方のお知り合いが増えてきて、この前初めて横浜パレードも見たんです。そのときに私も横浜人になってきたなあと思いましたね。 それでそろそろお仕事的にも横浜の作家さんを取り込むか、とそうですね!(笑) 横浜と東京の違いって何でしょうか。 |
港北ニュータウンの頃から数えて12~13年なんですよね。だんだん慣れてくると、ペース的にも少しゆったりしてますよね、東京よりも。あと、すごく人が親しみやすいっていうか、慣れるとすごく親切というか・・・人がいい、という感じを受けます。
「ヨコハマNOW」で「くらしの器と絵 匣(さや)」様の商品のご購入ができます。
ご購入はこちらからです。
笠間焼きの招き猫(ミニ)
♪♪♪ かなっくホール文化祭 ♪♪♪
2010年7月17日(土)~25日(日)まで、横浜市神奈川区民文化センター「かなっくホール」にて、『かなっくホール文化祭』が開催されます。
重田葉子さんも実行委員として参画。3Fのギャラリーで「かなっく“ワクワク”えほん広場」と、「区民 笑顔のフォト・フェスティバル」を担当されています。
アンティーク絵本のコーナーでは、日本のアンデルセンと言われた巌谷小波が紹介されます。
重田さんご自身が知人からお借りしたアンティーク絵本の数々(色使いもデザインも、今見ても斬新です)の披露や、小波のお孫さん によるトークショーなどのイベントも開催されます。
詳しくは、かなっくホール http://kanack-hall.jp まで。
本イベントは終了しました。
♪♪♪ くらしの器と絵 匣 (さや) ♪♪♪
営業日:月・火・水及び第1,2土日(祭日は休み) 営業時間:11:00~18:00
〒221-0821 横浜市神奈川区富家町1-13-1505 TEL 045(433)6117
JR「東神奈川」駅下車徒歩4分、東急東横線「東白楽」駅下車徒歩6分、京浜急行線「仲木戸」駅 下車徒歩5分
今の場所は7月いっぱいまで。9月から、新しい場所に移転します。
新住所:〒221-0045 横浜市神奈川区西神奈川一丁目8番4 (JR「東神奈川」駅 下車徒歩3分)
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