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ビジネスのフレームワーク入門(第7回)

by staff on 2013/7/10, 水曜日

デジタルハリウッド大学大学院/NVD株式会社 松本英博

1.フレームワークとロジカルシンキングの関係は

 さて、フレームワークの意味や使い方、分析などを解説してきましたが、まとめとして2回に分け、フレームワークとロジカルシンキング(論理思考)の関係について考えていきたいと思います。

 フレームワークについては分かったけれど、ロジカルシンキングについてはこれまで聞いていないと言われる読者にたいして、先ずロジカルシンキングについて解説していきましょう。そして、これまでみてきたフレームワークとの関係を示していきましょう。

ロジカルシンキングは論理学から

 日本語でロジカルシンキングは、論理思考と訳されます。名前からも分かるように、論理学から生まれてきたものですが、最も科学分野の基礎として論理学は発展しました。面白いことに、日本では、2000年以後、産業分野、とくに経営手法として、筋の通った、あるいは理路整然とした論理的思考としてブームとなりました。第三回のコラムでも取り上げたMECEもその一環で、もともとの論理学とは無関係のものです。いわば、それまでの経営手法やビジネスでの分析が無手勝流であったことを正して、論理思考を使おうというものです。経営上の難題を単純にし、誰が一目瞭然にして、相手を納得させ、相手と協調するための思考方法として発展しました。

 ビジネスとロジカルシンキングが密接であることが分かると、方法論が幾つか提唱されてきます。成果を論理的に導くことに着目されるようになりました。課題の設定から実行可能な対応策の考案、そして実際の行動の管理までの一連のプロセスを経て成果を上げていくためにロジカルシンキングがどんどん使われるようになりました。

ビジネス・ロジックとしてのロジカルシンキング

 そこで学問的な理論体系ではなく、成果を裏付ける論理としてロジカルシンキングが応用されるようになると、実務的な体系が出来上がってきます。詳細は、他に譲って、フレームワークとのつながりを軸にこの体系を見ていきましょう。

 ロジカルシンキングで重視する思考は、
①仮説思考、②ゼロベース思考、③ポジティブ思考、④フレームワーク思考
として経験的に体系化されていきます。

① 仮説思考

 仮説思考とは、「ある時点での仮説をもとに行動する」という考え方です。その仮説を検証し、課題の解決策を導いていきます。仮説が間違っていたら、新たな仮説を立てて検証していきます。
 無手勝流で行動するより、仮説を立てて行動する方が、資源や時間を効率的に使うことができます。仮説がないまま行動すると、思いつくもの全てを実行に移そうとしたり、行動にモレが生じたり可能性があります。

② ゼロベース思考

 セロベース思考とは、「既成概念を取り払い、何もないゼロベースの一から最善の答えを見つけ出す」という考え方です。環境変化の激しい現代では、ドッグイヤーと言われるように、1年前の当たり前が今日に通じないということが往々にしてあります。前例の修正だけで、通じないことが多くみられるようになってきます。そのため、過去の情報は一度白紙に戻してゼロベースで考えるということが重要になってくるのです。
 また、ゼロベース思考をすることにより、これまでより思考の枠が広がり、今までは考えもつかなかった解決法が見出せる可能性があります。

③ ポジティブ思考

 ポジティブ思考とは「今の解決策よりも更に良い解決策が存在する」という考え方です。ビジネスでは、ベストの答えは存在しません。なぜなら、その時点のベストは、環境が変わればベストな答えではないからです。このあたりは、仮説思考の場合と同じで、100%を目指すのではなく、あくまで限られた時間の中で、ベターな対応策を見つけることが重要になります。

④ フレームワーク思考

 これについては、これまでのコラムで示したように、「モレ、重複といったことを排除して無駄をなくすこと」がフレームワークの目的です。フレームワークは、本来なら事象ごとに個別に考えていくべきものです。しかし、先人や広く一般に知られているフレームワークを活用することで、考える時間の効率化を図ることもできます。

2.ロジカルシンキングを支えるフレームワーク

 さらに興味深いのは、ロジカルシンキングをつかって分析を行うとき、上でも述べたように、フレームワークが多用されます。ここでは、経済学者のドラッガーが提唱するイノベーション(技術革新)のフレームワークでその関係を見ていきます。

ドラッガーのイノベーションの7つの機会

表 1 ドラッガーのイノベーションとフレームワーク

ドラッガーは7つのチャンス、機会を捉え、革新的なアイデアや事業を巧く捉え、自社の変革につなげようと提唱しています。表1は、ドラッガーの7つのイノベーション機会とロジカルシンキングでの展開をみたもので、ビジネスの種やアイデアが多く含まれているがわかるでしょう。

 自社の存在、既得権、技術、コア・コンピュタンスを表1に対応して、その問いに答えるだけでも、ビジネス・チャンスが見えてくることもあります。ロジカルシンキングとフレームワークはこのように密接な関係であることがわかります。

※発想や創造に関する「創造方程式」による発想のトレーニングがしたいというなら、参考に拙著「ヒット商品を生み出すネタ出し練習帳」をどうぞ。

次回の予告

次回は、今回に引き続き、フレームワークとロジカルシンキングの関係をそれぞれのフレームワークで解説してまとめとしたいと思います。

松本英博 プロフィール

 

松本 英博(まつもと ひでひろ)

デジタルハリウッド大学大学院 専任教授/NVD株式会社 代表取締役

 京都府出身。18年にわたりNECに勤務。同社のパーソナルメディア開発本部で、MPEG1でのマルチメディア技術の開発と国際標準化と日本工業規格 (JIS)化を行い、MIT(マサチューセッツ工科大学)メディアラボで画像圧縮技術を習得のため留学。帰国後、ネットワークス開発研究所ではWAPや i-モードなどの無線インターネットアクセス技術の応用製品の開発と国際標準化を技術マネジャーとして指揮。

 NEC退社後、ベンチャー投資会社ネオテニーにおいて大企業の新規事業開発支援、社内ベンチャーの事業化支援を行い、2002年9月にネオテニーから分離独立し、NVD株式会社(旧ネオテニーベンチャー開発)を設立、代表取締役に就任。大手企業の新規事業開発・社内ベンチャー育成などのコンサルティング 実績を持つ。

 IEEE(米国電子工学学会)会員、MIT日本人会会員。神奈川県商工労働部新産業ベンチャー事業認定委員、デジタルハリウッド大学大学院 専任教授、現在に至る。

 

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