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ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第4回)

by staff on 2013/7/10, 水曜日

大浦総合研究所 代表/大浦勇三

ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第4回)

遊びをせんとや生れけむ、戯れせんとや生れけん
遊ぶ子供の声きけば、我が身さえこそ動がるれ

- 梁塵秘抄 -

 戦争の二十世紀から、世界が一つの村(グローバル・ヴィレッジ)になるとの大きな期待で始まった二十一世紀。ところが、地球のあちこちで紛争が頻発し、地球全体が梁塵秘抄の編まれた平安時代末期にも似た様相を呈しています。今こそ”遊びをせんとや生まれけむ”の気持ちに戻りたいですね。残されている梁塵秘抄を見る限り、ほとんどが仏や経典を讃える法文歌(ほうもんか)ですが、先のことがわからない不安の中での開き直りと覚悟だけは窺い知れます。“仏も昔は人なりき、我等も終には仏なり、三身仏性(さんじんぶっしょう)具せる身と、知られざりけるこそあはれなれ”。すべての人間は”仏性”をもっているのに、俗塵にまみれ、煩悩に迷い、なかなか悟りとまでは至らない。であれば、仏になろうとするより、自分の心の中の仏性に向き合って生きていこうということでしょうか。 “好きなもんやっているのはおもしろいですわ。しかし、先はみえません。真っ暗ですわ”と平成の浮世絵師・瀧秀水さんは語っています。分業であった“描く・彫る・刷る”の三役を一人でこなすことで、最初にイメージした感性が損なわれることなく絵の上に再現されています。確かに、お先真っ暗でない時代は今までもこれからもなさそうです。一人ひとりが自分の仏に向き合うことで、その仏が自分を守り、本来の自分にしてくれることを念ずること。自分が信じる好きな道を歩み、生き様を隠さず世に晒して恥じない、ということかもしれませんね。

“遊びをせんとや生れけん” 「遊」

ピカソは七種のグレーを使い分け 緑系や紫系のグレー、仮説・検証のプロセス
日本は才能より努力を評価・称賛 ユニークなアイデア・能力の格差には不寛容
世界村の時代 組織や個人、技術/スキルの強い・弱いの評価基準を再設計する
すべてを改めて客観視する 動中の工夫は静中に勝ること百千億倍、と白隠の書

 画家の眼は、一つの色に無限の可能性を見つけ出し、独自の世界を描くことに全身全霊を傾けます。日本画家の小倉遊亀も晩年、孫娘との散歩の中で、庭に何種類の緑色があるかを見つける遊びを楽しんだとのこと。ピカソに限らず、一流画家の視点と観察眼には驚くと同時に、これからのビジネスでは、ピーター・ドラッカーに学ぶとともに、パブロ・ピカソからも大いに栄養分を吸収する必要があるかもしれません。18世紀に活躍した禅僧の白隠は禅の教えを表した絵、特に達磨を数多く描いたことでも知られています。描いた数は一万点以上、代表作といわれる“半身達磨”は80歳を超えての最晩年の作で、黒い背景の中でのギョロ目の朱達磨。独学のもつ独自性・独創性に満ちて、一切の型から解放されています。”拙によって巧を超える”、まさに、ここ一番の工夫は静(巧)ではなく動(拙)の中にあることを絵が教えてくれているようです。

“仕事をせんとや生れけん” 「献」

企画が決まった後に どうしようかとやり方を考えるのは、最悪のパターン
苦しいのは日常茶飯事 組織力ばかりが強くなると、個人が委縮し弱くなる
論理的・客観的な思考と主観的な直感をフル稼働 現実を生の形で掌握する
大リーグのキャンプ 投手は捕手以外の野手の全てのポジションを経験する

 豊富な抽斗と確たる論点も持たずに、漫然と臨む企画会議で周囲がうなるような提案をすることは簡単ではありません。選ばれる企画は一つ、打率3割のヒット率なら大成功ですが、外れてもそこに残る膨大なアイデアは、単に知識の蓄積というよりは、感性・センスの蓄積であり、次の提案依頼への大いなる武器・財産になります。組織力の強みも大切ですが、最後は一人ひとりの力量の積分が勝敗を分けるということ。野球では、投手は九番目の野手と言われますが、大リーグでは実践練習でそれを血肉にする徹底ぶり、好投手に守備がすばらしい選手が多いのも頷けます。雅楽の修行でも全部の楽器をさらった上に舞まで学ばせられる、と雅楽演奏家の東儀秀樹さんは語っています。全体を身につけた上でこそ、個々の楽器が演奏できるとのこと。まさに、鳥の眼・虫の眼・魚の眼。上から下から、更に広角から本質を捉える必要があるということでしょうか。

“学びをせんとや生れけん” 「学」

物事を考えるタメが足りないと想像力が弱体化 現状に留まり成長に繋がらない
火床(ひどこ)をつくること 単なる専門的知識でなく、複雑性を内包する知恵
人間と人間の間には、無根拠で信頼していい自明の信義がある、とはマキャベリ
親鸞の身心柔軟、価値の本質を突く 未完で生まれたのだから、未完を怖れない

 単なる知識の集積でなく知識を相互に関連させ、考えを多重化させながら時間をかけて熟成させていく大切さ。“できあがった知をもらうことが学ぶことではなし、出来上がった知を与えることが教えることでもなかろう。質問する意志が、疑う意志が第一なのだ”と語ったのは文芸評論家の小林秀雄です。マキャベリは“目的のためなら手段を選ばず”という権謀術数の象徴に譬えられますが、真意は“国家が危機に陥った場合、国家存続の目的のために有効ならば”という前置きがついています。元来、陽気でお喋りで、良き夫、良き父親、仕事好きであったといわれ、世評とは逆に信義・節義を大切にしたとも伝えられています。その考え方は”運命”と”技量”という概念を用いており、君主には運命を引き寄せるだけの技量(リベラルアーツ)が必要であると述べています。それは、親鸞のいう”身心柔軟”、柔弱こそ、最強の武器であるということにも通じます。人間は永遠に未完、未完であることを素直に受け入れろということですかね。

「遊びは仕事、仕事は遊び」
「仕事は学び、学びは仕事」
「学びは遊び、遊びは学び」

 今回とりあげた「遊・献・学」それぞれの4行文は、拙書「ビジネス梁塵秘抄(一)~(六)」(全10巻)から抽出したものです。次回以降も「遊・献・学」から各々4行文を一つずつ抽出してご紹介していきたいと思います。

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(第4回了)

 

大浦勇三(おおうら ゆうぞう) プロフィール

大浦勇三(おおうら ゆうぞう)  

大浦総合研究所 代表 (http://www.mmjp.or.jp/ooura/

石川県七尾市出身。
早稲田大学卒業、筑波大学大学院修了。
米国経営コンサルティング会社 アーサー・D・リトル 主席コンサルタントを経て現職。
主担当領域は、経営改革/企業再生、経営戦略/情報通信技術戦略策定、業務改革/組織改革、研究開発/商品開発マネジメント、マーケティングマネジメント、ナレッジマネジメント、イノベーションマネジメント、サプライチェーンマネジメント、人材マネジメント、コーチング/メンタリング、プロジェクト/プログラムマネジメント、ベンチャービジネス支援等のコンサルティング。

筑波大学大学院講師、城西国際大学客員教授、名城大学講師、産業能率大学講師、中小企業大学校講師などを歴任。

主な著作物:

  • 「ビジネス梁塵秘抄(一)~(六)」<全10巻>(大浦総合研究所:PDF版)
  • 「イノベーション・ノート」(PHP研究所)
  • 「ITプロジェクトマネジャーのためのコーチング入門」(ソフトリサーチセンター)
  • 「図解 日本版LLP/LLCまるわかり」(PHP研究所)
  • 「IT技術者キャリアアップのためのメンタリング技法」(ソフトリサーチセンター)
  • 「よいコンサルタントの見分け方、かかり方」(清話会)
  • 「日本のモノづくり - 52の論点」<共著>(日本メンテナンス協会)
  • 「現場主導型の組織運営とスピード戦略」(日本監督士協会)
  • 「eコミュニティがビジネスを変える」<訳>(東洋経済新報社)
  • 「ナレッジマネジメントが見る見るわかる」(サンマーク出版)
  • 「図解 ナレッジ・カンパニー」(東洋経済新報社)
  • 「ナレッジマネジメント革命」(東洋経済新報社 )
  • 「図解 グローバル・スタンダード革命」(東洋経済新報社)
  • 「業務改革成功への情報技術活用」(東洋経済新報社)
  • 「情報化戦略と投資評価・システム運用管理の実際」<編著>(企業研究会)
  • 「会社改革実務辞典」<共著>(産業調査会)
  • 「プロジェクトマネジャー(PM)の育成・スキルアップのためのメンタリングの進め方と実践法」 (ソフトリサーチセンター:CD-ROM版)   など

 

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