ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第5回)
大浦総合研究所 代表/大浦勇三
ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第5回)
遊びをせんとや生れけむ、戯れせんとや生れけん
遊ぶ子供の声きけば、我が身さえこそ動がるれ
- 梁塵秘抄 -
大相撲は日本古来の奉納相撲を起源としており、力士たちによる神事・武道・興行と位置付けられています。大相撲は地方巡業も多く、当時小学生だった私が能登巡業中の土俵の鬼・初代横綱若乃花からもらったサインのことは、今でも鮮明に憶えています。友達の家が経営する旅館に泊まった機会を見逃さず、二人で部屋に飛び込んで手にした宝物です。“土俵の怪我は土俵の砂で治すんですよ”という勝負師魂を今も懐かしく思い出します。相撲の世界では“下がりながら無理な体勢で投げを打ったり土俵際を残そうとしたりする時に怪我が多い。前に落ちる時は怪我が少ない”とよく言われます。苦しくても下がらず、針の穴を通すほどの突破口は必ずあると信じて一歩前へ踏込む。目先では色々と迷い間違えるものですが、長期の時間幅からみた信じる道を貫くしかありません。梁塵秘抄では“熊野へ参るには紀路と伊勢路のどれ近し,どれ遠し 広大慈悲の道なれば 紀路も伊勢路も遠からず”とあります。救いを求める道は色々で、多少の遠い・近い、様々な苦しみ・喜びが横たわろうとも、広大慈悲を信じ、目先や細かいことに頓着せず思いのままに歩むべしと読めます。最後は誰もが、どんな人生であれ一篇の詩になることを望むはず。“年々成熟していく老人は若い”と書いたのはヘルマン・ヘッセです。
“遊びをせんとや生れけん” 「遊」
ダーウィンが、ヴィーグル号に乗ったのは二〇歳 種の起源は五〇歳
最初から、完璧であるはずがない ただ、研究領域は狭く限定せずに
専門内外の理論や知識を、広範・貪欲にとり込み 仮説を磨き続けた
ダーウィンは、すべての生物種が共通の祖先から長い時間をかけて、“自然選択(自然淘汰)”と呼ぶプロセスを通して進化してきたことを明らかにしました。進化の事実は存命中に科学界や世間でも一部に受け入れられたようですが、広く評価されるようになったのは20世紀に入ってからです。最近関心が高い“生物多様性”への理論的説明の基盤をなすものともいわれます。とはいえ、ダーウィンの仮説は、最初から100点満点であったというわけではなく、生涯何度も仮説を見直し、手を入れ続けたといいます。その中で、理論構築に大きな力を与えたのが専門分野に囚われないリベラルアーツの深掘り。専門領域だけに限定せず、広範囲の知に好奇心をたぎらせ、仮説の深化に生命を燃やし続けました。削りとったことの痕跡をも削りとるほどの執念。自分が得心できるかどうかの集中力は、やっていることが心底面白くてしょうがなかったからかもしれません。これからの時代を生き抜くヒントになりそうです。
“仕事をせんとや生れけん” 「献」
ドイツ人は堅実さと手堅さが身上 イギリス人はグローバルな戦略立案
アメリカ人はマーケティング 日本人はきめ細かさとチームワーキング
アジアの国も、それぞれ得手をもつ 相互補完で、世界を動かしていく
グローバル社会では、色々な国と連携して様々な価値を創り出しながら、共に生きていく覚悟が求められます。それぞれの国には、文化風土に根ざした固有の得手と不得手があります。歌手・女優・木版画家のジュディ・オングさんは台湾生まれ。日本に長く生活しているため、中国と日本の双方の得手を知り尽くしています。“中国人は大きな算盤をはじくのが得意、日本人はきめ細かさと丁寧さでは世界一。ケンカをする必要はどこにもない、手を組めば世界最強になる”と語っています。ICT(情報通信技術)で世界に冠たる米国グローバル企業では、ある時期、独創的なコンピュータ・ソフトウェアはフランス製が圧倒的に多いといわれた時期がありました。日本では、“美的感覚やセンス”が日常生活の中に自然な形で溶け込んでいます。ますます高度化・複雑化する世界中のニーズに対して、この感覚やセンスをシンプルな仕組みで具現化していく知恵と戦略が今こそ求められます。”悪い戦術は良い戦略があれば救えるが、悪い戦略は良い戦術では救えない”といったのは戦争論を書いたクラウゼヴィッツです。
“学びをせんとや生れけん” 「学」
しかし、研究結果は予想外 カゴの鳥は、鳴き声が複雑 余裕や遊びがある
それは、襲われる心配がないこと、エサに不安がないこと 生き抜く大前提
心に余裕があると、遊び心が持てる はじめて、高度な複雑性に対応できる
現在は、稼いで食べていくだけでも大変な時代です。大空を自由に飛び回る鳥に憧れますが、生物学の研究では、カゴの鳥の方が安全で餌の心配が要らず、余裕たっぷりとの結果が発表されています。帰る巣が誰もにあった時代、巣があってこその大空の自由であったことを実感します。とすれば、もう一度巣づくりを見直し、思いを込めて手入れすることが新しい世界に羽ばたく第一歩になるかもしれません。ただ、巣づくりは料理づくりと同じく近道・手抜きを探ろうとしないことが原則。これからは、物質文明の拡大期から精神文化の内向期へ進むといわれます。一人ひとりが遊ぶこと・学ぶことに夢中になれる環境整備に関心を持つことが第一。“僕は今まで一度もスランプに陥ったことがない。好きな練習を重ねているためだ”とジャズクラリネット奏者の北村英治さんは語っています。これからの未知で新奇な世界を生きるスタイルが見えてきそうです。
「遊びは仕事、仕事は遊び」
「仕事は学び、学びは仕事」
「学びは遊び、遊びは学び」
今回とりあげた「遊・献・学」それぞれの4行文は、拙書「ビジネス梁塵秘抄(一)~(六)」(全10巻)から抽出したものです。次回以降も「遊・献・学」から各々4行文を一つずつ抽出してご紹介していきたいと思います。
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(第5回了)
大浦勇三(おおうら ゆうぞう) プロフィール
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大浦総合研究所 代表 (http://www.mmjp.or.jp/ooura/) 石川県七尾市出身。 筑波大学大学院講師、城西国際大学客員教授、名城大学講師、産業能率大学講師、中小企業大学校講師などを歴任。 主な著作物:
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