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ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第8回)

by staff on 2013/11/10, 日曜日

大浦総合研究所 代表/大浦勇三

ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第8回)

遊びをせんとや生れけむ、戯れせんとや生れけん
遊ぶ子供の声きけば、我が身さえこそ動がるれ

- 梁塵秘抄 -

 グローバル競争社会では、仕事・生活の仕方や考え方に大きな軌道修正が求められています。過酷な競争は人間世界だけではなく、動物・植物の世界でも大昔から繰り返されてきました。高温多湿の日本では500種にのぼる雑草が居場所を求めて知略を尽くしているといわれ、人間も腕力・運だけに頼らず知略を尽くさなければならない時代です。100歳を超えてなお “自分以上のものをめざす。抽象とは形を探るもの” と言い切るのは女性書家・美術家の篠田桃紅さん。年齢が言い訳にはならないことを教えてくれます。21世紀の “世界村” では、“コラボレーション(連携・共同作業)のスキル” “空気ではなくコンテクスト(暗黙知)を読むスキル” “お金とリベラルアーツを融合するスキル” が欠かせないといわれます。目に見えるハコモノでなくソフトウェア&アートを重視。目に見えないものの蓄積が仕事・生活の総合力であり、平常時以上に非常時・土壇場で力を発揮してくれる源泉。梁塵秘抄では”鵜飼はいとをしや、萬劫年経る亀殺し、又鵜の首を結ひ、現世はかくてもありぬべし、後生わが身を如何にせん”とあります。殺生戒を犯す罪深さ、更に深読みすれば、鵜は亭主で女房・子供が鵜匠との見立てもあるとのこと。充実さえしていれば何をかいわんや。葛飾北斎は “勝川春章” “狩野派” “土佐派” “琳派” を渡り歩きながら、好きなように生きて画狂人の道を貫いたのですから。

“遊びをせんとや生れけん” 「遊」

強者は創造する・弱者は模倣する、と種田山頭火 外から日本を見る視点
どの世界も成熟化すると平準化しがち 自分の人生の辞書は自分でつくる
若手を決して単なる頭数として見ない 敗戦処理に使うのはもってのほか
変わらぬ商人の掟 始末すること、才覚を発揮すること、算用が働くこと

 種田山頭火は自由律俳句の代表格の一人です。雲水姿で旅をしながら句作し、空の上や地の底から人間世界を見続けました。自分の人生は自分で編集すること、模倣を拒否し丸くなることもよしとしない生き方。組織人には理想的でうらやましい生き方に感じられ人気絶大ですが、現実は体調不良からくる精神不安定から自殺未遂を起こしたり、知人への手紙では生き辛さをこぼすこともあったようです。支持者の経済的援助も受けており、そのプレッシャーは半端なものではなかったはずです。少し前の高度経済成長時代、組織に雇われることが豊かさにつながった時代がありました。学校教育も雇われる人間が主眼の訓練場と化した感があり、現在もその延長線上で更に加速度を増しつつあります。しかし、世界は天変地異と政治的動乱による多彩な資本主義の時代に突入しています。“地獄から来た人間は走らない、叫ばない” との種田山頭火の言葉に耳を傾け、いま一度歩むべき道を考えてみる必要があるのかもしれません。

“仕事をせんとや生れけん” 「献」

戦略、業務プロセス、ICT(情報通信技術)の一気通貫 いよいよ種子島の出番
事業創造、サービス深化、意識改革までカバーする 自律・分散・協調を地で行く
時間や場所の制約をとり除く 貴重な人材を特定の組織や場所に固定化させない
脳がコンピュータにもつ優位性 不完全にしか定義できない観念を、構造化する力

 1543年、種子島に鉄砲二丁が伝来しました。その対応は、大量購入の道を選ぶことではなく、製法を詳細に研究して技術を吸収し、鉄砲の大量生産につなげていくことでした。日本人のDNAはこういうところにもその片鱗をみせています。ICT時代の決め手は人間の頭脳であり、脳がコンピュータにもつ優位性は、不完全にしか定義できない観念を構造化する力であり抽象化能力。クラウド技術を活用した戦略・業務プロセス・おもてなしの一気通貫。失敗してもコストは小さく済み、ジュリアス・シーザーも得意としたリターンマッチの機会に富む環境。ビッグデータは新たな天然資源、これを用いたプロトタイピングによるフィージビリティスタディもビジネスの強力な武器になるはずです。ただ、前提として “何をやらないか” という戦略軸だけは不可欠。江戸時代のライフスタイルは “モノを持たないこと” “生きることに飽きないこと”。弥次・喜多から学ぶべきは、学問はなくとも知恵や頓智だけはたっぷりあるというところですかね。

“学びをせんとや生れけん” 「学」

子どもは単純であることが一番の強み スランプには縁がない
大人は知識を身につけ、理屈を並べる 時々はスランプに陥る
理屈・分析より本能・直観 教科書にないものが最後の決め手
子どもは身に付くよう稽古 大人はケイコのための稽古に走る

 “童心の単純さではなく達人の直截” と核心を射る大切さを指摘したのは岡倉天心です。子供の純な心は本質を見抜き侮れません。大人も知識だけに振り回されず、より本質へ踏み込む洞察と覚悟が必要だということですね。ケイコのための稽古に走るばかりでは子供にも笑われそうです。岡倉天心は、若くして漢籍を修得し、横浜居留地の塾では英語も学びました。また、明治時代初期の “廃仏毀釈” で破壊された多くの仏像の修復・保存にも尽力し、そのおかげで興福寺 “阿修羅像” は今の姿で拝観できるようになったといわれます。代表的な弟子には横山大観・下村観山・菱田春草。人を育てるには本物の絵をじっくり見せること、時間はかかるが他に道はないとの考えは揺るぎませんでした。ミラノ・スカラ座のプリマドンナも “ドサ回り” の経験が不十分だと人気が持続できないとのこと。最短距離による上昇は、登るのも早いが落ちる時も一気にきて止まらないということですね。

「遊びは仕事、仕事は遊び」
「仕事は学び、学びは仕事」
「学びは遊び、遊びは学び」

 今回とりあげた「遊・献・学」それぞれの4行文は、拙書「ビジネス梁塵秘抄(一)~(七)」(全10巻)から抽出したものです。次回以降も「遊・献・学」から各々4行文を一つずつ抽出してご紹介していきたいと思います。

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http://www.syplus.jp/ooura/

(第8回了)

 

大浦勇三(おおうら ゆうぞう) プロフィール

大浦勇三(おおうら ゆうぞう)  

大浦総合研究所 代表 (http://www.mmjp.or.jp/ooura/

石川県七尾市出身。
早稲田大学卒業、筑波大学大学院修了。
米国経営コンサルティング会社 アーサー・D・リトル 主席コンサルタントを経て現職。
主担当領域は、経営改革/企業再生、経営戦略/情報通信技術戦略策定、業務改革/組織改革、研究開発/商品開発マネジメント、マーケティングマネジメント、ナレッジマネジメント、イノベーションマネジメント、サプライチェーンマネジメント、人材マネジメント、コーチング/メンタリング、プロジェクト/プログラムマネジメント、ベンチャービジネス支援等のコンサルティング。

筑波大学大学院講師、城西国際大学客員教授、名城大学講師、産業能率大学講師、中小企業大学校講師などを歴任。

主な著作物:

  • 「ビジネス梁塵秘抄(一)~(七)」<全10巻>(大浦総合研究所:PDF版)
  • 「イノベーション・ノート」(PHP研究所)
  • 「ITプロジェクトマネジャーのためのコーチング入門」(ソフトリサーチセンター)
  • 「図解 日本版LLP/LLCまるわかり」(PHP研究所)
  • 「IT技術者キャリアアップのためのメンタリング技法」(ソフトリサーチセンター)
  • 「よいコンサルタントの見分け方、かかり方」(清話会)
  • 「日本のモノづくり - 52の論点」<共著>(日本メンテナンス協会)
  • 「現場主導型の組織運営とスピード戦略」(日本監督士協会)
  • 「eコミュニティがビジネスを変える」<訳>(東洋経済新報社)
  • 「ナレッジマネジメントが見る見るわかる」(サンマーク出版)
  • 「図解 ナレッジ・カンパニー」(東洋経済新報社)
  • 「ナレッジマネジメント革命」(東洋経済新報社 )
  • 「図解 グローバル・スタンダード革命」(東洋経済新報社)
  • 「業務改革成功への情報技術活用」(東洋経済新報社)
  • 「情報化戦略と投資評価・システム運用管理の実際」<編著>(企業研究会)
  • 「会社改革実務辞典」<共著>(産業調査会)
  • 「プロジェクトマネジャー(PM)の育成・スキルアップのためのメンタリングの進め方と実践法」 (ソフトリサーチセンター:CD-ROM版)   など

 

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