ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第11回)
大浦総合研究所 代表/大浦勇三
ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第11回)
遊びをせんとや生れけむ、戯れせんとや生れけん
遊ぶ子供の声きけば、我が身さえこそ動がるれ
- 梁塵秘抄 -
“偶然の武器は土壇場で我らを裏切る” と書いたのは16世紀フランスの思想家モンテーニュです。人間にとっての名誉ある傑作とは “適切な生き方” をすることだとの考えを貫きました。21世紀のビジネスも、適切な生き方や確実な武器なしでは勝てそうにありません。まずは事業スタンス。競合他社から顧客・パートナーへの重心移動と市場/顧客/商品/サービスの再定義。二つ目はリーダーシップ。コンセンサスからリーダーシップ(フォロワーシップ)への重心移動と個々人の目標・手立ての明確化。三つ目はプロセスデザイン。改善/効率から例外対応/異常対応への重心移動と事業継続性・非常時への深慮。四つ目は人材育成。集団型キャリア開発から個人別キャリア支援への重心移動と自己開発計画による持続的研鑚。最後は企業文化。規律・訓練から自律・学習への重心移動と多様性/外部性/異文化融合の浸透。梁塵秘抄では ”熊野へ参るには、何か苦しき修行者よ 安松姫松五葉松、千里の濱“ とあります。熊野への途中の松原で休む目印である安松・姫松・五葉松。目標に至る目印は励みと余裕につながるもの。 ”仕事は義務でやらない“ ”自分に自信を持つ“ ”人の真似をしない“ ”とにかく働く“ をモットーに世界を制覇したファッションデザイナーのピエール・カルダン。世界レベルの能力構築という目標を掲げて、遊び心も忍び込ませながら歩き続けたいですね。
“遊びをせんとや生れけん” 「遊」
正常時に発揮できるスキル 非常時でも決定打になる絶対的保証はない
自由競争の中で生きていく覚悟 だからこそ学問や理論をバカにしない
教養ある人間への敬意 教養の蓄積がないと、世界で持続的に戦えない
井原西鶴は江戸時代の大坂の浮世草子・人形浄瑠璃の作者であり俳諧師。 “世に銭ほど面白きものはなし” と喝破し、 “憂うる者は富貴にして憂い、楽しむ者は貧にして楽しむ” と、楽しめる人は富んでいても貧しくとも楽しめることを見抜いた人生の達人でした。変化が当たり前の時代では、正常時と非常時では求められる能力や技術/スキルが大きく異なるはずで、理屈一辺倒では現実対応には力不足。何が起きるか予期できない時は、経験知や教養の蓄積が最後はものをいいそうです。経験知や教養はまさに “リベラルアーツ” 。ギリシャ・ローマ時代に源流を持ち、ヨーロッパの大学制度において実践的な知識・学問の基本と見なされたもので、論理学・算術・天文学・音楽などからなるといいます。日本では文系・理系という言葉が飛び交っていますが、リベラルアーツはそれらを包括する概念。ひとかどの仕事をしようと思ったら、文系・理系の枠を身軽に乗り越えていく必要がありそうです。
“仕事をせんとや生れけん” 「献」
大相撲でも最近の稽古量は1/3 どの世界も稽古不足
問題だからやめさせろ、だけでは堂々巡り 永遠の循環
極意は頭でなく体で覚えていく 人間をブランドにする
最近の大相撲は手に汗握る好取組が少なくなりました。元横綱大鵬は生前、稽古量が少なすぎると繰り返し苦言を呈しました。現役時代、当時流行したウエイトトレーニングには手を出さず、相撲の基本である四股(シコ)・鉄砲(テッポウ)・すり足といった相撲界の伝統的な稽古を反復することにこだわったといいます。毎日、四股は500回、鉄砲を1000回やったとのこと。大鵬を尊敬する横綱白鵬が自分はそこまでできないというほどの稽古量です。何でもそうでしょうが、相撲の場合も正直で、稽古量がそのまま土俵にあらわれます。稽古の量と質が相撲取りのブランドといえるかもしれません。ブランドの磨きには土俵の砂しかないということでしょうか。ブランディングとは ”自身が持つ本源的価値” と “価値を戦略的に見える化すること” の掛け算。それを通じて他と差別化することで周囲に対して醸し出すイメージの全体。理論的・解析的というより包括的訴求力ということになりますかね。
“学びをせんとや生れけん” 「学」
ものを創造する条件 一匹狼でなく米国流マーヴェリック(駿牛)であること
コミュニティではKYを甘受する 実力以上に評価されたら追いつくよう努力
技術にも仕込み時期 下りで調子にのると平らな道も上り坂、と有森裕子選手
教育システムは最重要課題ですが、落とし穴や限界も指摘されます。独学・我流の強みが人間にはあるからです。日本で一匹狼は否定的に使われがちですが、米国でマーヴェリックといえば称賛の対象となるのが普通。強みを仕込む舞台は誰もが自分自身の中に備えているということですかね。ゴッホは37歳の生涯の中で3000点近くの絵を描いたといわれますが、生前に売れた絵はたった1枚とのこと。アムステルダムにある国立ゴッホ美術館には制作年に沿った展示があり、最後の数年間の燃えるようなタッチは、それまで溜めに溜めた “スキルと情熱の爆発” であることが真っ直ぐに伝わってきます。一方、棟方志功は “日本のゴッホ” になるとの志から画家をめざしますが、途中で板画(版画)に転じました。 “日本から生れた仕事、わたくしで始まる世界を持ちたい” との強い思いを胸に “世界のムナカタ” になりました。&nbs;“下りで調子にのると平らな道も上り坂”&nbs;とは至言。どんな時も有頂天になるなということですね。
「遊びは仕事、仕事は遊び」
「仕事は学び、学びは仕事」
「学びは遊び、遊びは学び」
今回とりあげた「遊・献・学」それぞれの4行文は、拙書「ビジネス梁塵秘抄(一)~(七)」(全10巻)から抽出したものです。次回以降も「遊・献・学」から各々4行文を一つずつ抽出してご紹介していきたいと思います。
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(第11回了)
大浦勇三(おおうら ゆうぞう) プロフィール
大浦総合研究所 代表 (http://www.mmjp.or.jp/ooura/) 石川県七尾市出身。 筑波大学大学院講師、城西国際大学客員教授、名城大学講師、産業能率大学講師、中小企業大学校講師などを歴任。 主な著作物:
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