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中小経営のニッチから国際化へ(第6回)

by staff on 2014/3/10, 月曜日

デジタルハリウッド大学大学院/NVD株式会社 松本英博

1.自社製品やサービスの探索、育成、成長

 前回 のコマ大戦は、製造業の分野での協業や共創のきっかけにはなるものの、それ自身、自社の新しい商品やサービスになることは稀であろうと思います。

表 1 コア・コンピュタンス (『図解入門ビジネス 事業計画書の読み方と書き方がよ~くわかる本(第2版)』より)

 何れにしても方法論として自社の新製品、新サービスを探索することは、ニッチ市場であれば必須であると言えます。

 そのヒントとして、4つのコア・コンピュタンスの類型を見てみましょう。以下の表は確かに基本的で自社の商品やサービスの探索には当たり前すぎるとお思いでしょう。しかし、これらの4つの類型は、1つの商品やサービスの中で埋もれている場合もあるのです。

 例えば、電気事業はどうでしょうか。エジソンが電球を実用化する以前に、発電機や送電線、モーターや発熱器などがあり、これらを統合して初めて電気エネルギーとして使え、電気を供給するというサービスになるわけです。彼は、電球を商品化するよりも、電気事業を目指していました。言い換えれば、電気エネルギーを消費することで付加価値をえることを提唱したのです。電気を供給するというサービスはあくまでも、電気を生み、運び、消費させるサイクルを提供するものですが、彼の新規事業は、このサイクルを早く、大きく、広範囲に拡げるモノであれば、どんなものでも開発に着手し、更に言えば、他社の製造を譲ってまでも、このサイクルを拡張することが重要だったのです。ゼネラル・エレクトリック(GE)は、こうして電球や家電の会社ではなく、電気事業を営むためのシステムそのものを売ることを目指したのです。その技術は、航空機や船舶の発電機やジェットエンジンの開発までも広がったのです。

 ニッチと思われる商品やサービスが、将来は、成長し展開するというのは、ある意味で夢物語です。しかし、夢物語があったからこそ、それに向かって技術やサービスの品質を上げていくことに乗り遅れては事業にはなりません。

 「下町ロケット」で有名なH2Aロケットが先月28日に無事打ち上げを成功させました。この打ち上げには大手企業も参画していましたが、多くはニッチなニーズをくみ取り支えてきた中堅企業です。まさに、日本の誇る国産ロケットH2Aは実は「下町」製なのです。生産現場を支えてきたのは、多くは夢であり、それを実現するために挑戦し、コア技術を体得した中小企業です。他国が、事故原因を調べずに発射させることに対して、徹底して見直しをしなければもう一度発射させないという姿勢が日本の技術水準の高さを保持してからだといわれています。

 そこで、4つの類型にあるように、既存の自社製品やサービスはなぜ買ってもらっているのか、といった自己分析が重要になります。エジソンは電球の実用化に心血を注いだのは、光源として安定することが、当時のランプやロウソクの火よりも劣っていたからです。しかし、性能が安定すれば、ランプやロウソクを使ってはいけない場所や安全が確保できないニッチな場所にも売れ、さらにそのような特殊な環境でも使えると分かれば普及すると考えたからです。

 次に、安定光源としての電球が開発できても、その機能を保障するには、材料や部品の品質、コスト、供給が必要となります。これらの保障には、ニッチであっても一定の需要がないと、品質、コスト、供給を満足させることができないというジレンマがあります。つまり、ニッチであるからこそ、必ず自社の商品やサービスを使ってもらうことこそが、自社のコア・コンピュタンスを育成する原動力になります。最近は、H2Aロケットなどのように国策でこのニッチ需要を押し続けることで、最初の事業サイクルを回そうとしています。しかし、このサイクルが回っている間に育成する技術やサービスのコアを固めなければ、独立事業として成長することは不可能です。

2.新規事業のブート

 既存事業を動かしながら、新規事業を立ち上げる(ブートする)ことは並大抵ではありません。それは経営資源、つまりヒト(人員、工数)、モノ(設備、ソフト)、カネ(予算)、情報(顧客のニーズ情報や業界情報)が少ないばかりか目処が立たないのが現実です。

 しかし、ニッチ市場であっても「情報」でニーズの大きさが確認できるなら、ヒト、モノ、カネを調達する決心が必要です。つまり、リスクを取らねばならないのです。次回に詳細には述べますが、資金調達をおこなうためにも事業計画をしっかり立てれば、投資、融資あるいは助成金の獲得の目処が立ちます。

※さて、別のビジネス・コラムの「創造方程式」による発想のトレーニングがしたいというなら、参考に拙著「ヒット商品を生み出すネタ出し練習帳」をどうぞ。

次回の予告

新規事業のブートをついて考えていきます。

松本英博 プロフィール

 

松本 英博(まつもと ひでひろ)

デジタルハリウッド大学大学院 専任教授/NVD株式会社 代表取締役
一般財団法人 BCi戦略研究所 理事

 京都府出身。18年にわたりNECに勤務。同社のパーソナルメディア開発本部で、MPEG1でのマルチメディア技術の開発と国際標準化と日本工業規格 (JIS)化を行い、MIT(マサチューセッツ工科大学)メディアラボで画像圧縮技術を習得のため留学。帰国後、ネットワークス開発研究所ではWAPや i-モードなどの無線インターネットアクセス技術の応用製品の開発と国際標準化を技術マネジャーとして指揮。

 NEC退社後、ベンチャー投資会社ネオテニーにおいて大企業の新規事業開発支援、社内ベンチャーの事業化支援を行い、2002年9月にネオテニーから分離独立し、NVD株式会社(旧ネオテニーベンチャー開発)を設立、代表取締役に就任。大手企業の新規事業開発・社内ベンチャー育成などのコンサルティング 実績を持つ。

 IEEE(米国電子工学学会)会員、MIT日本人会会員。神奈川県商工労働部新産業ベンチャー事業認定委員、デジタルハリウッド大学大学院 専任教授、現在に至る。

 

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