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ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第15回)

by staff on 2014/6/10, 火曜日

大浦総合研究所 代表/大浦勇三

ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第15回)

遊びをせんとや生れけむ、戯れせんとや生れけん
遊ぶ子供の声きけば、我が身さえこそ動がるれ

- 梁塵秘抄 -

 “イノベーション” とは新しい価値を創りだすための投資活動であり、それ以外の企業活動はすべてコストだといわれます。ここではイノベーションを “いろいろなアイデアを出す” “そのアイデアをコンセプト化する” “コンセプトを商品化し市場に提供する” の3段階で考えてみたいと思います。 “アイデア創出” とはビジネス拡大につながる商品/サービスのアイデアをどう生み出すか。 “コンセプト化” とは可視化スキルを活用して差別化につながるコンセプトをどう構築するか。 “ビジネスモデル化” とは継続的に顧客満足度を高めていく仕組みをどう創りだすか。壁になるのは、新しい発想が欠落している個人の能力? アイデアを商品コンセプトに高められないプロジェクトの力量? コンセプトを市場化する手立てが描けない組織の総合力? のいずれか。突破の糸口は “組織変更や人事異動を通じて人材の流動性を高める” “異種の技術やスキルを持つ人材との交流を活発化する” “技術と人材をセットにしたマネジメントを徹底する” に絞られそうです。梁塵秘抄では “をかしく舞ふものは巫(こうなぎ)小楢(こなら)葉車の筒(どう)とかや、平等院なる水車、囃せば舞い出づる蟷螂(いぼうじり)蝸牛” とあります。平等院のある宇治川の名物は水車で、クルクルよく回ることから回るものの代名詞。これぞ魅力・好奇心の原点。仏教もまた好奇心・仮説の集大成ですよね。

“遊びをせんとや生れけん” 「遊」

出来ないことはやらない、朗報にはお陰さま 片方の目で泣き、もう片方で笑う
臓器は単独で機能しているのでなく 周囲の空間・他臓器を含めた場を形成する
平時はボトムアップで、非常時はトップダウン 文章は形容詞から腐りはじめる
合理性という目的のために他の全てを萎縮させてはならない、とハイゼンベルク

 ハイゼンベルクは世界的なドイツの理論物理学者で、不確定性原理を通じて量子力学に多大な貢献をし、31歳でノーベル物理学賞を受賞しました。不確定性原理は “あちらを立てればこちらが立たず” とざっくり説明されますが、合理性という目的だけに固執すると他を萎縮させかねないとは至言ですね。平等・公平のかけ声が逆に非合理な判断を招くことも多々ありそうです。何より好きなこと・得意なことを最優先。人間社会に絶対はなく、平常時と非常時でやるべきことが正反対であることもままあります。合理性や効率性は大切な指標ですが、それだけにこだわると全体が縮小均衡へ。ノーベル生理学・医学賞を受賞した利根川進博士は “サイエンスに向いている人” として①楽観的である ②プライオリティ(優先順位)付けがはっきりできる ③良いテイスト(選択眼)を持っている、の三つをあげています。どの世界でも通用しそうな条件ですよね。

“仕事をせんとや生れけん” 「献」

世界大恐慌の時代、米国でも首切り一辺倒だったわけではない
米国IBMは雇用を死守し 研修・訓練で飛躍の機会を待った
それを見抜き、IBMの成長を確信したピーター・ドラッカー
日本の松下幸之助も 事業は人なりと、首を切らず教育に注力

 世界大恐慌は膨大な失業者を生みました。これを乗り越えた新しい世界の技術/スキルは今までのものとは様変わり。その基盤となる教育は世界・人生を大きく左右します。経済格差拡大の最大の問題は何よりも教育格差拡大に直結すること。教育こそが恐怖に近いリスクもとれ、それが鍛えられた組織を生み、次の成長の原動力になるからです。そこに求められる変革と継続は対立するものではなく統合すべきもの。  “組織は継続を旨とする。だからこそ、いずれの組織も変革を受け入れ、変革していくためには格段の努力を必要とする。ただ、継続を旨とする組織にとって変革は受け入れ難いものとみられがちだ” とピーター・ドラッカー。 “継続と変革の両方が欠かせないが、あえて一つ選ぶとすれば継続” とも言っています。ただ、あらゆるものが崩壊過程に向かうエントロピーの法則からすると、継続を保証する唯一のものが変革であることも真実ですよね。

“学びをせんとや生れけん” 「学」

演奏は舞台に登場する前から身体の中で始まる、と音楽評論家吉田秀和
楽器による演奏はその延長線 身体の中の旋律が楽器を通じて音になる
多様な人材の登用に積極的な企業 常に心の中で音楽が流れる組織風土
自由度が大胆な発想を生む より以上に考えて、より以上の存在になる

 音楽評論で他の追随を許さなかった吉田秀和さんは、クラシック音楽の実体験と豊富な知識をもとに、音楽の魅力を語る伝道師として大きな役割を果たしました。更には音楽だけでなく、文学・美術など幅広い分野にわたる評論活動も続け、日本を代表する “知の巨人” の一人といえる存在でした。朝日新聞夕刊に毎月掲載された “音楽展望” は音楽ファンに限らず珠玉のページと評価されたようです。 “本物の知はジャンルを超える” ことを自然な形で見せてくれたということですね。 “ほんとうに顔が笑っていれば、身体全体が笑っているはずだ。身体全体に音楽が奏でられていなければ、楽器の音は音楽にはならない” と断言しました。その炯眼と洞察の裏には15年に及ぶ雌伏の期間もあったといいます。回り道することなく頂上へ至るのは誰にとっても難しいこと。ただ、回り道が無条件に良いとは限らず、良いものは無条件に良いというのが本質ですかね。

「遊びは仕事、仕事は遊び」
「仕事は学び、学びは仕事」
「学びは遊び、遊びは学び」

 今回とりあげた「遊・献・学」それぞれの4行文は、拙書「ビジネス梁塵秘抄(一)~(八)」(全10巻)から抽出したものです。次回以降も「遊・献・学」から各々4行文を一つずつ抽出してご紹介していきたいと思います。

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(第15回了)

 

大浦勇三(おおうら ゆうぞう) プロフィール

大浦勇三(おおうら ゆうぞう)  

大浦総合研究所 代表 (http://www.mmjp.or.jp/ooura/

石川県七尾市出身。
早稲田大学卒業、筑波大学大学院修了。
米国経営コンサルティング会社 アーサー・D・リトル 主席コンサルタントを経て現職。
主担当領域は、経営改革/企業再生、経営戦略/情報通信技術戦略策定、業務改革/組織改革、研究開発/商品開発マネジメント、マーケティングマネジメント、ナレッジマネジメント、イノベーションマネジメント、サプライチェーンマネジメント、人材マネジメント、コーチング/メンタリング、プロジェクト/プログラムマネジメント、ベンチャービジネス支援等のコンサルティング。

筑波大学大学院講師、城西国際大学客員教授、名城大学講師、産業能率大学講師、中小企業大学校講師などを歴任。

主な著作物:

  • 「ビジネス梁塵秘抄(一)~(八)」<全10巻>(大浦総合研究所:PDF版)
  • 「イノベーション・ノート」(PHP研究所)
  • 「ITプロジェクトマネジャーのためのコーチング入門」(ソフトリサーチセンター)
  • 「図解 日本版LLP/LLCまるわかり」(PHP研究所)
  • 「IT技術者キャリアアップのためのメンタリング技法」(ソフトリサーチセンター)
  • 「よいコンサルタントの見分け方、かかり方」(清話会)
  • 「日本のモノづくり - 52の論点」<共著>(日本メンテナンス協会)
  • 「現場主導型の組織運営とスピード戦略」(日本監督士協会)
  • 「eコミュニティがビジネスを変える」<訳>(東洋経済新報社)
  • 「ナレッジマネジメントが見る見るわかる」(サンマーク出版)
  • 「図解 ナレッジ・カンパニー」(東洋経済新報社)
  • 「ナレッジマネジメント革命」(東洋経済新報社 )
  • 「図解 グローバル・スタンダード革命」(東洋経済新報社)
  • 「業務改革成功への情報技術活用」(東洋経済新報社)
  • 「情報化戦略と投資評価・システム運用管理の実際」<編著>(企業研究会)
  • 「会社改革実務辞典」<共著>(産業調査会)
  • 「プロジェクトマネジャー(PM)の育成・スキルアップのためのメンタリングの進め方と実践法」 (ソフトリサーチセンター:CD-ROM版)   など

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