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書評 「ハカル考動学」 ディスカヴァー・トゥエンティワン 三谷宏治 著

by staff on 2014/6/10, 火曜日
 

ビジネスの今と未来を「測る」・「量る」・「計る」という副題に魅せられてしまった。実際は少し計量業界での感覚とは違いがあるのだが、「はかる」が「未来」につながることに新鮮さを感じた。はじめで書かれている。「世の中の森羅万象すべては、ハカることと一体だ。物理学的に言えば、ハカれないものは無いのと厳密に同じ。ハカれるからこそ存在となり、意味が与えられる」

今ハカる力が弱まっていると指摘している。「皆が当たり前のことをやれなくなってきている。自分で考え、既存の情報をハカり直し、そこから新しい意味を見い出すことが出来なくなってきている。だったら、その力をちゃんとつけよう。ハカる力を持つだけで、人生や組織の命運はおおきく変わるだろう。」

「 “ハカる” は人や組織を大きく変える。メートル法を初めとした “ハカるための基準” は、それを自国に有利に定めようとする大国間の戦場だし、民間の標準化会議なども、大手企業が俊英を十数人規模で無償提供する利益創造の場である。企業ごとの活動でも、イノベーションの影には、必ず “新しいハカり方” が潜んでいる。」

何をしようとしているのか。ここではハカることの力を、ボトムアップ・トップダウン・ヒトをハカる・作ってハカる・新しいハカり方を創るの順で紹介される。

「難題を前に、座って悩んでいても何も解決しはしない。必要なのは、考え、動き、また考える姿勢と技だ。それを “考動学” と呼ぼう。まずは“ハカる”ことを中心とした考動学を、職場や家庭で活用いただきたい。」と書かれる。今、なぜ“ハカる”力が必要かということで「ハカる基本は枠組みつくり。そして枠組みとは軸(何をはかるか)を決め、メモリ(どんな固まりでまとめるか)を刻み、データを集め、さらにそれらのデータを組み合わせること。それが対象をハカるということだ。」

三つのハカるにチャレンジせよと言う。
① モノではなくヒトをハカる
② 頭で考えるのでなく作ってハカる
③ 旧来の仕組みでなく新しいハカり方を創る

「ハカる」の基本を学ぶ章が最初にある。
ただ闇雲にハカっても、ムダ。から入ってくる。
「ハカるときのキーワードは、軸と目盛と組み合わせからなる枠組みだ。それを駆使して、論理思考や発想力を高めよう。」
「度量衡という言葉がある。度は長さ、量は容積、衡は重さ。おのおのをハカる道具が、物差、升、秤である。秦の始皇帝は、中国統一において多くのことを一つに定めた。なかでも文字と度量衡の統一は、その絶大なる権力を支える大きな力になった。軸と目盛を定める。それを等しく皆に使わせる。それだけで、モノは動き、カネが流れるようになって、産業が盛んになる。始皇帝はそのことを理解していたのだ。」「ハカるとは、ただ対象を数字にすることではない。共通の枠組み(軸・目盛り・組み合わせ)を作り上げ、広げてこそ意味があるのだ。」

ここで枠組みの例として、メタボリック症候群の判断になるBMIを紹介している。軸は腹囲であり、目盛りはその数値である。これに血圧・血糖値・中性脂肪などをくみあわせて判断材料とする。ハカるとはただ対象を数字にすることではない。共通の枠組み(軸・目盛り・組み合わせ)のもとでこそ意味があると力説される。
三現主義で「ハカる」を習慣化すること。三現とは「事実は何・現場と話をしてきた・それであなたとしてはどう思うの?」これを何度も何度も繰り返して習慣化することだ。

「実際に作るからこそハカれること」の項も面白い。「ここまで見てきたハカるは、2種類に大別された。一つは事前、一つは事後。まずは、カン頼りにならないよう、新商品のアイデアやコンセプトをユーザーに提示して、その意見でハカって評価する。そして作って売り始めた後に、改善・改良のためにハカる。それが満足度調査やクレーム分析だ。」

「座って悩むな。詰まったら動け。」
「詰まりそうなそうなことは、最初から作ってハカってみよう。」
読めば読むほど奥が深い。一度手にとっていい本である。
そして最後の締めが面白い。「曖昧な返事を許さない」「察しの悪い振りをする」なんだかわかるような気がした。すぐに理解したと、理解しようとする話の分かる上司をつい演じてしまっている自分に気づかされもした。

(文:横須賀 健治)

 

 

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