ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第16回)
大浦総合研究所 代表/大浦勇三
ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第16回)
遊びをせんとや生れけむ、戯れせんとや生れけん
遊ぶ子供の声きけば、我が身さえこそ動がるれ
- 梁塵秘抄 -
“駄目なことの一切を時代のせいにはするな” “自分の感受性くらい自分で守れ ばかものよ” と詩にしたのは2006年に亡くなった詩人・茨木のり子さん。 “永訣(えいけつ)” とは日々の中にあるとの覚悟を秘め、ある意味で大胆・不敵に生き抜いた人といえるかもしれません。 “倚りかからず” という詩では、できあいの思想・できあいの宗教・できあいの学問・いかなる権威にも倚りかかりたくないとの思いが貫かれています。人間観察にもすぐれ、何よりも “人を見て喋ることを変えることをしない人間” を信頼したといいます。明日を夢見ることを大切にした盟友の詩人・谷川俊太郎さんと重なるものがあります。ビジネスの世界でも “歳月をかけて鍛え磨き抜いてきた底光りする人材” がその真価を発揮する時代が到来しました。米国グーグルでは “知能指数(IQ)ではなく状況に対応できる全体的な認識(学習)能力” “体育会系ではなく課題直面時の創発的なリーダーシップ” “失敗経験がないのではなく失敗から学ぶ知的な謙虚さ” が求められています。梁塵秘抄では “嵯峨野の興宴は鵜舟筏師流れ紅葉、山蔭響かす筝のこと、浄土の遊びに異ならず” とあります。嵯峨野は観光名所、鵜飼舟や筏流しを見物しながら酒を飲み珍味を堪能するのは浄土の遊びの如くこの世の楽しみ・極楽。ただ “初心消えかかるのを暮らしのせいにするな” との戒めが天国から聞こえてきそうですね。
“遊びをせんとや生れけん” 「遊」
顧客を知る、仲良くなる 生き方や好みに理解を深める、五感を磨いて総動員
おもてなし・気働きの脳は老化が少なく遅い 規模ではなく複雑さにこそ妙味
平気で異端を歩む 時代を動かすのは主義でなく個性、とオスカー・ワイルド
オスカー・ワイルドはアイルランド出身の詩人・作家・劇作家です。耽美的・退廃的・懐疑的だった19世紀末のリーダー的存在だったとのこと。 “生きるとはこの世でいちばん稀なことで、たいていの人はただ存在しているだけ” だと語り、時代を動かすのは主義ではなく個性だと喝破しました。日本でも森鴎外・夏目漱石・芥川龍之介・谷崎潤一郎らに大きな影響を与えたといわれます。どんな時代であれ、定義して境界をつくるのは世界を限定してしまうこと。モノづくりが日本のお家芸であることに変わりませんが、企画やサービスを含めた総合芸術の技が必要になったことの自覚も必要になりそうです。規模・量だけであれば新興国がすぐ目の前まで迫ってきていますが “おもてなし” は複雑性を内包する人間科学。遊び心を加味すれば勝機は十分。ただ、この世で人間が一番複雑であるからこそ、時には社会や人生をシンプルに観ていく知恵も大切ですよね。
“仕事をせんとや生れけん” 「献」
システムとは、構成要素とその関係性 更に関係性をスムースに動かす力
アメリカ文化は自己主張、日本文化は環境適応 今後は宮本武蔵の二刀流
日本固有のものを日本人だけで抱え込まない 答えを探すより問い続ける
宮本武蔵は剣を通じて思想・水墨画などにも奥義を極め “自己効力感” を梃子に自己実現をはかった代表選手の一人といえそうです。 “平常の身体のこなし方を戦いの時の身のこなし方とし、戦いの時の身のこなし方を平常と同じ身のこなし方とする” はビジネス社会でもそのまま通用しそうです。グローバルビジネスでは、世界標準を握ることが市場制覇に直結するため、どの国や企業も必勝の覚悟で挑んでいます。問題はその中核を誰が担うのか。軸となるべき標準化の専門家とは、専門分野の知見に加えて、あらゆる分野に関するコモンセンスを持ち、正解のみを追求するのではなく常に問い続ける人材といえるかもしれません。 “大事なことは、音楽が何かを変えられるかではなく、我々が音楽から何を学ぶかということ” と語るのは世界的な指揮者でピアニストのダニエル・バレンボイム。問い続けるということは学び続けることと表裏一体ということですかね。
“学びをせんとや生れけん” 「学」
独りで泣いた経験のない人間は頼りにならない
人を育てる核心は 涙を秘めた自信を育むこと
内なる勝利なくば外の敵に倒れる、と岡倉天心
岡倉天心は茨城県五浦の六角堂(観瀾亭)で、太平洋の波の音を聞きながら世界を見据えた思索に没頭したといいます。太平洋に突き出した岩上に建つ朱塗りの建物です。日本の美術界では一種の聖地といわれてきました。しかし、3.11の東日本大震災で津波により消失。ただ、世界各地からの寄付にも支えられ再建を果たすことができました。 “西洋の特徴はいかに理性的に自慢するかであり、日本の特徴は内省にこそある” と分析し “不完全に対する真摯な瞑想” の重要性を説きました。悔し涙を流すということは学ぶべきテーマが与えられたということ、涙の数だけ学ぶ経験を重ねていけるということでしょうか。それを地道に進めるには、自分に克たなければ外との闘いに勝てるはずがないという信念。 “絵の具を百回以上重ねることで、色数が少なくともニュアンスや味が出る。一回塗るだけでは平面的でダメだ” と指摘したのは画家の平山郁夫さんです。
「遊びは仕事、仕事は遊び」
「仕事は学び、学びは仕事」
「学びは遊び、遊びは学び」
今回とりあげた「遊・献・学」それぞれの4行文は、拙書「ビジネス梁塵秘抄(一)~(九)」(全10巻)から抽出したものです。次回以降も「遊・献・学」から各々4行文を一つずつ抽出してご紹介していきたいと思います。
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(第16回了)
大浦勇三(おおうら ゆうぞう) プロフィール
大浦総合研究所 代表 (http://www.mmjp.or.jp/ooura/) 石川県七尾市出身。 筑波大学大学院講師、城西国際大学客員教授、名城大学講師、産業能率大学講師、中小企業大学校講師などを歴任。 主な著作物:
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