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第12回 パンツから学んだ“断捨離”の意味

by staff on 2014/8/10, 日曜日

 

引っ越しを機に “断捨離” の本や記事を読んだ。そこには “断捨離” とは捨てる事ではなく、優先順位を明確にする事とあった。
以前、見栄で買ってしまった高いパンツ。今回は身近に起こった “断捨離” とパンツの関係を、なんと幸福論にまで広げ、大げさにお話したいと思う。

さぁ引っ越し!

先月引っ越しをした。一人暮らしの私には本当にしんどい作業だった。荷作りのいくらかは業者に依頼はしたものの、予算的にも、心情的にも、全てをお願いする訳にはいかず、かなりの時間をかけて大量の荷作りと、ゴミ捨てを行った。
よくある話だが、特にこの捨てる作業が大変だ。どれも大切とか、MOTTAINAIとかで、なかなか捨てられないのだ。そこで、これまたよくある話だが、積読になっていた “断捨離” の本を改めて読み直してみた。

なになに?
「使えるか使えないかで考えるのではなく、今のあなたに必要か必要でないかで、判断しましょう」とある。
なるほど、そうか。必要か必要でないかか!よし!簡単だ。やってみよう!
これは…必要! これも…必要! こっちは…そうそう必要だわ!
………!!
おいおい、だめじゃーん!
もちろん、ゴミのようなものはすぐに判断がつく、問題は判断のつかないものを、どれだけ減らせるかなのに、荷物は一向に減らせない。
結局時間切れで引っ越し先に持ってきてしまった。

“断捨離” の本にはこうも書かれていた。断捨離は自分の価値観の優先順位を明確にすることでもある。むしろ、こちらの方が本来の意味なのだと。
荷物を十分に断捨離できなかった私としては、頭ではわかるけど、そう簡単にいかないのが人間だ!と開き直るしかない

恥ずかしい思い出のパンツが出てきた

引っ越してから何日か経つが、まだまだ段ボールに囲まれたままで、大変不自由な生活を送っている。すぐ使うはずの段ボールが、一番下に積まれていたり、どこにあるかわからなかったり…。

そんな中、懐かしいパンツが出てきた。
4~5年前、まだメーカーでガンガン仕事人間だった頃に、見栄で買ってしまった、高い高いジーンズだ。
かなりスリムなデザインで、当時は入らなくはないが、パッツンパッツンでお尻の当たりなんかムチムチで見られたものではなかった。だが、この高いジーンズを無駄にしてならないと、そのムチムチのお尻の当たりを隠すような長めのウエアーを新たに購入し、さらに出費を重ねたあげく、長い丈のせいで、せっかくのパンツの特徴あるポケットのデザインを全て隠し、ただのジーンズとかわらないはき方をしたりもしていた。全く本末転倒である。
結局このままはかなくなり、いつしかこのパンツはタンスの肥やしと化していった。

痛い話

こんなパンツを購入してしまったのには、下らない女の見栄というか、対抗意識というか、とにかく恥ずかく、痛い思い出がある。
4~5年前、当時メーカーに勤務していた私は、民放テレビ局A社で放送される通販番組で商品を販売してもらうため、テレビ局の人と番組を作っていた。A社系列の通販会社B社に商品を卸し、テレビ局が通販番組を制作するのだ。つまり、通販会社B社が私のお客さんで、テレビ局A社はその依頼により番組を制作する下請けという関係だ。
しかしテレビ局A社は、通販会社B社の親会社でもある。テレビ局A社の社員には、それを勘違いした輩が希にいる。
私のパンツのキッカケとなった女性は、そんな勘違い社員の一人だった。

その女性は、メーカーに対しても、B社に対しても上から目線で偉そうに話す。仕事で使うにはあまりにも不完全な丁寧語は、極めて感じが悪い。
「ああ、そうですか。じゃ、ここはメーカーさんが立ち会ってくれるのね。」
「ここは? どうします? 誰か持ってきてくれないと。ああ、それはこっちでやるんだ。ふん、わかりました。」

その横柄さは取引先だけでなく、スタッフにも同様だ。彼女は30代半ばだろうか。そこそこ中堅のようで、若いスタッフの多い制作現場では、お山の大将状態だ。自分が座っている席まで人を呼びつけ、どうでもいい事を指示している。
「●●さん、今どこにいるの?探してきて。今よ!」 「●●に●●を忘れてきたみたい。取ってきて」
名刺の肩書きを見る限りでは、大したポジションではない。この人は何の仕事をしている人なのか?何故こんなにいばっているのか?
撮影で使う小物を1~2分整理しはじめたかと思えば、すぐに若いスタッフにやらせて自分は席を外す。若いスタッフは私に苦笑いをしてみせる。

こりゃ、コネ社員か?どこかのお偉いさんの娘なのか?
それにしても酷い。
こういう、扱いに困る社員はどこにもいるだろうと諦めるのも一つだが、しかし、悔しいことに、彼女はとっても美人でおまけにセンスが抜群に良かった。

当時、私はそれが無性に腹が立った。
「こんな取引先とまともに話もできない者が、高い給料取って、美人でセンスも良くって・・・。」完全な嫉妬や、やっかみだ。
この時点で完全に負けだ。何の勝負かわからないが、とにかく完全に負けだ。今はそう思える。
しかし当時はそうは思わず、時彼女がとてもカッコよくはきこなしていたパンツと同じようなものを対抗意識で購入してしまうのだ。しかも見栄で彼女のものより絶対高いと思われるものをだ。
結果、高額支出をして、ただタンスの肥やしを一枚増やしただけというみじめな自分を味わう事になる。
本当にバカだ。

心の断捨離

恐らく、同じシチュエーションに今の私が遭遇しても、間違いなくこんな高いパンツの購入はしない。断言できる。なぜだろう。何が変わったのか?

実は、私の取り巻く環境は、ここ2~3年で大きく変化している。
20年以上も務めた会社をリストラされたり、親が倒れたり、その関係で引っ越しをしたり・・・。人生の中で最も環境が変化した数年だ。
その環境の変化の中で、知らず知らずの内に、私は自分の断捨離をしてきていたのかもしれない。
自分の意思と関係なく優先順位をつける事を迫られ、多くのものを捨てたり、諦めたりしながら現在に至っている。
人と比較する事をやめ、大切にするものを明快にしてきた。そうせざるを得なかったからだ。パンツを買った4~5年前とは明らかに異なる点だ。

「幸福とは人と自分を比較しなくなった時訪れる」とよく言われる。
心の断捨離ができた今、高いパンツを難なく買えたあの時より、もしかしたら心に落ち着きがあり、ある意味豊で、幸せなのかもしれない。
段ボールから出てきたこのパンツを見て、そんな事を思った。

パンツのオチ

実はこのパンツ話にはオチがある。
購入した当時ムチムチだったこのパンツ。
今はなんとスッとはけるようになった。ベルトをしないとずり落ちてしまうくらいだ。私は痩せたのだ。
心の断捨離と同時に贅肉の断捨離もできたという訳だ。

見栄を張りたい時にはけなかったパンツが、見栄を張る必要がなくなった今、はけるようになるとは、なんとも皮肉なものだ。

プロフィール

ペンネーム: 津木 雫(つぎ しずく)
オヤジ・オバチャン・オトメのO3マインドを持つ、なんちゃってコラムニスト。
約20年間メーカー勤務。広報・マーケティングを経て、現在フリーランス。
典型的な仕事人間という生活を過ごし、はたと気がつけば人生の折り返し地点。「さぁどうする!」と我が道を振り返っている真最中。
学生時代に、約15カ国を貧乏旅行。
その経験から、今の若者が育つ環境には、問題を自らの力で乗り越える体験が不足していると、感じている。若者教育関連のNPOを立ち上げ、神奈川を中心に現在活動展開中。

今月の1枚:大桟橋からの夜景


(クリックで拡大画像)

 

<コメント>
夏はやっぱり夜の海がいいですね。
これはご存知大桟橋からの夜景。ライトアップされたシーバスを入れるのがポイントです!
夜は海風もここちよく、ビール片手に夜景を眺めるのもオススメ。
(あっ、ゴミは持ち帰りましょうね)

 

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