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ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第18回)

by staff on 2014/9/10, 水曜日

大浦総合研究所 代表/大浦勇三

ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第18回)

遊びをせんとや生れけむ、戯れせんとや生れけん
遊ぶ子供の声きけば、我が身さえこそ動がるれ

- 梁塵秘抄 -

 “すばらしい仕事があるのではない。すばらしく仕事をする方法があるのだ” と言い切ったのはウォルマートの創業者サム・ウォルトン。半世紀前に米国の地方の一店舗からスタートしたウォルマートは2014年には1万店舗、売上高は約50兆円、従業員数は約200万人にまで成長。流通業界におけるコンピュータの潜在力にいち早く目をつけて、一店舗の時代に自らコンピュータ・プログラミングの講習会に出かけたといいます。“ビッグデータ時代” が叫ばれますがウォルマートはその先駆者。早くから世界中の顧客購買データ(現在は週に約3億件)の収集&分析を実施。それが現在の販売促進・新商品開発・在庫管理などの基盤になっています。基本理念は “顧客の期待を超えなさい” “競争相手よりもうまく経費をコントロールしなさい” “逆流へ向かって泳ぎなさい” 。梁塵秘抄では “頭に遊ぶは頭虱 頂(おなじ)の窪をぞ極めて食ふ 櫛の歯より天降る麻小笥(おごけ)の蓋にて命終わる” とあります。人の頭の上で生きる虱。人間の一番柔らかいところを食べて生きていけて天国のようにもみえますが、櫛で一気に?き落とされる怖れも。幸運の中でも油断しない姿勢が必要という戒めでしょうか。サム・ウォルトンは日本人好みの不器用で泥臭いタイプ。 “器用ではなく不器用だったからこそ、努力を重ねて白磁が焼けた” と語る陶芸家の井上萬二さんと通じるものがありますね。

“遊びをせんとや生れけん” 「遊」

経験や知識を体系化して伝える 教育とは激変を乗り越える知恵の修得
グローバルスタンダードの呪縛を解く 不純も包含しながら懐深くする
日本人 楽しむことを悪とみない民族 精神的な遊びを大事にした歴史
怒りは人の可能性を消す 振り向くな 後ろには夢がない、と寺山修司

 寺山 修司は戦後を代表する劇作家の一人で “天井桟敷” を主宰しました。メディアの寵児的存在であり“言葉の錬金術師” との異名をとり、歌人・俳人・演出家としても幅広く活躍。 “マッチ擦るつかのま海に霧ふかし身捨つるほどの祖国はありや” は歌人としての代表作といわれます。日本人は昔から楽しむことを悪とみない民族。 “花見” “紅葉狩” “祭” “歌舞伎” “落語” “俳句” 何でもあり。ただ、遊びや人生には上手下手が付きもの。しかも主役と脇役が頻繁に入れ替わる世界。悪口を言われる方が主役で、言う方が脇役というのが世間。現実をイリュージョンによって覆すことをめざした寺山修司の世界はイリュージョンがそのまま現実に。先例や知識は役に立たず、主役・脇役が瞬時に交代する時代に。修得すべきは想像力と人間学、現実を平気で乗り越える野生の知。 “絶対優勢は絶対不利につながり、絶対不利は絶対優勢につながる” とは大山康晴永世名人。

“仕事をせんとや生れけん” 「献」

どの組織でも 上昇期にこそ問題の種が蒔かれている
落ちながら昇っていく 何でもないようで実際は大変
想定内リスクは設計に反映、でも想定外は必ず起こる
マキャベリ 時にはマキャベリズムを頑なに否定する

 “人間は自分の持ち物と名誉さえ奪われなければ意外と不満なく生きていける” とマキャベリ。だからこそ、マキャベリは平気でマキャベリズムを否定できたのかもしれません。分析に時間をかけても限度があり、最後は直感・生命力の勝負。運命を引き寄せる技量こそが重要だと繰り返し説いているのも頷けます。東日本大震災では、 “あり得ることは起こる、あり得ないことも起こる” “すべては変わる。その変化に柔軟に対応する” ことの大切さを痛感したばかり。何をやるにも最後は、その仕事が好きで好きでたまらないという人材の存在であり、運に恵まれようと見放されようと常に態度を変えないサムライの出現。教育の本質は “人間社会とは何か” を教えるもの。 “安定” した人生や生活はあくまでも理想の世界。それでも、他人のせいにせず、あるべき理想の世界を持つことの素晴らしさ。 “絵をなすのは手ではなく眼だ” と喝破したのはルノワールです。

“学びをせんとや生れけん” 「学」

ミュンヘン五輪、男子バレーで金メダル 松平康隆監督の洞察の勝利
世界一位の旧ソ連(ロシア)に留学 ソ連が世界一になる手法を学ぶ
日本が世界一になる手法をひたすら模索 ウルトラ時間差やクイック
スポーツ世界におけるリベラルアーツ(地力・底力)導入という独創

 ミュンヘン五輪男子バレーボールを率いたのが松平康隆監督。逆立ちをして9メートル以上歩けるようにする練習までさせました。スポーツの世界におけるリベラルアーツの先駆け。“9メートル以上でないとオリンピックに行かせない” と言われて一番苦労したのが、何とエースの大古選手だったとか。現在の速攻・移動・時間差などといった攻撃システムの原型を築いたのも松平監督。世界のライバルが強敵日本を研究し尽くす中で、 “いつでもどこでも勝負は自分の得意技できめるものだ。たとえ相手がこちらの得意技を隅から隅まで調べ尽くしたとしても、なお得意技で押しに押す。それ以外に道はない” との信念を貫きました。今でも大逆転劇の準決勝戦をビデオで見ると身震いしますね。最後は修羅場を乗り越えて金メダル。指導者とは、教える人間ではなく自力で知恵を生みだせる人間を育てること、知を注ぐのでなく引き出すこと。まさに達人の域ですね。

「遊びは仕事、仕事は遊び」
「仕事は学び、学びは仕事」
「学びは遊び、遊びは学び」

 今回とりあげた「遊・献・学」それぞれの4行文は、拙書「ビジネス梁塵秘抄(一)~(九)」(全10巻)から抽出したものです。次回以降も「遊・献・学」から各々4行文を一つずつ抽出してご紹介していきたいと思います。

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(第18回了)

 

大浦勇三(おおうら ゆうぞう) プロフィール

大浦勇三(おおうら ゆうぞう)  

大浦総合研究所 代表 (http://www.mmjp.or.jp/ooura/

石川県七尾市出身。
早稲田大学卒業、筑波大学大学院修了。
米国経営コンサルティング会社 アーサー・D・リトル 主席コンサルタントを経て現職。
主担当領域は、経営改革/企業再生、経営戦略/情報通信技術戦略策定、業務改革/組織改革、研究開発/商品開発マネジメント、マーケティングマネジメント、ナレッジマネジメント、イノベーションマネジメント、サプライチェーンマネジメント、人材マネジメント、コーチング/メンタリング、プロジェクト/プログラムマネジメント、ベンチャービジネス支援等のコンサルティング。

筑波大学大学院講師、城西国際大学客員教授、名城大学講師、産業能率大学講師、中小企業大学校講師などを歴任。

主な著作物:

  • 「ビジネス梁塵秘抄(一)~(九)」<全10巻>(大浦総合研究所:PDF版)
  • 「イノベーション・ノート」(PHP研究所)
  • 「ITプロジェクトマネジャーのためのコーチング入門」(ソフトリサーチセンター)
  • 「図解 日本版LLP/LLCまるわかり」(PHP研究所)
  • 「IT技術者キャリアアップのためのメンタリング技法」(ソフトリサーチセンター)
  • 「よいコンサルタントの見分け方、かかり方」(清話会)
  • 「日本のモノづくり - 52の論点」<共著>(日本メンテナンス協会)
  • 「現場主導型の組織運営とスピード戦略」(日本監督士協会)
  • 「eコミュニティがビジネスを変える」<訳>(東洋経済新報社)
  • 「ナレッジマネジメントが見る見るわかる」(サンマーク出版)
  • 「図解 ナレッジ・カンパニー」(東洋経済新報社)
  • 「ナレッジマネジメント革命」(東洋経済新報社 )
  • 「図解 グローバル・スタンダード革命」(東洋経済新報社)
  • 「業務改革成功への情報技術活用」(東洋経済新報社)
  • 「情報化戦略と投資評価・システム運用管理の実際」<編著>(企業研究会)
  • 「会社改革実務辞典」<共著>(産業調査会)
  • 「プロジェクトマネジャー(PM)の育成・スキルアップのためのメンタリングの進め方と実践法」 (ソフトリサーチセンター:CD-ROM版)   など

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