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第13回 災害大国日本とアマチュアリズム

by staff on 2014/9/10, 水曜日

 

9月は防災月間。今回は、対策の目処の立たない広島の土砂災害から思う、決して他人ごとではない現状と、その一つの解決策「アマチュアリズム」についてお話してみたい。

横浜も同じ!

広島県の土砂災害被災地に知人がいる事から、このニュースには目が離せない。
知人宅は幸いにも床下浸水に留まったが、その親類や友人には被災された方々もいるそうだ。
積み上げられた土嚢の撤去の目処が立っていない事や、希望する公営住宅の抽選に外れた多くの方々の報道を毎日目にしながら、事態の大きさと深刻さに、ただただおののくばかりだ。

自然災害により突然命の危険にさらされ、家まるごと失う。これは広島に限った事ではない。神奈川県も、もちろん横浜も特別警戒区域の多い地域。以前私が住んでいた南区の井土ヶ谷や弘明寺なども、急斜面に住宅の建つエリアだった。
「うちは急斜面じゃないから良かった~」そう考えるのも一つだ。しかし、そうも言っていられないらしい。現在日本近郊の海面水温は、過去30年間大きく上昇し続けているそうで、こうなると、これまで遠い太平洋沖で発生していた台風が、近い将来は日本に比較的近い場所で発生し、しかも大型化してこの関東にも上陸して来る可能性が高まっているのだそうだ。
巨大化した台風の直下では、想像を超える上昇気流が発生し、海水面が異常に上昇する。高潮と重なれば、地震の津波と同様に、大きなパワーを持った高波が海岸を襲う。すでに東南アジアでは、台風による高波の壊滅的被害が報じられている。横浜には、海も川もある。豪雨の被害は土砂災害だけにはとどまらないかもしれない。
災害は水によるものだけではない。4つの大きなプレートの上にある日本は、国土全体をまるでメロンの網の目のように活断層が覆う。今後30年以内に7割以上の確立で発生すると言われる首都直下型地震の際には被害を拡大させる事は間違いない。
今後、ここは絶対安心と言えるところを日本で探す事は大変困難なのだ。つまり、広島県の土砂災害や、先の東日本大震災の様に、これまでの経験をはるかに超える自然災害が襲って来る事態は、この横浜でも十分に考えられ、今はたまたま被災していないだけで、明日は被災者になるかもしれないという事なのだ。

行政を支える大きなパワー

ここで話したい事は、恐怖と不安を必要以上にあおりたてる事ではない。
これから先、これらの災害時に、どう対応していけばいいのかを検討したいのだ。全てを解決できるスーパーアイデアは残念ながら存在しない。しかし一つのヒントとして、被災していない市民の力が重要な働きをするのだとつくづく思う。もちろん災害時には県や国の行政の役割は大きい。専門的な知識を持ったプロ集団も欠かせないだろう。しかしそれだけでは、必ず不十分というケースが発生する。一つの自治体だけでは対応できないケースや、「公平性の担保」が足かせとなり、行政では対応できないケースなどがそれに当たる。

今回の広島の場合では、家の土砂を土嚢につめたが、それをどこに持っていくか苦慮していたり、公平性の担保を理由に、足が悪く1階にしか住めない被災者でも、1階の公営住宅を優先的に抽選してもらう事はできない。

しかし、民間なら、市民なら。できる事もある。
もし、ボランティアに現地に行った人たちや県内の人たち、または全国の人たちが、土嚢をひと袋ずつ家に持ち帰ったらどうだろう。短期間に土嚢は減少するのではないか?
もし、個人所有の土地や空家を安く提供してくれたらどうだろう。今より多くの被災者に、希望に近い仮住まいが提供できるのではないか?

あくまで思いつきの素人のアイデアだから、いか程の現実性があるかどうかはわからない。
しかし、ここで言いたいのは、もし自分に、あるいは、自分の家族が今被災していたらと、リアルに想像し、当事者でない(被災していない)人達が、当事者意識を持って、何か出来る事を探すという市民の力が、これから大切になるのではないかという事だ。

広島から遠く離れた私たちにも出来る事はある。ありきたりだが、例えば寄付だ。私はカードのポイントを利用した。ヤフーポイントが数千円溜まっていて、これをサイトから寄付した。いくつかのボタンを数回押すだけで簡単に寄付ができた。言わばただでもらったポイントだ。自分のお財布が痛むわけではない。実にお手軽だが、誰でもすぐに出来る事であり、全国のヤフー会員がこれをしたら、莫大な金額になり、大きなパワーとなる。

アマチュアリズムの必要性

話は変わるが、先日、教育関係者向けのイベントを開いた。その際にご登壇いただいた東京大学の小玉重夫先生が、「アマチュアリズム」についてお話くださった。これまでプロ(専門家)がプロの視点で問題解決に当たるだけだった事を、これからはアマチュアがアマチュアの視点で問題解決に当たる「アマチュアリズム」が求められる時代だとお話されていた。

ヤフーポイントの寄付もまさにアマチュアリズム。ポイント寄付だってお手軽だっていいじゃない。アマチュアのやり方で、アマチュアの視点や発想で事に当たる。こういうアマチュアリズムの蓄積が、これからは大きな役割を果たしていき、行政の限界を埋める大きなパワーになるのだと強く思う。先ほど素人のアイデアと言ったが、土嚢の持ち帰りだって、行政では考えつかないアマチュアの発想だ。悪くないのかもしれない。

これから益々の増加が予想される大型自然災害。
全国の被災していない人々が、他人事とせず、被災者に対して出来る事を少しでも実行に移す事が当然の世の中になったなら、全国の人々が「もし自分に何か起こったとしてもなんとかなる」と、少し安心できる日本になるのではないだろうか。

プロフィール

ペンネーム: 津木 雫(つぎ しずく)
オヤジ・オバチャン・オトメのO3マインドを持つ、なんちゃってコラムニスト。
約20年間メーカー勤務。広報・マーケティングを経て、現在フリーランス。
典型的な仕事人間という生活を過ごし、はたと気がつけば人生の折り返し地点。「さぁどうする!」と我が道を振り返っている真最中。
学生時代に、約15カ国を貧乏旅行。
その経験から、今の若者が育つ環境には、問題を自らの力で乗り越える体験が不足していると、感じている。若者教育関連のNPOを立ち上げ、神奈川を中心に現在活動展開中。

今月の1枚:芸術の秋


(クリックで拡大画像)

 

<コメント>
毎日が少しずつ秋らしくなってきました。秋と言えば芸術の秋。おうちに小さなアートスペースを設けてちょっとだけリッチな気分を味わってみてはいかがでしょう?

 

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