映画になったヨコハマ(第2回) あのレトロなビルで閉じ込められた犯人
死刑台のエレベーター
制作 2010年 角川映画 |
もはや古典となった1957年公開のフランスの名画にして、ルイ・マル監督の処女作『死刑台のエレベーター』を、現代の横浜を舞台に、世界で初めてのリメイクに果敢にチャレンジした。監督の息子であるマニュエル・マル(映画監督)もサポートしているという熱の入れようだ。
最大の見せ場となるエレベーターが設置してあるビルのロケは、1936年築でギリシャ・コリント式列柱が特徴的な横浜郵船ビル(日本郵船歴史博物館)で行われるなど、全体に“横浜度”は高い。
芽衣子(吉瀬美智子)は、愛人で夫の部下の時籐(阿部寛)との恋に身を焦がすあまり、時籐を実行犯に、企業グループ会長である夫(津川雅彦)を自殺に見せかけて殺害する完全犯罪を企てる。筋書きでは15分で終わるはずだったが、そうやすやすとはいかないもので、時籐は犯行直後、週末で電源の落ちたエレベーターに閉じ込められてしまう。
さらに、当のビル近くに偶然居合わせた交番勤務の警官の赤城(玉山鉄二)と美容師の美加代(北川景子)という若い恋人同士が、衝動的に時籐の自動車を盗んで暴走したことで、歯車は激しく狂い始める。
芽衣子は、約束の場所に現れない時籐を探して夜の横浜をさすらい歩き、時籐は、破滅に続くエレベーターから必死の脱出を試みる――。
真相の解明に挑む刑事(柄本明)、横浜をシマとする暴力団組長(平泉成)とその情夫(りょう)など、脇役が良い味を出している。残念ながら、阿部は最近コメディの印象が強いので、奮闘すればするほど、「それじゃ脱出できないっしょ」と失笑を誘われる。それに輪をかけて、玉山が、『マッサン』にも通じる、「警官がそれやっちゃダメでしょ」というダメダメ感を出していて、ちょっとだけマッサン・ロスを埋めてくれる。
とりわけオリジナルのファンには不満も強いようだが、時代も国も違う設定でのリメイクというのは、なかなか難しい。芽衣子が歩き回る横浜の街は、異国情緒があふれすぎているし、日本第2の大都市にしては、偶然がありすぎる。重要な小道具であるフィルムカメラに加え、そもそもエレベーター自体がちょっと古めかしい。
それでも、おなじみの横浜が舞台だけど、ちょっと異質の世界が味わえると思えばいい。
横浜度(横浜の露出度、横浜を味わえる度) 60%
筆者紹介
塚崎朝子(つかさき あさこ) ジャーナリスト。世田谷生まれの世田谷育ち。読売新聞記者を経て、医学・医療、科学・技術分野の執筆が多いが、趣味の映画紹介も10年以上書き続けている。年に数時間だけ、横浜市内のキャンパスで教壇に立たせていただいている。 著書に、『新薬に挑んだ日本人科学者たち』『いつか罹る病気に備える本』(いずれも講談社)、『iPS細胞はいつ患者に届くのか』(岩波書店)など。「日経Gooday」で「その異常値、戻しましょう-STOP・メタボの12ステップ」連載中。 |
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