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書評 「10年後失業」に備えるためにいま読んでおきたい話 夜間飛行 城繁幸 著

by staff on 2015/6/10, 水曜日
 

本を手にしたのは半年前であった。「最初から仕事が出来ない人なんていませんよ。よい人材も悪い人材も環境によって作られるのです」この帯に興味をもった。そしてもう一方の帯の言葉は「もしプロ野球球団が終身雇用だったら!?」このギャップは何だろうかとも思っていた。

事業継承を急ぐことになって、ふと読み始めたらとまらなかった。奇しくも某球団がこの時期トップを走っている。さて、この本にでてくる連合ユニオンズはどうなるのかは、著者の次回作を待つしかないのか。

「眼を閉じて、10年後の自分を思い浮かべてみてください。“責任ある仕事を任され、安定した収入を得ている”そんな自分を明確にイメージすることができますか?」
「“さすがに失業している・・ってことはないだろう”そうおもったあなたは、日本の雇用関係についての見通しが少しあまいかもしれません。」

そう!読み終わって気がついたのである。タイトルよりも、教訓1から教訓16の16の教訓がとても刺激的だったのだ。
たとえば「きれい事しか言わない人を信用してはならない」「若手に仕事を任せる」「人に優しい会社などない」
なるほど、きれいごとだけでは問題が解決しない。若い人に仕事を任せないとベテランの世界になり、組織が硬直していく。若手に任せて、空いた時間は次へのステップへの段取りだ。人に優しいと言ってる会社だって、困ったときは優しくなんかしていられない。たまたまある時期それが出来てるだけなのである。
優しさは厳しさだという人もいるくらいだ。厳しさがあって、優しさがある。

主人公の山田はある日とんでもないミッションが与えられてしまう。「史上初の終身雇用プロ野球球団連合ユニオンズへの出向を命ぜられるのである。」
「まあ無理せんと、プロの練習のことはわいらに任せてくれといたらええんや。見てみい、みんな絶好調やないか。わしらくらいの年季になると、春先になると体は自然にできてくるもんやねん」それが、最初は真面目に練習していたものが、10年選手をまねして、だんだん朝連に出ないようになる。トレーニングを担当していた松浦がいくつかの新しい練習メニューのインナーマッスルを効果的に鍛える方法や、練習前後のヨガを取り入れたストレッチ、各種の食事制限など、アメリカの大学で教えている最新のアプローチを提案しても、拒否されてしまう。

「ひょっとして、彼らユニオンズの選手たちはサラリーマン化しつつあるのではないか。」
著者は教訓として「まず、今の職場環境が合わないと感じても、ネガティブになることなく、できるだけ前向きに成果や経験を積み上げることに専念してください。」「そうした姿勢で業務に取組んでおけば、人事異動の機会にも恵まれるはずです。意欲があって、経験も豊富な人材なら、どんな上司でも積極的に部下にほしがるものですからね。」

ユニオンズは最初は快調に勝ち進んだが、後半になって、疲れが出てきたり、故障者が続出してくるとずるずると最下位に定着してしまう。圧倒的な負け数を数えてしまう。消化試合の感じがするころ、それでも危機感から二軍の選手で調子のいいものを主体に試合に挑み始める。球団も外資系に身売りされることになる。
そんななかで最終戦を迎える。エキサイトな試合が展開される。
ここでは「若手に仕事を任せる」という教訓で、
10年後に生き残る人材になる三か条が示される。
レ 自分以外の誰かに仕事を教える
レ 自分以外の誰かに仕事を任せる
レ 誰もやっていない課題を切り出して仕事をつくる

「後輩でも新人でも構わないので、自分以外の誰かにしっかりと仕事を教えてあげることです。仕事でも勉強でもそうですが、自分の理解をより深いものにするためのコツは、他人が理解できるよう説明することです。その過程で存在意義が説明できない仕事は、上司にかけあって見直しを勧めればいいでしょう。他者にメリットを説明できない仕事というのは、たいていは仕事のための仕事だからです。そして、次にその仕事を任せることです。」

山田はその後、テレビの討論会に招へいされる。テーマは「どうする日本の雇用問題! ユニオンズが僕らにつたえたかったこと」なのだ。その討論は、新しいものがないまま進んで、終わりに近づいて観客席から突然女性の声が響き渡った。「あなた達、真面目にかんがえているんですか?・・さっきから聞いていたら中身なんか全然ないじゃないですか!」それは山田の部下の派遣でユニオンズから契約を打ち切られた鈴木さんだった。

著者は「同一労働同一賃金制度の実践こそ今の日本に必要な改革ではないか!」「要は育てやすいタイプから、ほっておいても自分でかってに育っていくタイプの人材の必要です。」
著者の城繁幸さんをこれから目が離せない。

(文:横須賀 健治)


 

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