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ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第28回)

by staff on 2015/7/10, 金曜日

大浦総合研究所 代表/大浦勇三

ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第28回)

遊びをせんとや生れけむ、戯れせんとや生れけん
遊ぶ子供の声きけば、我が身さえこそ動がるれ

- 梁塵秘抄 -

 麻雀人気にかっての勢いはありませんが、シニア層の親睦・ボケ防止には絶大な人気とか。麻雀全盛時には、テレビ・小説・漫画・映画によくとりあげられました。その中心にいたのが “麻雀放浪記” を書いた “雀聖” 阿佐田哲也。もう一つのペンネームを色川武大といい、直木賞を受賞した実力派の作家でした。戦後、闇屋・博徒などの職を転々とし、それが “ツキの流れを読んでそれに従う” “相撲でいえば9勝6敗を狙う、8勝7敗では寂しい。10勝を狙うと無理がでる” “幸運が続きすぎると危ない” などの人生哲学を生みました。自宅の1階を365日・24時間開放し、そこに各界で活躍する強者(つわもの)が入り浸り、さながら “梁山泊”。その代表格がミュージシャンの井上陽水。しかし、阿佐田哲也は後々まで陽水の歌を聴いたことがなかったとの伝説も。また、イラストレータの和田誠は、映画大好き人間で映画監督が夢。その思いが “麻雀放浪記” の監督作品につながり、あの名作が誕生しました。麻雀にのめり込んだ経験のある私には堪えられない映画です。梁塵秘抄では “博打の好むもの、平骰子かな骰子四三さい、それをば誰か打ち得たる文三刑三月々清次とか” とあります。当時のギャンブルは一種のエンターテインメントで、博打の名人は大スター。人生も時にはギャンブル・博打に譬えられます。8勝7敗で勝ち越すだけでも万々歳、7回は負けていいんですからね。

“遊びをせんとや生れけん” 「遊」

どこへ行くかわからない どこにも辿りつけない
失敗の達人 問題を抱えこまず最善と最悪を睨む
人に勝つ道は知らなくも 己に勝つ道だけは知る
マネは御法度 必ず時代は飢えている、と阿久悠

 作詞家・阿久悠は詩人・小説家としても大活躍しました。母校の阿久悠記念館には “夢は砕けて夢と知り 愛は破れて愛と知り 時は流れて時と知り 友は別れて友と知り” の詩が飾られています。歌謡曲の作詞数は5,000曲以上、都はるみの “北の宿から”、石川さゆりの “津軽海峡・冬景色”、ピンク・レディーの “UFO” 等の大ヒット曲を世に送り、日本レコード大賞受賞は史上最多の5回。淡路島出身の阿久悠は、本四架橋ができるまで島とは船で往来し、東京との往復時は仕事と休暇のスイッチ切換を船の中でやっていたとのこと。本四架橋により東京とは便利になりましたが “心のスイッチ切替” の場を失った寂寥感は痛切で無念の思いも。 “感動する話は長い・短いではない。3分の歌も2時間の映画も感動の密度は同じ” が持論。“時代日記” をもとに世界の最善と最悪を睨み、時代の中の “隠れた飢餓” を狙い撃つ姿勢は学ぶ価値がありますよね。

“仕事をせんとや生れけん” 「献」

自分には何も見えていないという自覚 人間でも下には下がある
地力を積み上げる 教わっていないことがちゃんとやれて一人前
グーグルは テクノロジーとリベラルアーツの交差点に立つ会社
散る時を知り 花も花なれ 人も人なれ、とは細川ガラシャ夫人

 細川ガラシャ(明智 珠)は、明智光秀の三女で細川忠興の正室。武将・細川藤孝(幽斎)は織田信長に引き立てられた重臣で、明智光秀の部下でもありました。主君・信長のすすめで、珠は藤孝の嫡男・忠興へ嫁ぐことに。しかし、父の光秀が織田信長を本能寺で討った後に自滅、珠は一転 “逆臣の娘” に。忠興は珠を丹後国に幽閉しますが、覇権を握った羽柴秀吉のとりなしもあり、珠は細川家に戻ることができました。珠はそれまで禅宗を信仰していたようですが、その後キリシタン大名・高山右近の影響もあり、カトリックの教えに強く魅かれたようです。“散りぬべき 時知りてこそ 世の中の 花も花なれ 人も人なれ” が辞世の句。花も人も散り時を心得てこそ美しいとの強い思い。教わっていないことをやれてこそ本物。米国・グーグルの強みも、テクノロジーの爆発を支えるリベラルアーツ基盤と、咲き時と散り時を覚悟した米国流の武骨と酔狂にあるのかも。

“学びをせんとや生れけん” 「学」

自然に対する諦念 コツコツ努力し、いざという時はすぐ諦める
人間のやることにどんでん返しは付きもの 頭から決めつけない
順調と思っていても 何を基準にするかによって評価は逆になる
協働する作法を叩き込む 人のことを学び続ける、とトーリ監督

 松井秀喜選手がヤンキースに入団した時の監督がジョー・トーリ。松井選手は石川県初の野球のスーパースターです。私は石川県・能登の出身、それまでの石川県はどちらかというと相撲王国で、その代表格が隣の中学で私の2学年下だった横綱・輪島。米国出張の折には息子夫婦が住むニューヨークに寄り、ヤンキー・スタジアムへ松井選手の応援に駆けつけました。後日、息子夫婦のアパートで、友人を訪問した松井選手と息子夫婦がロビーで遭遇、その写真が我が家を飾っています。しかし、人生にどんでん返しは付きもの。翌年、フライをとるグラブが芝生にひっかかり左手首を骨折。偶然テレビの生中継を観戦、松井選手の歪んだ顔は忘れられません。その直後、トーリ監督が松井選手に当たり前のように肩を差し出し、レフトからダッグアウトまで二人で歩いていく姿は強く印象に残ります。人間に学び続けるリーダーの姿は仁将を髣髴とさせましたね。

「遊びは仕事、仕事は遊び」
「仕事は学び、学びは仕事」
「学びは遊び、遊びは学び」

 今回とりあげた「遊・献・学」それぞれの4行文は、拙書「ビジネス梁塵秘抄(一)~(十)」(全10巻)から抽出したものです。次回以降も「遊・献・学」から各々4行文を一つずつ抽出してご紹介していきたいと思います。

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(第28回了)

 

大浦勇三(おおうら ゆうぞう) プロフィール

大浦勇三(おおうら ゆうぞう)  

大浦総合研究所 代表 (http://www.mmjp.or.jp/ooura/

石川県七尾市出身。
早稲田大学卒業、筑波大学大学院修了。
米国経営コンサルティング会社 アーサー・D・リトル 主席コンサルタントを経て現職。
主担当領域は、経営改革/企業再生、経営戦略/情報通信技術戦略策定、業務改革/組織改革、研究開発/商品開発マネジメント、マーケティングマネジメント、ナレッジマネジメント、イノベーションマネジメント、サプライチェーンマネジメント、人材マネジメント、コーチング/メンタリング、プロジェクト/プログラムマネジメント、ベンチャービジネス支援等のコンサルティング。

筑波大学大学院講師、城西国際大学客員教授、名城大学講師、産業能率大学講師、中小企業大学校講師などを歴任。

主な著作物:

  • 「続・ビジネス梁塵秘抄(一)」<全10巻>(大浦総合研究所:PDF版)
  • 「ビジネス梁塵秘抄(一)~(十)」<全10巻>(大浦総合研究所:PDF版)
  • 「イノベーション・ノート」(PHP研究所)
  • 「ITプロジェクトマネジャーのためのコーチング入門」(ソフトリサーチセンター)
  • 「図解 日本版LLP/LLCまるわかり」(PHP研究所)
  • 「IT技術者キャリアアップのためのメンタリング技法」(ソフトリサーチセンター)
  • 「よいコンサルタントの見分け方、かかり方」(清話会)
  • 「日本のモノづくり - 52の論点」<共著>(日本メンテナンス協会)
  • 「現場主導型の組織運営とスピード戦略」(日本監督士協会)
  • 「eコミュニティがビジネスを変える」<訳>(東洋経済新報社)
  • 「ナレッジマネジメントが見る見るわかる」(サンマーク出版)
  • 「図解 ナレッジ・カンパニー」(東洋経済新報社)
  • 「ナレッジマネジメント革命」(東洋経済新報社 )
  • 「図解 グローバル・スタンダード革命」(東洋経済新報社)
  • 「業務改革成功への情報技術活用」(東洋経済新報社)
  • 「情報化戦略と投資評価・システム運用管理の実際」<編著>(企業研究会)
  • 「会社改革実務辞典」<共著>(産業調査会)
  • 「プロジェクトマネジャー(PM)の育成・スキルアップのためのメンタリングの進め方と実践法」 (ソフトリサーチセンター:CD-ROM版)   など

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