Skip to content

映画になったヨコハマ(第5回) 宮崎アニメが描く半世紀前の港町横浜

by staff on 2015/8/10, 月曜日
 

コクリコ坂から

制作 2011年 スタジオジブリ
原作 高橋千鶴 佐山哲郎
脚本 宮崎駿 丹羽圭子
監督 宮崎吾朗
声の出演 長澤まさみ 岡田准一 竹下景子 石田ゆり子 柊瑠美 風吹ジュン 内藤剛志 風間俊介 大森南朋 香川照之
DVD・Blu-ray発売元 ウォルト・ディズニー・ジャパン

半世紀ほど昔の昭和半ば、画になる横浜は、宮崎アニメにも描かれた。原作は高橋千鶴の漫画で、映画の監督は駿の長男、宮崎吾朗だ。「コクリコ坂」は架空の坂だが、坂を登り切った所から見下ろす海は、港の見える丘公園からの眺めに似ている。

経済白書で「もはや戦後ではない」と言われてから10年近くが経過しようという、1963年の横浜。翌年にアジアで初開催の東京五輪を控え、着々と復興が進んでいる。主人公は、高校2年の松崎海(声・長澤まさみ)で、フランス語の海(la mer)に因み、愛称はメルだ。海の通う山側にある港南学園は、セーラー服の共学校で、海は漠然と医師になりたいと考えているというから、進学校かもしれない。船乗りだった海の父は朝鮮戦争で亡くなり、英米文学者で不在がちの母親(声・風吹ジュン)に代わり、同じ学校に通う妹弟の世話を焼き、家事をこなし、自宅の下宿屋「コクリコ荘」を切り盛りしている。

港南学園には、明治時代に建った「カルチェラタン」というクラブハウスがあるが、老朽化で取り壊しの危機にある。それを救おうと学生新聞で健筆を振るうのが、3年生で新聞部部長の風間俊(声・岡田准一)だ。いつしか海とを通わせるようになった俊だが、海の家で海の父が写っている写真を見て、2人の“出生の秘密”を悟ってしまう。

2人は学園の理事長で実業家の徳丸(声・香川照之)に直談判に行くなど、カルチェラタン存続の画策をするが、その成り行きと共に、海と俊の淡い恋の行方が見せ場。最後に鍵を握る人物として外国航路の船長、小野寺(声・内藤剛志)が登場する。

“出生の秘密” は子どもには衝撃的だが、他の宮崎アニメに比べれば、これと言って大きな出来事がないまま、緩やかに物語が進んでいく。ガリ版刷りの学生新聞、コロッケ屋の買い食い、学生運動……何もかもが懐かしい。ちょっとレトロな桜木町駅を降り、山下公園を歩く2人もいい。コクリコ荘の建物は、磯子区の根岸なつかし公園に保存されている大正時代の和洋折衷の屋敷、旧柳下邸がモデルのようだ。
横浜度(横浜の露出度、横浜を味わえる度) 70%。

挿入歌の1つが、名曲『上を向いて歩こう』。余談だが、8月12日は日航機事故で不慮の死を遂げた坂本九の30回目の命日だ。合掌。

筆者紹介

塚崎朝子(つかさき あさこ)

ジャーナリスト。世田谷生まれの世田谷育ち。読売新聞記者を経て、医学・医療、科学・技術分野の執筆が多いが、趣味の映画紹介も10年以上書き続けている。年に数時間だけ、横浜市内のキャンパスで教壇に立たせていただいている。

著書に、『新薬に挑んだ日本人科学者たち』『いつか罹る病気に備える本』(いずれも講談社)、『iPS細胞はいつ患者に届くのか』(岩波書店)など。「日経Gooday」で「その異常値、戻しましょう-STOP・メタボの12ステップ」連載中。

 

 


 

Comments are closed.

ヨコハマNOW 動画

新横浜公園ランニングパークの紹介動画

 

ランニングが大好きで、月に150kmほど走っているというヨコハマNOW編集長の辰巳隆昭が、お気に入りの新横浜公園のランニングコースを紹介します。
(動画をみる)

横浜中華街 市場通りの夕景

 

横浜中華街は碁盤の目のように大小の路地がある。その中でも代表的な市場通りをビデオスナップ。中華街の雰囲気を味わって下さい。
(動画をみる)

Page Top