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ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第29回)

by staff on 2015/8/10, 月曜日

大浦総合研究所 代表/大浦勇三

ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第29回)

遊びをせんとや生れけむ、戯れせんとや生れけん
遊ぶ子供の声きけば、我が身さえこそ動がるれ

- 梁塵秘抄 -

 米国ビジネススクール上位校の就職先は、永らくマッキンゼーに代表される経営コンサルティング会社やJPモルガン・ゴールドマンサックスなどの金融機関に人気が集中していました。しかし、最近は変化が起こり、金融機関に変わってICT(情報通信技術)系のアップル・グーグル・アマゾンの人気が急上昇しているとか。“最新ICTを最大限活用したビジネスモデルをどう構築するか” が今後のビジネスの核心ということでしょうか。“人工知能” “ビッグデータ” などを駆使しながら、どこまでアプリケーション(用途)コンセプトを練りあげることができるか。そこには “マジック(奇術)ショー” に似たビジネスプロセスが求められそうです。 ①何を見せるかのテーマ設定 ②具現化のアイデア創出 ③タネ・仕掛けのブラックボックス化 ④マジックショー(コト)そのものの商品化。梁塵秘抄では“羽なき鳥の様がるは、炭取、炭取楫取(かいどり)かいもとり、石取(いしなどり)虎杖(いたどり)垣生に生うてふさるとりや 弓取筆取小弓の矢取とか”とあります。鳥は鳥でも羽のない鳥はという謎かけで、さまざまなトリが出てくる言葉遊び。弓取はまさに弓の名人・武の達人で、時代が移り変わろうとも名人・達人は別格。ICT主流の中でメディア没落論が盛んですが、衰退の原因はICTそのものでなく、発信する情報(中味)の劣化こそが根源。他山の石とすべきかも。

“遊びをせんとや生れけん” 「遊」

ベキ乗則の時代 進む方向を間違えぬための蓄積の勝負
破壊的な危機をしのぐには 理詰めの効率追求では無理
ぼんやりとした幸福感 男の剛腕より女の柔軟性の時代
朦朧体 神はサイコロを振らない、とアインシュタイン

 アインシュタインはドイツ生まれのユダヤ人で、誰もが知る20世紀最大の理論物理学者。“特殊相対性理論および一般相対性理論” は特に有名で、1921年ノーベル物理学賞を受賞しました。時に“天才(IQ190)”の代名詞として引き合いに出される存在ですよね。 “好奇心を失うな。自分の目で見、心で感じること。過去から学び、今日を生き、未来に希望をもつこと“。 好奇心の塊のアインシュタインでも多くの挫折を経験、それこそ未知の領域に挑戦したことの何よりの勲章ということかもしれません。今後は “カオス” と、そこから生じる “アクシデント” が頻発する時代。神はサイコロを振らないからこそ、人間は自らを律することが不可欠。ランダム要因が自己組織化し、臨界での動きがベキ乗則に支配される領域へ突入。将来の人工知能のIQが10000と予想される世界では、男の剛腕・理詰めだけでは限界、女の柔軟・直観がワイルドカードになりそうですね。

“仕事をせんとや生れけん” 「献」

人に固有のローカルルールや基準がはびこることも多い
歴史は逆説に満ちて人々の純粋な意図や目的をあざ笑う
過酷な結果が突き付けられるのを甘受 重荷が人を造る
エベレストの頂上の環境に適応せよ、とジム・コリンズ

 ドラッカーの後継者といわれるジム・コリンズ。不確実でカオスの時代でも成長できる企業組織を探究。肝(きも)は “他人と違うことを恐れないこと”。 組織そのものは手段にすぎないのに、いつの間にか目的化してしまうという落とし穴。頻繁に起こる“目的系”と“手段系”の混同。イノベーションでは、先駆者といえども競争に勝てる保証はありません。先駆者が市場の覇者になる確率は意外と低いんですよね。これまでの組織社会は “マネージ(管理する)” が優先、しかしネットワーク社会に入ると“リード(指導する)”が勝敗を左右。組織とネットワークの違いは、何の権限もなく管理が不可能だからこそ自らがリーダーシップを発揮するしかないとの一点。そのルールは ①指示されなくても自主的に努力 ②仕事でなく責任を与えられていることの自覚 ③成功は仲間のおかげ・失敗は自分の責任。捨て身の覚悟で、自律・分散・協調せよということですかね。

“学びをせんとや生れけん” 「学」

難しいことを簡単に考える習慣 己の手で編集するのが一番
挑戦 批判されないようなものは最初から創らないのが得策
老人は目的・制約から解放される 芸術家と同じようなもの
だから老人というのはクリエイティブなはずだ、と横尾忠則

 “破壊的イノベーションは職を生み、効率的イノベーションは職を奪う” と語るのは米クリステンセン教授。いつの時代も破壊的イノベーターは既存の組織の枠外から生まれるようです。世にいう “傾奇者(かぶきもの)” の出番。横尾忠則はグラフィックデザイナーとして一世を風靡、その活躍はあまりにも鮮やかでしたが、ニューヨーク近代美術館でのピカソ展に衝撃を受け、その後に画家宣言。ごく自然な形で傾奇者として枠の外に飛び出しました。何にでも理論や分析から入らない “けもの道”。 精神世界と絵画は深いところで結びつくという確信。難しいことを簡単に考え抜く腕力。今後は企画・技術・サービスのすべてがコンテンツ(本物)勝負。シニアは邪魔者でなく傾奇者として処遇。ひと捻りしたり、笑い飛ばしたり、涙を誘ったりする道化師。世の課題は後を絶たず、一つが解消されれば直ぐに次の課題が発生。道化の道は時間的・空間的にも無限(∞)。

「遊びは仕事、仕事は遊び」
「仕事は学び、学びは仕事」
「学びは遊び、遊びは学び」

 今回とりあげた「遊・献・学」それぞれの4行文は、拙書「ビジネス梁塵秘抄(一)~(十)」(全10巻)から抽出したものです。次回以降も「遊・献・学」から各々4行文を一つずつ抽出してご紹介していきたいと思います。

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http://www.syplus.jp/ooura/

(第29回了)

 

大浦勇三(おおうら ゆうぞう) プロフィール

大浦勇三(おおうら ゆうぞう)  

大浦総合研究所 代表 (http://www.mmjp.or.jp/ooura/

石川県七尾市出身。
早稲田大学卒業、筑波大学大学院修了。
米国経営コンサルティング会社 アーサー・D・リトル 主席コンサルタントを経て現職。
主担当領域は、経営改革/企業再生、経営戦略/情報通信技術戦略策定、業務改革/組織改革、研究開発/商品開発マネジメント、マーケティングマネジメント、ナレッジマネジメント、イノベーションマネジメント、サプライチェーンマネジメント、人材マネジメント、コーチング/メンタリング、プロジェクト/プログラムマネジメント、ベンチャービジネス支援等のコンサルティング。

筑波大学大学院講師、城西国際大学客員教授、名城大学講師、産業能率大学講師、中小企業大学校講師などを歴任。

主な著作物:

  • 「続・ビジネス梁塵秘抄(一)」<全10巻>(大浦総合研究所:PDF版)
  • 「ビジネス梁塵秘抄(一)~(十)」<全10巻>(大浦総合研究所:PDF版)
  • 「イノベーション・ノート」(PHP研究所)
  • 「ITプロジェクトマネジャーのためのコーチング入門」(ソフトリサーチセンター)
  • 「図解 日本版LLP/LLCまるわかり」(PHP研究所)
  • 「IT技術者キャリアアップのためのメンタリング技法」(ソフトリサーチセンター)
  • 「よいコンサルタントの見分け方、かかり方」(清話会)
  • 「日本のモノづくり - 52の論点」<共著>(日本メンテナンス協会)
  • 「現場主導型の組織運営とスピード戦略」(日本監督士協会)
  • 「eコミュニティがビジネスを変える」<訳>(東洋経済新報社)
  • 「ナレッジマネジメントが見る見るわかる」(サンマーク出版)
  • 「図解 ナレッジ・カンパニー」(東洋経済新報社)
  • 「ナレッジマネジメント革命」(東洋経済新報社 )
  • 「図解 グローバル・スタンダード革命」(東洋経済新報社)
  • 「業務改革成功への情報技術活用」(東洋経済新報社)
  • 「情報化戦略と投資評価・システム運用管理の実際」<編著>(企業研究会)
  • 「会社改革実務辞典」<共著>(産業調査会)
  • 「プロジェクトマネジャー(PM)の育成・スキルアップのためのメンタリングの進め方と実践法」 (ソフトリサーチセンター:CD-ROM版)   など

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