Skip to content

ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第30回)

by staff on 2015/9/10, 木曜日

大浦総合研究所 代表/大浦勇三

ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第30回)

遊びをせんとや生れけむ、戯れせんとや生れけん
遊ぶ子供の声きけば、我が身さえこそ動がるれ

- 梁塵秘抄 -

 北陸新幹線が開通して金沢が賑わっています。復元された東京駅には “東京ステーションギャラリー” という美術館もできました。過日、北陸新幹線開通を記念した画家 “鴨居玲(金沢出身)” の展覧会が開かれました。鴨居玲のお姉さんは下着デザイナーの鴨居羊子。また、師匠は同じ石川県出身の洋画家・宮本三郎で、世田谷に “宮本三郎記念美術館” が開設されています。私が学生時代にお世話になった代議士の勤続25年記念肖像画は宮本三郎画伯の手で描かれており不思議な縁を感じます。展覧会のサブタイトルは “踊り候(そうろう)え”。閑吟集(室町時代)の中の “思ひ覚ませば夢候よ 酔い候え 踊り候え” の一節。閑吟集といえば “一期は夢よ、ただ狂え(人生は夢、面白おかしく)” を思い出します。以前、私はこの言葉を “坂本龍馬” のものと思い込んでいました。何かの本で龍馬が “ただ狂え” と唱えながら飛び回ったと読んだ記憶があるからです。スペイン(ドン・キホーテ)を愛しつつ、最後は真っ赤な “出を待つ道化師” を描くまでの鴨居玲の一期の夢。梁塵秘抄では “近江の湖に立つ波は、花は咲けども実もならず枝ささず や 比叡のお山の西裏にこそ や 水飲ありと聞け” とあります。琵琶湖にビワの実はならないのに比叡山には水の実ありとの言葉遊び。美術館は、自分が“完璧でなく・曖昧さを抱える”人間であることを再認識させる道場といえるかも。

“遊びをせんとや生れけん” 「遊」

専門や科目には限定されない総合力・教養
ただ教養は教養として学ぶことはできない
そもそも全ての創造はマネから始まるもの
バッハもたくさん色んなマネをしたらしい

 ゼバスティアン・バッハといえば日本の音楽教育では “音楽の父”。バロック音楽の重要な作曲家の一人で、鍵盤楽器の演奏家としても有名。そんなバッハでも、色んなモノやヒトから学ぶ(マネる)ことがあったはずで、それができるのも分厚く幅広い土台があってのもの。あのピカソが “天才というのはパクるのがうまいのだ” と豪語したことと重なります。日本美術を見ても、さまざまな知と技のバトンが巧みに受け継がれて今日に至っていることがわかります。知と技の絶え間なき伝承と再創造の仕組み。人工知能とパートナーシップを組むヒントは、対極に位置する芸術の中にこそ潜んでいるのかも。人工知能は “正の創造力” 、人間は “負の創造力” に強み。歪み・傷みなどの負からも価値を生むのが人間の持ち味。人工知能は “AIボックス” から脱出、人間は “人間ボックス” から脱皮する覚悟も。 “一世紀なんてほんの短期間” とシュンペーター。

“仕事をせんとや生れけん” 「献」

技術立国日本 開発力と応用力の地力の格差
世間の風に乗れればよいというものでもない
読者の間に五十%くらい伝わったときに描く
八十%浸透あとでは古い、とサトウサンペイ

 朝日新聞には四コマ漫画の全盛時代がありました。朝刊は “サザエさん” 、夕刊は “フジ三太郎” 。読者は一面より先にまず漫画を見て、その余韻を楽しみながらやおら一面へ。その後 “サザエさん” が引退し “フジ三太郎” が朝刊へ。作者のサトウサンペイは百貨店の宣伝部出身、入社時の履歴書を漫画で描いた快男児。サトウサンペイが独立するきっかけはチャップリン映画の “ライムライト” とか。人生に必要なのは “勇気・想像力・サムマネー” のセリフに奮い立って独立を決意。不退転の覚悟が、一面記事より先に漫画を読ませる傑作を生む原動力。技術は僅差でもアプリ・コンテンツで勝負。アプリケーションコンセプトの典型例が “インスタントラーメン” 。うまくて飽きない・安価で備蓄可などの5つ。後の “宇宙食カップメン” では、長期間保存・無臭無汁などに更新。“質素からの仕事が鉄則。華美に流れると花がなくなる” と吉兆の創業者・湯木貞一。

“学びをせんとや生れけん” 「学」

ダルマに遇ったらダルマを殺す 自分のほかに権威をつくらない
後悔して引きずらないこと 同じ色を一〇〇回以上は塗り重ねる
少ない色の数を重ねて味を出す 見える化より情熱を秘めたヘタ
うまいピアニストは多い オスカー・ピーターソンは幸せにする

 臨済禅師(りんざいぜんじ)には “仏(ぶつ)に逢(お)うては仏を殺す” という有名な言葉があります。正しいものの見方を持つのなら、決して他に惑わされてはいけないという意味だとか。SNSが広く普及し “他人の反応” がすぐ得られる時代。逆に、周りの評価を気にして過敏に反応しがちな落とし穴も。農耕民族の日本人の特性は優しさと思いやり。これからはその中に技術・知恵の更なる織り込みが必要。それを自然にやってのけたのが、ジャズ・ピアニストのオスカー・ピーターソン。スイングの流れにモダンさを取り入れたスタイル。ダイナミックな演奏と華麗なアドリブ、ミスの少ない強靭なタッチと明るく “ハッピー” そのものの演奏。晩年は脳梗塞で倒れましたが、不自由なまま再びピアノに挑戦。どんな局面でも平気で生きていける勁さ。確かに、うまい人はどの世界にもいっぱいいますが、うまいだけでは人をハッピーにできませんよね。

「遊びは仕事、仕事は遊び」
「仕事は学び、学びは仕事」
「学びは遊び、遊びは学び」

 今回とりあげた「遊・献・学」それぞれの4行文は、拙書「ビジネス梁塵秘抄(一)~(十)」(全10巻)から抽出したものです。次回以降も「遊・献・学」から各々4行文を一つずつ抽出してご紹介していきたいと思います。

「ビジネス梁塵秘抄」購入ご希望の方はこちらからどうぞ!
http://www.syplus.jp/ooura/

(第30回了)

 

大浦勇三(おおうら ゆうぞう) プロフィール

大浦勇三(おおうら ゆうぞう)  

大浦総合研究所 代表 (http://www.mmjp.or.jp/ooura/

石川県七尾市出身。
早稲田大学卒業、筑波大学大学院修了。
米国経営コンサルティング会社 アーサー・D・リトル 主席コンサルタントを経て現職。
主担当領域は、経営改革/企業再生、経営戦略/情報通信技術戦略策定、業務改革/組織改革、研究開発/商品開発マネジメント、マーケティングマネジメント、ナレッジマネジメント、イノベーションマネジメント、サプライチェーンマネジメント、人材マネジメント、コーチング/メンタリング、プロジェクト/プログラムマネジメント、ベンチャービジネス支援等のコンサルティング。

筑波大学大学院講師、城西国際大学客員教授、名城大学講師、産業能率大学講師、中小企業大学校講師などを歴任。

主な著作物:

  • 「続・ビジネス梁塵秘抄(一)」<全10巻>(大浦総合研究所:PDF版)
  • 「ビジネス梁塵秘抄(一)~(十)」<全10巻>(大浦総合研究所:PDF版)
  • 「イノベーション・ノート」(PHP研究所)
  • 「ITプロジェクトマネジャーのためのコーチング入門」(ソフトリサーチセンター)
  • 「図解 日本版LLP/LLCまるわかり」(PHP研究所)
  • 「IT技術者キャリアアップのためのメンタリング技法」(ソフトリサーチセンター)
  • 「よいコンサルタントの見分け方、かかり方」(清話会)
  • 「日本のモノづくり - 52の論点」<共著>(日本メンテナンス協会)
  • 「現場主導型の組織運営とスピード戦略」(日本監督士協会)
  • 「eコミュニティがビジネスを変える」<訳>(東洋経済新報社)
  • 「ナレッジマネジメントが見る見るわかる」(サンマーク出版)
  • 「図解 ナレッジ・カンパニー」(東洋経済新報社)
  • 「ナレッジマネジメント革命」(東洋経済新報社 )
  • 「図解 グローバル・スタンダード革命」(東洋経済新報社)
  • 「業務改革成功への情報技術活用」(東洋経済新報社)
  • 「情報化戦略と投資評価・システム運用管理の実際」<編著>(企業研究会)
  • 「会社改革実務辞典」<共著>(産業調査会)
  • 「プロジェクトマネジャー(PM)の育成・スキルアップのためのメンタリングの進め方と実践法」 (ソフトリサーチセンター:CD-ROM版)   など

Comments are closed.

ヨコハマNOW 動画

新横浜公園ランニングパークの紹介動画

 

ランニングが大好きで、月に150kmほど走っているというヨコハマNOW編集長の辰巳隆昭が、お気に入りの新横浜公園のランニングコースを紹介します。
(動画をみる)

横浜中華街 市場通りの夕景

 

横浜中華街は碁盤の目のように大小の路地がある。その中でも代表的な市場通りをビデオスナップ。中華街の雰囲気を味わって下さい。
(動画をみる)

Page Top