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映画になったヨコハマ(第6回) 復興する横浜に響く天才少女歌手の歌声

by staff on 2015/9/10, 木曜日
 

悲しき口笛

製作 1949年 松竹
原作 竹田敏彦
脚本 清島長利
監督 家城巳代治
出演 美空ひばり 原保美 津島恵子 菅井一郎 大坂志郎 徳大寺伸
発売元 松竹
DVD 4104 円(税込み)

横浜出身の不世出のスターと言えば、磯子区で生まれた美空ひばり。野毛大通りに建つシルクハットに燕尾服姿の銅像は、映画初主演でスター性を見せつけた本作(1949年公開)での12歳のひばりを象ったものだ。同タイトルのレコードも発売され、当時、戦後最高となる45万枚を売り上げたという。

太平洋戦争末期、B29による爆撃で横浜の一角も焦土となり、天涯孤独となった子どもたちがいた。港湾で働く自由労働者(日雇い労働者)と共に路上をねぐらにし、物乞い、闇屋の手伝い、そして時には盗みをするなどして、生きるよりなかった。男勝りのミツコ(美空ひばり)も、出征した兄・健三(原保美)と生き別れた浮浪児だ。兄は復員後、横浜の町で必死にミツコを探し歩くが、すれ違うばかりだ。
路上生活をするミツコを哀れみ、通りすがりの京子(津島恵子)と父・修(菅井一郎)は、彼女を自宅に引き取り、3人暮らしを始める。家と言ってもバラックで、京子はビヤホールの女給、修はバイオリンの弾き語りで生計を立てている。つましい暮らしだが、家庭ができたミツコは幸せいっぱいだ。
しかし、ある日、修が安酒を飲み、おそらくはメチルアルコールの中毒によって失明したことで、生活が一転。薬代を稼がなくてはいけない京子の足下を見て、高報酬の仕事が持ち込まれる。実は、それは密輸の手伝いで、京子が密輸団により船に監禁されてしまったところを、一味を手伝っていた健三に助けられる。京子と健三の脱出劇は成功するのか、ミツコは健三に再会できるのか……後半の見所となる。
ミツコは、路上で歌を歌って家計の足しにする。音楽が流れてくると自然に体が動いて歌い出してしまうが、再会の鍵となるのは、その歌声と、音楽家を志していた健三が作詞・作曲した『悲しき口笛』だ。余りに背伸びした大人の別れの歌だが、負けじと大人びた歌いっぷりだ。歌声はもちろん、表情も演技も既に老成したひばりは、 “天才少女歌手”  だった。
焼け跡から立ち上がる桜木町界隈には活気がある。京子と健三が一時身を寄せた友人宅のそばには、やはり復興の力となるダム(1947年竣工の相模ダム?)がある。ひばりの歌声は、戦後間もない日本を大きく勇気付けた。

横浜度(横浜の露出度、横浜を味わえる度) 60%

筆者紹介

塚崎朝子(つかさき あさこ)

ジャーナリスト。世田谷生まれの世田谷育ち。読売新聞記者を経て、医学・医療、科学・技術分野の執筆が多いが、趣味の映画紹介も10年以上書き続けている。年に数時間だけ、横浜市内のキャンパスで教壇に立たせていただいている。

著書に、『新薬に挑んだ日本人科学者たち』『いつか罹る病気に備える本』(いずれも講談社)、『iPS細胞はいつ患者に届くのか』(岩波書店)など。「日経Gooday」で「その異常値、戻しましょう-STOP・メタボの12ステップ」連載中。

 

 


 

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