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映画になったヨコハマ(第8回) 夭折の若き二枚目スターが残した足跡

by staff on 2015/11/10, 火曜日
霧笛が俺を呼んでいる  

霧笛が俺を呼んでいる

製作 1960年 日活
監督 山崎徳次郎
脚本 熊井啓
出演 赤木圭一郎 芦川いづみ 葉山良二 吉永小百合
発売元 ハピネット
DVD 2448 円(税込み)

銀幕のスターは永遠である。まして、夭折した俳優となれば、決して老いることのない姿だけが記憶にとどめられる。1960年公開の本作の主演は、当時、石原裕次郎、小林旭に続く、日活の若きスターだった赤木圭一郎。正統派の二枚目俳優で、愛称はトニー。彼の代表作とされ、同タイトルの主題歌は今も歌い継がれている。

杉(赤木)は外国航路の「すずらん丸」の二等航海士。寄港先の横浜港で船の故障で出航が1週間延びたため、陸に上った。立ち寄ったバー「35ノット」で乱闘を起こし、警察へ連行。それがきっかけで、幼なじみだった浜崎(葉山良二)が麻薬の売人で、最近自殺したらしいと知らされることになる。
投宿先のバンドホテルで、浜崎の彼女だった美也子(芦川いづみ)と偶然出会い、彼の死の真相を突き止めていくという、ちょっとしたミステリー仕立て。悪の一味を相手に、お決まりのアクションシーンも見せ場たっぷりだ。特筆すべきは、浜崎の妹ゆき子役で、新人の吉永小百合が出演していること。入院中のゆき子は、「兄が自殺するはずがない」と断言する。松竹歌劇団出身の芦川に負けず劣らず、初々しい存在感を見せつける。
異国情緒あふれるバーのモデルは不明だが、バンドホテルは、今の「港の見える丘公園」のふもとに1929年に開業、99年まで営業していたクラッシクなホテルだ。そして、ゆき子の入院先は、入り口の庇が特徴的な横浜中央病院だ。突堤でのシーンもたびたび挿入される。
奥行きに欠ける展開だが、往年の日活スターを鑑賞するには、打ってつけ。現在の地に「氷川丸」が係留されるより少し前に撮影されており、氷川丸のない横浜港は珍しい。タイトルに「霧笛」とあるが、その時代の常として、誰もがやたらたばこを吸うので、全体にスモークがかかっているようだ。
1939年生まれの赤木は、本作公開の翌年、日活撮影所でゴーカートを試乗中にブレーキとアクセルを踏み間違え、21歳にして不慮の事故死を遂げる。やはり若くして亡くなったハリウッドスターにたとえ、“和製ジェームス・ディーン”と呼ばれることも。荒削りな若者が演技派に育ったかもしれない、その姿を見られずに残念だが、横浜に確かな足跡を残していった。

横浜度(横浜の露出度、横浜を味わえる度) 85%

筆者紹介

塚崎朝子(つかさき あさこ)

ジャーナリスト。世田谷生まれの世田谷育ち。読売新聞記者を経て、医学・医療、科学・技術分野の執筆が多いが、趣味の映画紹介も10年以上書き続けている。年に数時間だけ、横浜市内のキャンパスで教壇に立たせていただいている。

著書に、『新薬に挑んだ日本人科学者たち』『いつか罹る病気に備える本』(いずれも講談社)、『iPS細胞はいつ患者に届くのか』(岩波書店)など。「日経Gooday」で「その異常値、戻しましょう-STOP・メタボの12ステップ」連載中。

 

 


 

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