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ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第39回)

by staff on 2016/6/10, 金曜日

大浦総合研究所 代表/大浦勇三

ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第39回)

遊びをせんとや生れけむ、戯れせんとや生れけん
遊ぶ子供の声きけば、我が身さえこそ動がるれ

- 梁塵秘抄 -

 人工知能(AI)への強い期待と多少の不安。最近は “アルファ碁” の話題が賑やかですよね。世界最強の棋士といわれる韓国のイ・セドル九段を4勝1敗で下し予想に反する結果に。従来の囲碁の次元を軽く突破して新次元へ。 “人間の棋士とは見方、捉え方が違う。囲碁を進歩させるという意味で言えば、新たな考え方を提供してくれる” と七冠・井山裕太棋士。敵ではなく、あくまでも戦友。イノベーションでも、さまざまな関係性を吟味し、多面的な見方をすることが求められていることでは同じ。 “異なる観点を持ち込み、知のネットワークを常にとらえ直す” ことが核心だとすれば、アルファ碁から得られる教訓は宝の山。大局観の次元をもう一段あげて、環境適応を更に深化させよということでしょうか。それは盤上に限定した大局観から、人間社会丸抱えの大局観。 “自分とは異質な世界とコンタクトする価値” と “人間・思想・行動様式と正面から対峙する価値”。ただ、そのための投資は避けられず、どこまで可能性があるかを把握するための仕掛けは必須品目。梁塵秘抄では “近江の湖は海ならず、天台薬師の池ぞかし 何ぞの海、常楽我浄の風吹けば 七宝蓮華の波ぞ立つ” とあります。日本一の琵琶湖も薬師如来の浄土では小さな池。 “多額の報酬を手にすることより、いいものを創って世の中を変えるというナビゲートに反応する時代” とチームラボ代表・猪子寿之。

“遊びをせんとや生れけん” 「遊」

創造性の大切さ よく口にはするが、無意識のうちに創造性を殺すことが多い
打合せは 知的格闘技で、フルコースのディナー 情報伝達だけでは勿体ない
段取りや手続きへの拘りが強すぎる 上手くやるのでなく素晴らしくやりたい
経験そのものではなく、経験から学ぶことに価値 筋肉も、学ばないと落ちる

 創造性の大切さは繰り返し叫ばれますが、無意識のうちに創造性の芽を殺していることも結構ありそう。“段取り・手続きに拘る” “高いスキルを持つ人間に定型業務をやらせる” “外部とのコミュニケーションを避ける” “予算ばかり気にする” “個人の行動・振る舞いを監視したがる” などは今もよく見られる光景。本来、会議や打合せは “知的格闘技” でフルコースのディナー。情報伝達だけでは勿体ないし、議論しても “目的系” と “手段系” が入り乱れて前に進まないこともしばしば。シリコンバレーの小学校ではティーチングをやめてコーチングに集中するという時代。世の中には意味のない勝ちもあれば、意味のある負けもあるはず。危険だと認識しているうちは安全で、思いついたら何にでも挑戦するしかなさそう。“無礼講では専門外のことがおおっぴらにやれる。唄でも太鼓でも必死に覚える。それがかえって勉強になる” と歌舞伎役者・市川猿翁。

“仕事をせんとや生れけん” 「献」

仕事では、想定外や未知のことが次々起こる 合意形成は、簡単にはできない
社長案件の大半は賛否が五一%と四九%の間のもの 全員の納得は簡単でない
相反する意見を尊重する度量をしっかりもつ 自らが間違う可能性を自覚する
顧客は自分で出来ないことを期待する 期待にのたうちまわるのが社長の仕事

 変化が常態化して “想定外” が常時起こるフェーズへ。昭和30年代の日本映画を観ると、ある種の “ユートピア” をすでに達成した感があり不思議な気持ちになります。ただ世の中は一つのところに留まることはありません。そのための行動規範は “変えるものと変えないもの” を仕分けし続けるしかなさそうです。それでも失敗はつきもの。だけど、失敗から学ぶことができれば、失敗も次の成功への貴重な財産。 “極限では、どんな方法でもできればいい。出来なければどうしようもない、意味がない” とルバング島・小野田寛郎少尉。問題解決には “人より問題に焦点” “自分の立場より相手の利益” “アイデアの創造” “数値で評価” とハーバード流。加えて、情報が不可欠ですが、大抵のものは不完全。不完全な情報の断片から背後にある本源的価値を抉り出すのみ。創業には“マーケティング・物流・事業計画がわかる人材をパートナーに”とスティーブ・ジョブス。

“学びをせんとや生れけん” 「学」

同質メンバーで固まって 仲間内でのみ通用するコミュニケーションにはオサラバ
外部からわかりにくく、見えにくい障壁を破壊 未来の組織や個人の価値に賭ける
組織や個人との関係、誰もがわかる形に 訓練や習慣だけに頼らず、仕組みを改築
独自の指標で世界を把握 料理も経験と勘、でも科学が入ると別次元の世界に変身

 “失敗して学ぶ” ほうが、何もしないお利口さんより尊ばれる時代へ。 “人がすべて” という状況がよりはっきりし、採用はもとより人材登用の采配こそ生命線。 “目標達成に向けて仲間と協働できる” “困難な課題に対して柔軟に行動できる” “結果を出すことに重点をおいている” ことが決め手。何より、 “新たなステージで潜在的な能力を伸ばせる” こと。明確な目的意識がないと、本質でないことや小さいことが切り捨てられず、柔軟性の欠如につながる怖れも。プレッシャーは一段と大きくなり、精神的にタフであることが求められますが、心理療法の観点からは “へたに解釈しない” “言葉によって意味を固定しない” ことが大切。流通する情報量の増大は取捨選択の可能性を拡大しており、最後は高品質の情報に収斂できるはず。 “ステージ上では自分が一番上手いと思い、ステージを降りたら自分が一番下手だと思うこと” とギタリストのエリック・クラプトン。

「遊びは仕事、仕事は遊び」
「仕事は学び、学びは仕事」
「学びは遊び、遊びは学び」

 今回とりあげた「遊・献・学」それぞれの4行文は、拙書「ビジネス梁塵秘抄(一)~(十)」(全10巻)及び「続・ビジネス梁塵秘抄(一)(二)」(全10巻)から抽出したものです。次回以降も「遊・献・学」から各々4行文を一つずつ抽出してご紹介していきたいと思います。

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(第39回了)

 

大浦勇三(おおうら ゆうぞう) プロフィール

大浦勇三(おおうら ゆうぞう)  

大浦総合研究所 代表 (http://www.mmjp.or.jp/ooura/

石川県七尾市出身。
早稲田大学卒業、筑波大学大学院修了。
米国経営コンサルティング会社 アーサー・D・リトル 主席コンサルタントを経て現職。
主担当領域は、経営改革/企業再生、経営戦略/情報通信技術戦略策定、業務改革/組織改革、研究開発/商品開発マネジメント、マーケティングマネジメント、ナレッジマネジメント、イノベーションマネジメント、サプライチェーンマネジメント、人材マネジメント、コーチング/メンタリング、プロジェクト/プログラムマネジメント、ベンチャービジネス支援等のコンサルティング。

筑波大学大学院講師、城西国際大学客員教授、名城大学講師、産業能率大学講師、中小企業大学校講師などを歴任。

主な著作物:

  • 「続・ビジネス梁塵秘抄(一)(二)」<全10巻>(大浦総合研究所:PDF版)
  • 「ビジネス梁塵秘抄(一)~(十)」<全10巻>(大浦総合研究所:PDF版)
  • 「イノベーション・ノート」(PHP研究所)
  • 「ITプロジェクトマネジャーのためのコーチング入門」(ソフトリサーチセンター)
  • 「図解 日本版LLP/LLCまるわかり」(PHP研究所)
  • 「IT技術者キャリアアップのためのメンタリング技法」(ソフトリサーチセンター)
  • 「よいコンサルタントの見分け方、かかり方」(清話会)
  • 「日本のモノづくり - 52の論点」<共著>(日本メンテナンス協会)
  • 「現場主導型の組織運営とスピード戦略」(日本監督士協会)
  • 「eコミュニティがビジネスを変える」<訳>(東洋経済新報社)
  • 「ナレッジマネジメントが見る見るわかる」(サンマーク出版)
  • 「図解 ナレッジ・カンパニー」(東洋経済新報社)
  • 「ナレッジマネジメント革命」(東洋経済新報社 )
  • 「図解 グローバル・スタンダード革命」(東洋経済新報社)
  • 「業務改革成功への情報技術活用」(東洋経済新報社)
  • 「情報化戦略と投資評価・システム運用管理の実際」<編著>(企業研究会)
  • 「会社改革実務辞典」<共著>(産業調査会)
  • 「プロジェクトマネジャー(PM)の育成・スキルアップのためのメンタリングの進め方と実践法」 (ソフトリサーチセンター:CD-ROM版)   など

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