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都田舎の津久井便り 11日目 姿三四郎、死闘 『峰の薬師』

by staff on 2016/6/10, 金曜日
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姿三四郎、死闘 『峰の薬師』

皆さんは「関東ふれあいの道」(首都圏自然歩道)というハイキングコースが有ることをご存知ですか?
一都六県を巡る長距離自然歩道です。 総延長1799km 160コースありますが、神奈川県に於いては197.2km 17コースがあります。
三浦半島から湘南海岸そして大磯からほぼまっすぐに北上して津久井湖を渡り東京都の高尾山の麓へ至るコースです。
その12番・13番・14番・17番コースが津久井周辺を巡ります。

神奈川県HP 「関東ふれあいの道(首都圏自然歩道)コースマップ」
http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f160396/p393781.html

中でも14番コースにあるのが今日ご紹介する「峰の薬師」です。

世代が上の方々は映画やTVドラマでご覧になられてご存知の方が多いと思いますが、富田常雄の小説「姿三四郎」の桧垣鉄心との雪の決闘の場として描かれた寺で、武相四大薬師の一つに数えられ新井薬師(東京中野区)薬王院(高尾山)・日向薬師(伊勢原市)と霊験あらたかな薬師様です。
明応(室町時代)の頃、創建された古寺で、本尊の薬師如来像は行基の作と言い伝えられています。
津久井湖の北岸にあり、津久井城山と湖を介して向かい合っています。

(桧垣)鉄心は(姿)三四郎の両手を下げて立った姿勢に千変万化を感じて呼吸を整えた。猛進は許されぬ。
三四郎は傾斜面の、鉄心より高い処にいた。鉄心は三四郎の下に位置している。右側は赤松の幹を区切りに崖である。左へ回って地の利を得るには杉と松の間を大きく迂回しなければならぬ。そのまま鉄心は二歩先へ出た。三四郎は三歩退く。二人の足の下で雪がきしんだ音をたてた。
「おうりゃっ」
鉄心おめいて身を躍らすと、膝まで埋めた雪を煙のようにまきあげて飛蹴りの形で飛び上がった。顎を狙った両足が、三四郎の胸元をつくと見えたが、三四郎の体は横に流れて一間、大きい赤松の幹の陰に立っていた。そのまま鉄心は二段飛びの格好で三四郎より二間の高所に立った。
高低の位置が一変した。
手わざにせよ、足わざにせよ、唐手にとって絶対有利な体勢である。
鉄心は猫足の型で雪を割って進む。平安の構え---親指を曲げた四本貫き、貫き手の左手を前に、右手は掌を上左肘前に三、四寸のところで回しながら、左足を前に腰を落として肉薄した。石を砕く貫き手の一閃が、三四郎の眉間に飛ぶ間髪の間である。三四郎は声なく一間、雪を滑って退いた。突如四辺の雪が煙になったと思えた。
「えいっ」
裂帛(れっぱく)の気合と、雪煙のなかから鉄心は正に飛鳥のように両足を揃えて飛んでいた。三四郎の顎に向かって飛蹴りの強襲だった。
身を伏せた三四郎の上を風を捲いて飛び去った鉄心の後腰を、雪のなかから泳ぐように抜け出した三四郎の両手が突いた。うつ伏せに伏せて、三四郎の裸絞めを防いだ鉄心の左の猿臂(えんぴ)が肋骨に食い込むより先に、三四郎の左手がその臂(ひじ)を殺して、二つの肉塊は雪のなかを横転した。三四郎の両足は鉄心の胴をはさみ、四つの腕を互いに殺し合ってからんだまま、右へ右へと横に転がって行く。赤松の幹に三四郎の背がぶつかった。下は三丈の崖である。
押されながら、ずるずると赤松の幹に背をすって三四郎と鉄心と一緒に立った。互いの手と手は殺し合っていたが、鉄心は波返しの最後の技があった。股に蹴込むのだ。生死交差の一瞬に置かれて己の術の正道はなかった。
だが、鉄心は強かに赤松の幹を膝で蹴上げていた。三四郎が半身の力を抜き、両手を払って左に身をひねって飛んでいたのである。
追いすがった鉄心の右の貫き手が三四郎の眉間に閃(ひらめ)いた。一刹那であった。その手を右腕で受けた三四郎の指は鉄心の襟に食い込み、左手は稽古衣の腕を握って、雪を蹴って右足が閃(ひら)く。

「とうっ」始めて、三四郎の唇を鋭い気合がもれた。
鉄心は孤を描いて大きく飛んだ。山嵐だった。体を円めた鉄心の肉体は崖際の幹を震わしてぶつかると、俯(うつ)向けに雪の中に落ちた。赤松の幹にぶつかったのは、致命的な一撃であった。
「来いっ」
雪のなかの鉄心はおめいた。声に応じて三四郎は飛び込む。わずかに立った鉄心の貫き手は徒(いたず)らに空を突いて、三四郎の二度目の山嵐は、雪煙りをあげて鉄心の体を三間先の雪にめり込ませた。
「来いっ」
崖際の赤松の幹にすがって立ち上がった鉄心が、苦痛と無念に頬をひきつらせて言った。蒼ざめた額に髪がまつわり、唇から血を流した彼の形相は三四郎の見る、この世の悪鬼であった。赤松の幹にすがった鉄心の両手に力が抜け、体が前後に揺いだと思うと、そのまま足を踏みはずして彼の体は雪の谷間へ、一本の棒のように滑り落ちて行った。

出典:http://www2u.biglobe.ne.jp/~itou/deki/dekixx/acontentX90.htm

峰の薬師にはJR橋本駅北口一番バス停から神奈中バス「三ヶ木」行きに乗り25分程度の県立城山高校前で下車します。 国道413号線を渡りすぐに「神奈川県立津久井湖水の苑地」が見えてきます。 薬師までにはここのトイレしかありませんので、ご利用ください。 ここは噴水と草花が綺麗です。ダムの向かい側には「花の苑地」があります。 ここには特産品や朝取野菜を販売する観光センターがあります。
津久井湖北岸の道を進み住宅や畑を過ぎると右に薬師の看板が見えるので、そこを右折していよいよ登りになります。 さらに進むと杉林が表れ急な歩きにくい砂利道に変わり、喘ぎながら登って行くと鳥居が見えてきます。 この辺りから左側の眺望もよくなり相模平野と津久井湖、城山が見えてきます。徒歩一時間程度です。
車の場合は、急坂の路面はかなり荒れており、さらに車一台がやっとの狭い穴だらけの砂利道を登ると境内まで行くことが出来ますが、運転に不慣れな方は参道手前の参詣用駐車場に置かれて歩くことをお奨めします。

登りきり木々に囲まれた広い境内を見回すと「姿三四郎 決闘の場」と彫られた石碑が目に留まります。そして奥に大きな鐘楼が見えます。 階段脇に入金箱が置かれ、100円入れると鐘を打つことが出来ます!
その奥、眺望のよい崖に薬師堂があります。 元旦のご来光も良く仰げます。
南側の木々の間からは城山・津久井湖そして丹沢山塊や相模川・相模原市街地、横浜方面が良く見えます。
境内の西側のトイレの裏あたりから、正面やや左の関東山塊の山並みの左肩から富士山の山肌を僅かの部分ですが見る事が出来ます。 津久井から見える富士山はここ峰の薬師と丹沢に登らなくては見る事が出来ませんので貴重な場所です(笑)。
冬ですと葉が落ち、木々の眺望も良くなりますが、早春を過ぎると葉が茂り見にくくなります。 方位の関係で対岸の城山からは富士山は望めません。

この関東ふれあいの道を奥の院を越え電波塔を過ぎ、北に向かうと神奈川県と東京都の県境になっている三沢峠を経て高尾山の手前、「うかい竹亭」の脇を通り国道20号線「梅の木平バス停」に出ます。 ほぼ真下に圏央道のトンネルが続きます。 約2時間ほどの行程です。 ここからまた登りで高尾山に登頂です。

ハイキングには最適な季節です。
どうぞ健康の維持に如何ですか?

 

(クリックで拡大画像)

(文・写真:髭親爺)

筆者紹介

 

梅澤 勉
津久井の本格薪窯ピッツェリア(ピザレストラン)「童人夢農場(ドリームファーム)」オーナーシェフ
HP: http://dreamfarm-pizza.jp/
 
1949年生まれ。大学で食品工学を学ぶ。
パン会社に就職して菓子パン部門で勤務後、ピッツェリア(ピザ専門店)を始める。
イタリアのピザ職人学校 ”ApesPizzaSchool”(アペス・ピザスクール)に入学し、本場のピザ作りを習得する。現在も定期的にイタリア(ミラノ・ローマ・ベネチア・フィレンツエ など)に行きピッツァ(ピザ)の研究を続けている。

相模湖・津久井の本格薪窯ピッツェリア | ピザレストラン「童人夢農場 | ドリームファーム」オーナーオーナーシェフ 梅澤勉さんのインタビュー動画。
緑あふれる津久井の魅力、童人夢農場(ドリームファーム)のこだわり、デザートピザへの想い
についてオーナーシェフの梅澤勉さんが語ります。ご覧ください。

 

From → 津久井便り

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