横浜スケッチ(第14回) 鶴見区馬場の花木園
ペンネーム 成見 淳
花木園は横浜市鶴見区馬場にある小さな公園、というよりも近所のちょっと大きなお庭という感じである。場所は4月号で取り上げた曹洞宗建功寺から、せせらぎ緑道の支流を通って徒歩7~8分くらいの所にある。
小学生低学年の頃、養父に連れられてここに来たことがあり、「牡丹園へ行こう。」という声が耳に残っているが、当時は個人の農園で僅かの入場料を払っていたと思う。その時の記憶では、あぜみちや山道をたっぷり歩いたので子供の足ではとんでもなく遠く思ったり、途中でヤマカカシという蛇が出たりで、あまり良い印象は残っていない。それがいつの間にか閉園になり、牡丹の多くは大船のフラワーセンターに寄贈され、ここも横浜市に寄贈され、綺麗に整備されこうして市民の憩いの場になっている。ありがたいことである。
ここで描いていると色々な方が話しかけて来る。自宅から徒歩25分ほどの手頃な散歩コースという距離なのに、なぜかご近所感がするのは園内が小さいだけでなくそんな理由にあるのかもしれない。
一枚目を描きに行った時、そばで遊んでいた小学校3年生くらいの女の子から「なにしているの?」と聞かれたり、「上手に描けてるね。」「そのおうち〈あずまや〉の屋根の感じがいいわ。」「あら!もっと良くなってる。」とか時々見にきてその都度褒められたりした。
その子は遊び仲間に「○○ちゃん。それじゃあ駄目でしょ。もっと良く考えてからやらないと。」言っていたが、『多分いつも親にそう言われているのだろうなあ。』と心の中でクスクスと笑いながらペンを進めた。
別の、もう少し小さい女の子が来て、その子は先ほどのおしゃまな子と違ってはにかみ屋さんらしく、何も言わずにしゃがんでじっと見ているだけ。こちらも何と声を掛けて良いか分からずにその子の顔を見ていたら、しばらくたってから、何も言わずに顔中でニコ~ッと笑ったのでつられてこちらもニコ~ッと笑ってしまい、そして二人で今度は声を出して笑った。はにかみ屋さんの子もこんな素敵なコミュニケーションツールを持っているのだと感心させられた。この場面で手品でも出来たらこの子はもっと心を開くだろうなあ、などと思いながら。
1枚目。小学生の女の子に褒められた絵。確かに花がない。
一枚目を描いて家に帰って家内に見せたら「花木園なのに、木ばかりあるけど花が何もないわねえ。」と、言われて初めて気が付いた。描いている時は夢中で全然気づかなかった。
この「描いている時の夢中、集中」は時として思わぬ事を引き起こす。デッサンの狂いに気が付かず、描き上って見たら建物が少し傾いていたり、今日は暑いだろうからと七分袖のシャツを着て行ったら、腕が写真のようにポッキー状態になったり。
ポッキー状態の腕。
「だって桜は終わったし、ツツジも終わって、サツキはまだだし。牡丹はあったけど描いたところからは見えないし・・・。」と言ったものの、やっぱり花が無いと寂しいし、そう言われると悔しいから日をおいてまた描きに行った。
今度は東屋の反対側から。
今度は前回と反対側の、池を渡る八ツ橋の上で描いていると近所の老人施設の若いヘルパーさんとおぼしき女性が車椅子を押しながら「あら! ほら、お兄さんが絵を描いているわよ。」とご老人に声をかけた。お兄さんと言われたので思わず「あのう。来年70なんですけど。」とつい正直に言ってしまった。「あら。お若く見えますねえ。」だって。
『そりゃあ日常接している人と比較すれば確かに若いけど、お兄さんは言い過ぎだろう。』と思って家に帰ると、「そういう施設では皆~んな、兄さんお姉さんと言うことになっているの。」と教えられた。
『・・・ということは、さては俺のことも・・・。』
<参考資料>
- 馬場花木園公式サイト:http://www2.baba-kabokuen.org/
- 個人の方のブログ(写真が豊富):http://4travel.jp/travelogue/10979579
筆者紹介
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ランニングが大好きで、月に150kmほど走っているというヨコハマNOW編集長の辰巳隆昭が、お気に入りの新横浜公園のランニングコースを紹介します。 |
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