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ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第41回)

by staff on 2016/8/10, 水曜日

大浦総合研究所 代表/大浦勇三

ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第41回)

遊びをせんとや生れけむ、戯れせんとや生れけん
遊ぶ子供の声きけば、我が身さえこそ動がるれ

- 梁塵秘抄 -

 世界の様相が大きく変わり、異常に不確実な世界になってきました。リスクが今まで以上に噴出してきただけでなく、リスクそのものの捉え方を変える必要に迫られています。従来リスクとしてみていなかったものをリスクとして認識する必要性の増大。冷戦時代、米国は “ネットアセスメント(総合戦略評価)” という手法を確立し分析力を強化。その結果、米国はソ連の国力を過大評価していると結論。ネットアセスメントから、ソ連が過剰な軍事費のために財政破綻しつつあると判断。また、ICT(情報通信技術)の進展が戦争の在り方を一変させる可能性も示唆。ここから得られる教訓は、リスクに対して、包括的かつ非直線的な視点で常に感覚を研ぎ澄ます必要があるということでしょうか。ビジネス世界では、頻繁な市場変動と想定外への対応に、包括的かつ非直線的な戦略性に加えて、戦術的要素のもつ意味が一段と大きくなっています。勝負どころのイノベーションでは、 “会社” が必要とする時でなく “市場” が強く求める絶妙のタイミングこそが生命線。梁塵秘抄では “何れか清水へ参る道、京極くだりに五条まで 石橋よ、東の橋詰四つ棟六波羅堂 愛宕寺大仏深井とか、それを打過ぎて八坂寺” とあります。清水寺を建てたのは、最初の征夷大将軍・坂上田村麻呂による東北征伐への鎮魂。 “ボラタイル(変動が大きい)な環境が経営の前提条件” とGEのCEO・イメルト。

“遊びをせんとや生れけん” 「遊」

生きてきた中味は、己の豊かさの重量 夜の闇は人を謙虚にするもの
やってみたい、挑戦したいという風土 どのようにしてつくり出すか
社会は簡単に変わらない 飛ばない鳥は、飛ぶ必要がなかったからだ
雑音あっての共同体 貧者が想像する富であるならば、とエマーソン

 エマーソンは19世紀を代表するアメリカの思想家。私は学生時代、イギリスの思想家カーライルを知り、そこから盟友エマーソンを読むチャンスに巡り会いました。エマーソンの代表作の一つである “偉人論” では、ナポレオンの章が今も強く印象に残っています。幽閉されたセントヘレナ島で “英雄とは、人間とは何か?” と問われて “好奇心がすべてだ” と喝破したとの一節。エマーソンの中心教義は “個人の無限性” 。生きてきた中味が己の豊かさの重量ということでしょうか。日本では宮沢賢治や福沢諭吉など、多くの思想家・文学者に影響を与えたといいます。示唆するところは “新しい知恵が浮かばなかったら古い知恵を上手に使う手立てを見つけろ” 。飛ばない鳥は飛ぶ必要がなかったから。飛びたい・やりたいという風土をどう創り出すか。 “技術に裏付けられた演技を技術と見せない。これはものすごい稽古なしにはあり得ない” と女優・黒柳徹子。

“仕事をせんとや生れけん” 「献」

戦中 谷崎潤一郎と永井荷風は、発表の当てのない原稿を書き続けた
オフィス生産性の低さ 覚悟もなく成果が見えない中での仕事がアダ
理念を尺度に固定費を透明化する でないとコスト削減は現場に集中
マルクス 読まぬとわからぬがマルクスだけ読んでも、とは長洲一二

 太平洋戦争中、谷崎潤一郎は四姉妹の生活を題材にした “細雪” に取り組み、軍部による発行差し止めに遭いつつも執筆を続け、戦後その全編を発表しました。出版のめどが全く立たない中での執念。終戦直前、谷崎は貴重な肉を手に入れ、永井荷風と死を覚悟したすき焼きによる最後の晩餐を開宴。ビジネス生産性では、向上しない理由は山ほどありますが、覚悟・執念もなく、明確な成果イメージもないやらされ仕事が最大要因。マルクスは読まないとわからないが、マルクスだけ読んでもマルクス経済学がわかるわけではないと、神奈川県知事も務めた長洲一二・元横浜国立大学教授。大事なことは、経済活動を促進するための資金の確保と適切な配分。バブルが起きたのは高度成長期ではなく、その後の1980年代後半の住宅・株式など特定資産への過度な資金集中。 “ダントツがあれば、すべてのお客様のニーズに応えなくていい” と元コマツ社長・板根正弘。

“学びをせんとや生れけん” 「学」

理科系離れが言われる 好き嫌い以上に影響が大きいのは、時代を読む学生の思い
理科系も文科系もない こんなことを言うのは日本だけ 幸運を信じて一心に努力
クリエイティブであることを貫く 目の前の収益重視の力への唯一で強力な対抗策
自分のブランドをつくる どんな樹木でも、種子の中にある力を超えることはない

 人工知能(AI)のパワーが注目される時代になり、もはや理系か文系かの議論は一段低い次元のものになりました。学問でも遊びでも、中味の豊かさ・レベルの高さだけが問われる時代になったということでしょうか。 “クリエイティブ” とは、理系であれ文系であれ、自動車でもゲームでも、素晴らしくなければ評価されることは絶対ありえないということ。従って、何が何でもクリエイティブであることを貫き通すしかなさそう。それには、 “目的を創り出す力量” “対象を概念化・デザイン化する力量” “これらをプロセス化・習慣化する力量” が求められます。学び続けないと生き残れない時代。役者の世界も、演技が変わらなければ成長が止まっているとみなされるもの。科学の知識体系の完成は永遠になく、自然は無限でナゾは尽きないといわれます。どんな世界であれ、自己ブランドを創るしかなさそう。 “プロの仕事は命がけの道楽” と作家・曽野綾子。

「遊びは仕事、仕事は遊び」
「仕事は学び、学びは仕事」
「学びは遊び、遊びは学び」

 今回とりあげた「遊・献・学」それぞれの4行文は、拙書「ビジネス梁塵秘抄(一)~(十)」(全10巻)及び「続・ビジネス梁塵秘抄(一)~(三)」(全10巻)から抽出したものです。次回以降も「遊・献・学」から各々4行文を一つずつ抽出してご紹介していきたいと思います。

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(第41回了)

 

大浦勇三(おおうら ゆうぞう) プロフィール

大浦勇三(おおうら ゆうぞう)  

大浦総合研究所 代表 (http://www.mmjp.or.jp/ooura/

石川県七尾市出身。
早稲田大学卒業、筑波大学大学院修了。
米国経営コンサルティング会社 アーサー・D・リトル 主席コンサルタントを経て現職。
主担当領域は、経営改革/企業再生、経営戦略/情報通信技術戦略策定、業務改革/組織改革、研究開発/商品開発マネジメント、マーケティングマネジメント、ナレッジマネジメント、イノベーションマネジメント、サプライチェーンマネジメント、人材マネジメント、コーチング/メンタリング、プロジェクト/プログラムマネジメント、ベンチャービジネス支援等のコンサルティング。

筑波大学大学院講師、城西国際大学客員教授、名城大学講師、産業能率大学講師、中小企業大学校講師などを歴任。

主な著作物:

  • 「続・ビジネス梁塵秘抄(一)~(三)」<全10巻>(大浦総合研究所:PDF版)
  • 「ビジネス梁塵秘抄(一)~(十)」<全10巻>(大浦総合研究所:PDF版)
  • 「イノベーション・ノート」(PHP研究所)
  • 「ITプロジェクトマネジャーのためのコーチング入門」(ソフトリサーチセンター)
  • 「図解 日本版LLP/LLCまるわかり」(PHP研究所)
  • 「IT技術者キャリアアップのためのメンタリング技法」(ソフトリサーチセンター)
  • 「よいコンサルタントの見分け方、かかり方」(清話会)
  • 「日本のモノづくり - 52の論点」<共著>(日本メンテナンス協会)
  • 「現場主導型の組織運営とスピード戦略」(日本監督士協会)
  • 「eコミュニティがビジネスを変える」<訳>(東洋経済新報社)
  • 「ナレッジマネジメントが見る見るわかる」(サンマーク出版)
  • 「図解 ナレッジ・カンパニー」(東洋経済新報社)
  • 「ナレッジマネジメント革命」(東洋経済新報社 )
  • 「図解 グローバル・スタンダード革命」(東洋経済新報社)
  • 「業務改革成功への情報技術活用」(東洋経済新報社)
  • 「情報化戦略と投資評価・システム運用管理の実際」<編著>(企業研究会)
  • 「会社改革実務辞典」<共著>(産業調査会)
  • 「プロジェクトマネジャー(PM)の育成・スキルアップのためのメンタリングの進め方と実践法」 (ソフトリサーチセンター:CD-ROM版)   など

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