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ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第44回)

by staff on 2016/11/10, 木曜日

大浦総合研究所 代表/大浦勇三

ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第44回)

遊びをせんとや生れけむ、戯れせんとや生れけん
遊ぶ子供の声きけば、我が身さえこそ動がるれ

- 梁塵秘抄 -

 昨年のラグビーW杯初戦では南アフリカと対戦、終了間際に逆転トライを挙げ、日本中が興奮の坩堝に。この試合は、英国ブックメーカーにおける事前倍率が1倍で南アの勝利は確定的。日本チームを率いたヘッドコーチ(HC)がエディ・ジョーンズ。エディが掲げた “ジャパン・ウェイ” は社会現象になり、様々な分野の革新・改革に用いられました。戦略・戦術の素晴らしさもさることながら、日本や日本人の文化風土・特性・強み・弱みなどをしっかり押さえたところに何よりの勝因があるといわれました。 “何を変えるのは無理なのか” “何は変えられるのか” の分析・手立てに注力。日本人にはチームの一員でありたいという強い思いと、どう自らを高めればチームに貢献できるかを自然に考えるDNAがあること。これらは簡単には変えられない特性。けれど、理由をきちんと説明しメリットを示せば、劇的な変化であろうとも、受け入れる柔軟さも持っていること。一方、従順で真面目、チームの一員というだけで満足という思いに陥り易い弱みをもつこと。梁塵秘抄では “舞え舞え蝸牛 舞わぬものならば 馬の子や牛の子に蹴えさせてん踏み破らせてん 真に美しく舞うたらば 華の園まで遊ばせん” とあります。舞わない・踊らないなら馬牛で踏み潰す、うまく舞ったら華の園で遊べというムチとアメ。 “やりたいこと・やれること・やるべきこと” とラガーマン・平尾誠二。

“遊びをせんとや生れけん” 「遊」

効率化 コスト削減だけでなく安定した品質確保にも不可欠
高く明確な目標を持ち続ければ 最終的には成功が手に届く
エネルギーの放出をオブラートで包む サザエさんを二五年
スランプ峠・マンネリ坂・いきぎれ岬、と漫画家長谷川町子

 長谷川町子美術館は、桜新町駅からサザエさん一家の銅像が立ち並ぶ “サザエさん通り” を抜けた先。 “漫画・サザエさん” を中心とする長谷川町子作品の他に、趣味で蒐集した約800点の美術工芸品を収蔵・展示しています。東山魁夷・加山又造などの絵画をはじめ、私が大好きな速水御舟の “山桜” も。画壇のイノベーター・速水御舟は “真の伝統は形にはなく精神のうちにある” と創造と破壊を繰り返しました。 “スランプ峠・マンネリ坂・いきぎれ岬” の難所を何度もくぐり抜けてきた長谷川町子には御舟に自らを重ねるところがあったのかもしれません。 “サザエさん” の新聞連載は深い人間洞察が持ち味で、多くの日本人が毎朝生きる元気を貰いました。四コマ漫画の起爆力。ビッグが主流の世界で “スモールインテリジェンス” が生む凄み。 “世界にはモノが存在するのでなく、様々な関係から起きる出来事だけが存在する” と科学者・ハイゼンベルグ。

“仕事をせんとや生れけん” 「献」

言論の自由はあるが どこまで幸福が実現できているか
改革者は悲惨 触り・視て・聴いて最後にまとめていく
グローバル経済は 資本をもつ人と能力の高い人に有利
武蔵の野辺に朽ちても留め置く大和魂、吉田松陰の覚悟

 “私心さえ除き去るなら、進むもよし・退くもよし、出るもよし・出ざるもよし” との意志を貫いたのは吉田松陰。画家・前田青邨が描く一人の青年。若き武士が机に両腕を組み、本を読む目を上げ、強い意志の大きな目で行燈の光を見つめています。ペリー再航の際、密航を企てる前夜の吉田松陰(25歳)の姿。西洋の先進文明に心を打たれて外国留学を決意した時のもの。後に萩で松下村塾を開き、高杉晋作・伊藤博文・山縣有朋などの英才を教育しました。幕府の日米修好通商条約締結に激怒、討幕を表明して老中の暗殺を計画。結果として松陰は捕らえられ幽囚。井伊直弼による安政の大獄が始まると、江戸の伝馬町牢屋敷に送られ、斬刑に処されました。享年29歳。松陰は子ども時代、父や兄と共に畑仕事に出かけ、草取りや耕作をしながら四書五経の素読に没頭した努力の天才。 “イノベーターは使命感に支えられた偏執狂” とピーター・ドラッカー。

“学びをせんとや生れけん” 「学」

サーカスの象 幼い時期から鎖、大きくなっても鎖は外せないと思い込む
情報にならないものを情報化 事実の選択を集大成して多面的なデザイン
簡単なことを一生懸命続けていくことは想像以上に大変だから価値がある
一丈の堀を越えんと思わん人は一丈五尺を超えんと励むべし、と法然上人

 東京国立博物館で展示される法然像は、恰幅がよく懐が深いイメージ。親鸞像は逆に、師・法然に比べて鋭くスキがない印象。 “南無阿弥陀仏” と念仏を唱えて極楽浄土への往生を祈るのが浄土宗で “他力本願” 。法然の死後、浄土宗から生まれたのが親鸞による浄土真宗で、阿弥陀如来を信じる “絶対他力” 。拙書ではバチ当たりを承知で “法然は研究開発・親鸞はモノづくり・蓮如はマーケティング” と書きました。根本思想は “小事(雑事)をして念仏するのでなく、小事そのものが念仏” 。金沢の私の実家の墓石そばには “蓮如上人像” があり、金沢では “蓮如さん” と今でも親しみを込めて呼ばれる存在。当時大半の農民は、朝早くから夜遅くまで働き詰め。仏壇に手を合わせ念仏する体力も気力もなし。蓮如は働くことこそが念仏と説き、北陸では浄土真宗が広がりました。 “閉塞を嘆いて成長を夢見るより、限界を見通して社会を変質させるべきだ” と作家・古井由吉。

「遊びは仕事、仕事は遊び」
「仕事は学び、学びは仕事」
「学びは遊び、遊びは学び」

 今回とりあげた「遊・献・学」それぞれの4行文は、拙書「ビジネス梁塵秘抄(一)~(十)」(全10巻)及び「続・ビジネス梁塵秘抄(一)~(三)」(全10巻)から抽出したものです。次回以降も「遊・献・学」から各々4行文を一つずつ抽出してご紹介していきたいと思います。

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(第44回了)

 

大浦勇三(おおうら ゆうぞう) プロフィール

大浦勇三(おおうら ゆうぞう)  

大浦総合研究所 代表 (http://www.mmjp.or.jp/ooura/

石川県七尾市出身。
早稲田大学卒業、筑波大学大学院修了。
米国経営コンサルティング会社 アーサー・D・リトル 主席コンサルタントを経て現職。
主担当領域は、経営改革/企業再生、経営戦略/情報通信技術戦略策定、業務改革/組織改革、研究開発/商品開発マネジメント、マーケティングマネジメント、ナレッジマネジメント、イノベーションマネジメント、サプライチェーンマネジメント、人材マネジメント、コーチング/メンタリング、プロジェクト/プログラムマネジメント、ベンチャービジネス支援等のコンサルティング。

筑波大学大学院講師、城西国際大学客員教授、名城大学講師、産業能率大学講師、中小企業大学校講師などを歴任。

主な著作物:

  • 「続・ビジネス梁塵秘抄(一)~(三)」<全10巻>(大浦総合研究所:PDF版)
  • 「ビジネス梁塵秘抄(一)~(十)」<全10巻>(大浦総合研究所:PDF版)
  • 「イノベーション・ノート」(PHP研究所)
  • 「ITプロジェクトマネジャーのためのコーチング入門」(ソフトリサーチセンター)
  • 「図解 日本版LLP/LLCまるわかり」(PHP研究所)
  • 「IT技術者キャリアアップのためのメンタリング技法」(ソフトリサーチセンター)
  • 「よいコンサルタントの見分け方、かかり方」(清話会)
  • 「日本のモノづくり - 52の論点」<共著>(日本メンテナンス協会)
  • 「現場主導型の組織運営とスピード戦略」(日本監督士協会)
  • 「eコミュニティがビジネスを変える」<訳>(東洋経済新報社)
  • 「ナレッジマネジメントが見る見るわかる」(サンマーク出版)
  • 「図解 ナレッジ・カンパニー」(東洋経済新報社)
  • 「ナレッジマネジメント革命」(東洋経済新報社 )
  • 「図解 グローバル・スタンダード革命」(東洋経済新報社)
  • 「業務改革成功への情報技術活用」(東洋経済新報社)
  • 「情報化戦略と投資評価・システム運用管理の実際」<編著>(企業研究会)
  • 「会社改革実務辞典」<共著>(産業調査会)
  • 「プロジェクトマネジャー(PM)の育成・スキルアップのためのメンタリングの進め方と実践法」 (ソフトリサーチセンター:CD-ROM版)   など

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