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ヨコハマ・ディスコグラフィティー 第54回 第7章 独立編 7

by staff on 2016/12/10, 土曜日


 
 

 

HEART&SOUL代表 原 正行

1958(昭和33)年9月7日横浜生まれ、12歳よりギターをはじめ17歳からミュージシャンとして活動。39歳の時に念願だったライブハウスを開業、現在は関内駅北口駅前に60年代から80年代の洋楽ヒット曲を演奏するライブハウス、ハート&ソウルの経営者。他にもミュージシャンとして演奏活動、作曲、プロデュース等、幅広く活動している。

 

 

横浜、街と風(独立編) 7

スタッフ・デー

アダム3年目の頃、スタッフ達にも歌をやりたい娘が現れたりして、お客様からリクエストがあるとステージで歌わせたりしていました。そのうちクリスマスに何かやろうという事で、それならスタッフも増えてきたのでスタッフ達だけでパフォーマンスをやる日を作ろうという事になり、クリスマスイベントとして企画しました。しかしほとんどが歌も踊りも素人、営業が終わってから練習が始まりましたが、ついには休みや日曜日までつきっきりで練習に付き合う羽目に。こんなもんじゃダメだと、叱ったりなだめたり、時には泣き出す子もいました。こんなレベルで大丈夫か? と不安になりましたが、面白いもので、歌もダンスもコーラスも本番が近づくにつれ何とか格好になっていきます。そして面白かったのは、常連のお客さん達がそれぞれのひいきを応援してくれるようになり、スタッフ同士やお客様との連帯感が生まれた事でした。

本番当日、入りきれないほどのお客さんを前にドキドキのスタッフ達。たどたどしいパフォーマンスを心配そうに見守るお客さん達。1曲終るたびに物凄い声援で盛り上がっていきスタッフデーは大成功に終わりました。感激して泣いているスタッフもいました。

これ以降スタッフデーは当店の恒例行事になり、毎年12月23日の祭日に開催。今年(2016年)で17回目になります。毎年11月から企画し、12月になるとお店は毎日忙しくなってきてヘトヘトなのに営業が終わってから何時間も練習します。お日様はカンカン照り、ひどいときは昼近くまで練習に付き合って泥のように眠りました。でもいつもそれを越える感動があるのです。歌、コーラス、ダンス、を基本にブルースブラザーズや天使にラブソング、マイケルのパロディーと、ありとあらゆる事をやり、数々の伝説を残してきたスタッフデー、ぜひ一度ご覧になってください!!!

ハート&ソウル INFORMATION



12/23 スタッフDay
 

12/24・25 X’mas Night!
 

12/31 カウントダウン

ゲストボーカル

4年目になるとゲストも充実して、ベースと私にピアノが入ったりハーモニカが入ったり、時には昔のビートルーズのメンバーを呼んでビートルズナイトをやったり。日本ソウル界の重鎮 南条倖司さんがソロで入ってくれた時はソウルナイト。ゲストボーカルも増えていき今のスタイルにつながっていきます。他にも東京で活躍している太田シノブさん、女子ボーカルでは山内洋子さん、清水まりさんなど実力派シンガーが出演してくれていました。

この頃ベースのR君がいきなり辞めたいと言ってきました。理由は忘れましたが確か引き抜きだったと思います。ショックでした。やっと使い物になってきたのに、また女性ファンに人気だったし、髪を振り乱しチョッパーベースのソロをやるのは男性ファンにも受けて居ましたからお店にとっては大きな痛手です。説得を試みましたが決意は固いようなので、その後は違うベーシストを探そうと気持ちを切り替え、知り合いのベーシストや紹介していただいた方々にお願いすることにしました。

ベーシスト7人衆(その1)

まずはとあるパーティに出演した時、フレットレスの6弦ベースを使いバリバリ物凄いアドリブをひいていた “谷やん” 。放っておいたらいつまででもアドリブを弾き続けていられる。アダム時代はベースとデュオなのでアドリブはかなり谷やんに弾いてもらっていました。性格は飲んべぇで気さくなので 「よーし、今日はホテルカリフォルニアのフラメンコバージョンだ」 なんてその場の思い付きでしょっちゅう遊んでいましたっけ。

辞めるというのでR君が紹介してくれた “楠本雅祥” さん。楠本さんはボストンのバークレー音楽院在籍中にR君と知り合い仲良くなったそうで、その前はエレキバンドの最高峰 “寺内タケシとブルージーン” のレギュラーベーシストとして15年勤め上げた強者でした。バークレー音楽院に勉強に行きたいからとブルージーンズを辞めたそうです。バークレー卒ですから音楽理論は完璧。ベースの腕はもちろん本物で、チョッパーに至っては名人の域です。更に優しくて思いやりがあって常に相手を立てる。人間的に尊敬している素晴らしい人です。

その次に声を掛けたのは “小川ヒロさん” 。あの70年代日本のブルースをけん引した “クリエーション” の元メンバーです。そのグルーブ、フレーズの素晴らしさには思わず引き込まれてしまいそうでした。性格も控えめで超優しい方でした。

4人目はクリスタルキングや串田アキラさんのバンドでも活躍している “郡司康夫さん” で、ブルースやソウルを弾かせるとそのグルーブは黒人そのもの! 年齢は私と一緒で、ソウルはなんでも詳しくて、よく一緒に飲んでソウルの話で盛り上がります。その渋い雰囲気と音楽性に歴代のアルバイトの女の子に隠れ郡司ファンが多かったことを私は知っています。

ベーシスト7人衆(その2)

そして “大西真さん” 。野太いプレジションベースの音が独特で、まずどんな曲でもオリジナル通りには弾きません。例えば、ホテルカリフォルニアはあの印象的なフレーズでないとあの曲になりません。しかし大西さんは自分なりのフレーズで全く違和感を感じさせないとんでもない人です。元 “四人囃子” の森園さんや下北沢のジャニス金子まりさんらと演奏されている方でした。

ニックニューサや村下孝蔵のバックを務めていたのが “中川三男さん” 。そのプレイの安定感は抜群、優しい性格でそれが音に出ている感じがしました。

脇元義行さんはサーファーでイケメン、もちろんプレイも素晴らしく、かっこいいベーシストでした。

結局この7人のベーシストがレギュラーでやってくれることになりました。当時まだ店もせまくドラムもおけなかったので、もっぱら私が手作りで打ち込んだシーケンサーの打ち込みドラムと、オケがない曲はリズムマシーンで演奏していました。機械がやるのでドラムはいつも同じです。合間に入るオカズも毎回一緒です。しかしこれだけの腕を持った人たちがやるとリズムのノリが変わるのです。しかも7人全てが同じオケを使っているのに全く個性の違うグルーブ(ノリ)にしてくれます。こんなに違うのかと思うほど違います。その違いを毎回楽しめたから同じオケでも飽きずに歌うことが出来ました。とても楽しかった思い出です。

You

この頃、新しいアルバイトがホールスタッフとして入って来ました。イケメンだけどどこか暗いなというのが最初の印象で、下の名前が私と同じなので紛らわしいので「You」と命名し、店ではこれで呼ぶことにしました。俳優の仕事もやっているという事で、慣れてきて見れば見るほど見事なイケメンぶりです。ちょっと古いですが、グループサウンズのゴールデンカップスのマモルマヌーとジャガーズの岡本信を足して2で割ったと言いますか、堀の深い顔立ちのはっきりしたイケメンでした。

入って何日もしないのにすぐ仕事ができるようになり、なんて感のいい奴なんだと感心していました。ある時カウンターに入っているバーテンが、このカクテルは作ったことないなとレシピを見ながら悪戦苦闘しています。ホールからそれを見ていたYouが 「そのカクテルなら僕作れますよ」 と言い出しました。「じゃ、お前作ってみな」とバーテンが言うと、Youはカウンターの中へ入っていくなり堂にいったシェーカーの振りっぷり。お前やってたの? と聞くと西口 (注:横浜駅西口界隈のことです) でバーテンダーをしばらくやっていて、ほとんどのカクテルは作れるとの事。なんて奴だとビックリしました。

ある日の営業後の朝方、くつろいでいるとYouが「ギターさわってもいいですか?」 と聞くので 「いいけど弾けるの?」 「少し」 おもむろにオベーションのギターを引き出すとクラシックらしき曲を弾いています。 「お、お前上手いじゃん! クラシックやってたの?」 「子供の頃ずっとやってました」 とさりげなく言います。「じゃ、アンハンブラ弾ける?」 と聞くと、あの難しい曲をさらっと弾きだしました。「禁じられた遊び」はロックやフォークでギター始めた人でも割と弾ける人はいますが、「アルハンブラ」はかなりの高等テクニックを要するので、しっかりクラシックを習った人でないと弾くのは困難でしょう。 「すごいじゃん、もしかしてエレキ弾いたりもするの?」 「大学時代ずっとメタルのバンドやっていてジューダスプリーストをコピーしてました。」。空いた口がふさがりません。「じゃ、ハイウェースターは弾けるかい?」 と聞くと 「やったことないけど1週間くれればやってきます」 「OK、もしできたらステージで一緒に演奏させてやるからな」。 「もしかしたら歌うたったりもする?」 「歌は得意です!」 「えー、ホントかよ?!」。 歌わせてみると中々太い声で音程もいい、プロのレベルではまだまだだけど良い声でした。

それから1週間後、見事にYouはハイウェースターのギターを完全コピー! 打ち込みのドラムとキーボードを相手にツインリードギターをやりました。最初のキーボードの早弾きソロはコンピューターの打ち込みでしたが、なんとYouはこれすらもライトハンド奏法で再現しました。

これ以降Youは少しずつステージに乗ることになります。まだまだアマチュア上がりなので指は動くけど音が前に出ません。それに細かい事を言えばまだまだ金を取るには時間がかかりそうでしたが、ここにイケメンギタリストYouが誕生したのでした。

 

ここからは原の音楽夜話 - 原の勝手な視点で様々な音楽を語ります。
ソロボーカル(ブラック女性編1)

そろそろ女性ボーカルの話に移りたいと思います。ブラック1の回(ヨコハマ・ディスコグラフィティー 第40回)で語った、50年代までのジャズボーカルの下地があって黒人女性ボーカルも60年代ポップスの時代、70年代ソウルの時代と、新たなレジェンドが生まれていきます。やはり黒人ですから教会音楽がベースにあり、そこから育った地域であるとか周りの音楽的状況から歴史的シンガーが生まれました。

まずゴスペル畑からといえばアレサ・フランクリンが押しも押されもせぬNo.1シンガーと言えるでしょう。ブルースからはエタ・ジェームス。ポップな世界を切り開いたモータウンからはダイアナ・ロス。ジャズ畑からナタリー・コール。それ以外にもR&Bを地で行くグラディス・ナイト、パティ・ラベル。ロックテイストも感じさせるティナ・ターナー。彼女らのほとんどは60年代に独自の世界を展開し、70年代のディスコ全盛時代をも生きぬき独自の花を開かせ、その後もその伝説の中に現役として輝き続けています。

アレサ・フランクリン

ソウルミュージックの女王! 2009年のローリングストーン誌の歴史上もっとも偉大なシンガー100の第一位に選ばれています。

1942年テネシー州メンフィス生まれ。高名な牧師でありゴスペルレコーディングアーティストでもあったC.L.フランクリン師を父に持ち、母も才能あるゴスペルシンガーでした。父の教会では有名なゴスペルシンガー マヘリア・ジャクソンやクララ・ワードなどが歌っていたそうで、そんな環境で育ったアリサは、8歳で教会のソロを取り、14歳で最初のレコーディングをしています。

18歳でコロンビアレコードからデビュー。コロンビアは彼女の才能を高く評価しながらも、それをどう生かしてよいのか分からず、ブロードウェイミュージカルの曲やセンチメンタルなポップス、ジャズなどばかりを歌わせて、彼女の伸びやかな声を無駄にしただけでした。レコードは売れず失望と失敗の連続を繰り返し、6年後コロンビアは契約を解除しました。

その後アレサは、アトランティックレコードと契約。そこでジェリー・ウエクスラーと運命の出会いをします。ジェリー・ウエクスラーは 「アレサの今までのレコードはゴスペルを歌っている時の生き生きとした感じが全くない。彼女の魅力を最大限に引き出すためにはリズムの本場、南部のミュージシャンをバックに使うことが重要だ」 と考えました。そして強力なミュージシャンをバックにしたアレサは、水を得た魚のように自由にソウルを歌い、この時の録音(『貴方だけを愛して』-原題:I Never Loved a Man the Way I Love You-)は全米9位にランクイン。続くリスペクトが全米No.11を記録しました。(注:この曲はオーティスの曲ですがオリジナルを凌ぐと感じさせる出来でこの頃急速に盛り上がりを見せていた黒人公民権運動のテーマ曲のような存在になり、 “リスペクト(尊敬して)” を旗頭に各地の黒人たちに支持されたのでした)

その後も6枚のシングルが立て続けにトップ10に入り、合計10枚を超えるミリオンセラーを記録。これは当時のソロの黒人女性シンガーとしては最高の数です。

『貴方だけを愛して』-原題:I Never Loved a Man the Way I Love You-

小さな願い

アレサの歌はゴスペルで鍛えられた力強く伸びやかな声。特にハリのある高音は限りないほどの声域で、しかも裏声でなく地声で出せます。決して耳の痛くなるような硬い音ではありません。思い切り張った後にふっと緩めるところが魅力ですね。そして豊かな声量。教会でソロを取ると言うのは、バックの楽器や何十人もいるコーラスに負けない声量を求められる訳ですから、半端な声量や声質では務まりません。それを8歳でやっているというのですから恐れ入ります。そして正式デビューの前には正統なボイストレーニングも受けていました。またアレサはピアノの名手でもあります。 “明日に架ける橋” の長いイントロではゴスペルタッチの見事なピアノを聞かせています。更にデビュー当時、ジャズもやっていたからでしょうか、かなりメロディをくずしアドリブでアレサ節に変えてしまうので、何を歌ってもアレサのオリジナルのようになってしまいますし、しかもかなり難しい音階もアドリブで軽くこなしてしまいます。

アレサの声には女性の毅然とした強さを感じます。それがキャロルキング作曲の 「ナチュラルウーマン」 などに合うのでしょう。アレサのこの曲の名唱で全米の女性が勇気付けられたと、何かで読んだことがあります。ライブでの 「アメージング・グレース」 を聞くと、その歌の上手さ、表現力に圧倒されます。もう歌が上手いとかの次元をはるかに超えています。

しかし本国に比べ日本では一般的に今一歩受けていない気がします。かく言う私も実をいうと進んでアレサを聴こうとはあまりしません。もちろんソウルの女王なので敬意を表しアルバムも揃え何度も耳を通しています。個人的な好き嫌いかも知れませんが、女性の歌には優しさや奥ゆかしさ、悲哀の表現などを求めてしまうようです。また、アドリブで元のメロディが分からなくなる位まで崩すのは私的にはついていけません。 (ソウルファンの皆さんごめんなさい) そんな事を言っていますが、「ロック・ステディ」 や 「シンク」は限りなくかっこいいし、バートバカラック作の 「小さな願い」 に至ってはどんな人のバージョンよりもアレサのバージョンをこよなく愛しております。

『ロック・ステディ』-Rocksteady-

『シンク』-Think-

『小さな願い』-I say a little prayer-

次号へ続く

HEART&SOUL代表 原 正行)

 

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