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I love Japan(第10回) 總持寺インタビュー

by staff on 2017/1/10, 火曜日
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皆さんこんにちは、NPO法人フォーエヴァーグリーンの渡邊です。決算やら、事業計画の整理などでしばらく連載をお休みしておりましたが、この秋から活動の準備がまた整ってきたので、連載も再開したいと思います。

さて、アメリカで茶道と環境保全をテーマとした【温故知新:環境茶道】という環境学習プログラムを制作し、日本でも開催を重ね、20回を超えて結果も伴ってきて、私達の中で一つ答えのようなものが完成してきたと実感しています。理事長に就任して3年目を迎えたこともあり、改めて事業の整理を行い本オリジナルコンテンツを発信するにあたり、より日本文化への理解を深めたいと考えてます。そこで、お茶の精神の原点でもある「禅」を体現しておられる曹洞宗の大本山、横浜鶴見にある總持寺さんにインタビューを行いました。

幾つかのテーマを用意してお話を伺ってきたのですが、特に興味深かったお話を、この場を借りて皆様に紹介したいと思います。今回お話を伺ったのは副監院山口正章老師。

先ず、總持寺さんは環境保全に対しては理解が有り、それに尽くすことは当たり前と考えておられ、私達の活動にも評価とご理解を示して下さいましたが、仏教の成り立ちからして環境保全、生物多様性に向いているという点で、共感し合えるモノを感じました。山川草木悉皆成仏=生きとし生けるものは全て仏性を備えてる。これを山口先生は仏教の発祥のシチュエーションを例にとって教えて下さいました。一神教の一部は、砂漠で生まれています。その為「命やモノは神から与えられた」と、神が人の為に創造したものを、人は許しを得て手にする事が出来ると考えられているのです。しかし、仏教は四季のある場所で産まれた為、人間の周りには常に命が溢れており、その存在をそもそも認めているとのこと。なのでその営みの中で食べ物を口にするには、「あなたの命を頂いてごめんなさい。」と命に向き合いながら受け取る為、自然と、命への感謝が育まれた。命の尊厳に対しての考え方が、そもそもまるで違うと分析されておられました。もちろんこれも、だからドチラが良いとか悪いと言う話ではなく、あくまで成り立ち方を考えた時の見方の話です。これはとても現実的な視点でのご意見で、スピリチュアルじゃない腑に落ちるお話でした。

そして、何度も口にされておられたのが、物事に対する「中道」という姿勢。何かに極端に傾倒しないで、バランスの取れた考え方を持とうと仰られるです。善悪で物事を判断するべきではなく、今ダメなことが、100年後もダメとは限らない、中道を貫く中に人としてのあるべき姿を見出しておられるとのこと。一般的な宗教家というと、やはりその信じる何かに傾倒している方が多いイメージですが、山口老師はとても現代的というか「違いを認め合う」視野を持ってました。神が全てと説いては、違いを認め合うという心は生まれようがなく、ここに西洋と東洋の大きな違いを感じました。この宗教観の分析はとても面白いですね。

今回私はあくまで、環境保全の新しいアイディアとして学び始めた茶道の、一つのエッセンスとしての禅に対して、自分なりの理解を深めたくてお話を伺いましたが、やはり直感的に、東洋文化を代表する仏教は環境保全のマインドを備えた一つの哲学のように感じました。

また、私が教育的に感じたのは、「結果以上に、姿勢を評価する」ところ。文章で書き表すのは難しいのですが、仏教では何かを胸に宿した瞬間から、その想いは達成していると考えるそうです。例えばですが「一億円を盗んだ大泥棒になるには、日々の積み重ねで毎日10円を盗むのが達成されて、大泥棒になるのではなく、その行為を始めた時からもうゴール・目標である大泥棒と同じなのだ。」と考える。これは私が、環境活動を広めてゆく中で、結果を何かで出す方法として、仏教というツールも考えられるのではないかという持論を述べた際、「仏教では結果を残すことに重きを置いた考え方はしませんよ。」と、ご説明いただいた中で伺ったお話です。「私達(お坊さん)は長い目で物事を見るので。」とのことでした。

茶道は芸術ですが、日常の中で禅の影響を受けた作法の一つとも言われています。禅宗である總持寺さんにお話を伺ったのも、以前、神奈川の表千家の会長さんに「總持寺・茶筅供養」なるイベントに連れて来ていただいたからです。一年間使ったお茶筅を人の様に供養し、道具を大切に弔うのです。私達フォーエヴァーグリーンは、環境保全に必要なのは物を大切に扱う心だと訴えてきました。その結果として、数名の学生はその心をソーシャルビジネスのフィールドで発揮しました。捨てられてしまうモノに対して、簡単に捨ててはいけないと思う心がそうさせたのです。これを環境倫理と呼ぶか、なんと称するかは分かりませんが、Co2を排出しない生活という結果を残すことは間違いありません。私達の文化が世界のソリューションになるかもしれないなんて、想像しただけでもワクワクするし、現在海外で見直されリスペクトを集める日本文化、それが趣味趣向として好まれるだけでも嬉しいことですが、本質的な意味が理解・評価され、結果として環境への効果が実績として残るようになれば、素晴らしいことだなと感じました。

今回、快くインタビューに応じて下さった總持寺の皆様のご協力に、心から感謝申し上げます。ありがとうございました。

文章・写真: 渡邊圭
NPO法人フォーエヴァーグリーン
Email: info@forever-green.jp
URL: http://www.forever-green.jp/

筆者紹介

渡邊圭(わたなべ けい)

アーティストとしてアメリカで勝負しようとしていた自分が、マーケティングとして、最初にしなければならなかったことは、日本人が何を美しいと想い歴史を重ねてきたのかを知ることだったのだ!と思うと、目から鱗が落ちる気分でした。そして、学んだ「茶の湯」の世界観の精神性の高さと、何を美しいのかと定義する独自性、その茶道の在るべき姿とは、途方もなく美しかった、、、こんな芸術があったのか!と、感動を禁じ得ませんでした。その後、自国の文化に自信を持てた時、世界の誰にも負けない物を持っていると心から思えた時、それはどんな励ましの声よりも私の心を強くしました。それはそうでしょう「世界の誰にも負けない」なんて気持ちでいられたら、こんなに心強いものなんてないですよね。

この経験は、帰国後の私に大きな示唆を産みます。そんな目線で地球儀を眺めたことなんかなかったからです。「日本人として、世界に何を訴えるか。」きっと我々にしか出来ない仕事/提案があるに違いないと確信しました。私は日本文化の特性を分析していくうちに、それが世界的大きなニーズに当てはまることを発見したのです。その可能性を考えると、ワクワクします。

 

 

 

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