ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第50回)
大浦総合研究所 代表/大浦勇三
ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第50回)
遊びをせんとや生れけむ、戯れせんとや生れけん
遊ぶ子供の声きけば、我が身さえこそ動がるれ
- 梁塵秘抄 -
“けもの道” とは山野の中でケモノが通る道。人間もできあがった道を走るだけでは生きていけないかも。政治の世界では “一寸先は闇” という言葉が使われますが、今やあらゆる世界が一寸先は闇の時代に突入。世界的ベストセラー “サピエンス全史” の著者ハラリは “狩猟民族のように自分の身体や五感に敏感になること” の大切さを語っています。知の空間の中で “疑問(Why?)” を大切にすることで理論構築や歴史的時間感覚を鍛えろというもの。 “コンピューター付きブルドーザー” は高度成長期の話で、今後は狩猟民族を凌駕する “AIをまとったケモノ” そのものになる覚悟が必要かも。それにはもっと “遊び” を深めなければいけないのかもしれません。そこから野生や弾性を強化すること。充電という無駄、時には昼寝をすることの大切さ。 “知的充電” ということでは、勝海舟や福沢諭吉などの知の巨人は一生のうち何度か、死に物狂いで勉強したといいます。それは、ある意味で一種の “修行” であり、見識や洞察を磨く近道。学校の勉強レベルではすぐ賞味期限が切れてしまう時代ですもんね。梁塵秘抄では “娑婆にしばしも宿れるは 一乗聞くこそあわれなれ 嬉しなれ や 人身再び受けがたし 法華経に今一度 争でか参り会わん” とあります。輪廻転生の世では、法華経の教えに出会えれば儲けもの。 “一人でいても淋しくない人間になれ” と明治時代の巨頭・頭山満。
“遊びをせんとや生れけん” 「遊」
考慮する点 移動の自由と機会が薄い労働市場 成果主義はノルマの強制
六十歳からが人生の本番 人間は六十年間苦労してはじめて物事がわかる
選択幅を広く持っていれば難局でも立ち向かえる、と登山家・田部井淳子
登山家というと、屈強な肉体を思い浮かべますが、昨年亡くなった登山家・田部井淳子さんは普通の主婦という印象。それが女性として世界で初めて世界最高峰エベレストへの登頂に成功。そんな登山の達人も “もうダメだ” と思ったときが三度あり、いずれも雪崩に巻き込まれたもので、その一つがエベレストの第二キャンプ(6500m)でテントごと埋められた時。 “選択幅を広く持っていれば難局でも立ち向かえる” との教訓は、今後の高齢社会では誰もが肝に銘ずべきもの。60歳からこそ人生の本番であり、長い人生で苦労してはじめてわかることが多いもの。経験知から多様な選択肢を生み出せれば、精神的・文化的にも豊かな時間を持てるようになるかも。その燃料は何より “遊び心” で、一つの答への固執こそ大きな冷水材料。肝心なことは、人生の最後の勝負に克つこと。 “読書は人生のすべてが決して単純でないことを教えてくれます” と美智子皇后。
“仕事をせんとや生れけん” 「献」
生じた差異(ギャップ)を認識し 顧客の反応に絶えず注意を払う
顧客に影響するプロセスの核心を見極め 顧客を議論に参加させる
つまんない仕事でも一生懸命やっていると面白くなるよ、と黒澤明
映画監督・黒澤明は、画学校にも通っており当初は画家志望。二科展に入賞した腕前で、絵コンテはどれも優品。脚本家としても一流で、映画をやる人間は脚本を磨けと繰り返し語りました。若き日、先輩の映画監督・谷口千吉(妻は八千草薫)の下宿に転がり込み、裸電球だけの布団の中で毎晩脚本を書き、谷口は眠れないと何度もクレームをつけたとか。そんな脚本修業はフィルム編集に生き “世界のクロサワ” を生み出しました。どんな仕事でも一生懸命やると面白くなることの証明。全盛時代、東宝のライバル・松竹でも、小津安二郎より黒澤の人気の方が高かったとか。それでも晩年の黒澤は、小津の “東京物語” をビデオで繰り返し研究。三船敏郎についても、俳優オーディションを受けた三船を偶然目撃。不合格の三船に一目ぼれした黒澤が強引に採用したという奇縁。 “深淵を覗き込む時、深淵もまたこちら側を覗き込んでいる” と哲学者ニーチェ。
“学びをせんとや生れけん” 「学」
営業担当者全員に継続的に実施 狙いは、営業担当者を知識労働者と位置づける
知識労働者には 行動を刺激する知識への変換スキルが今後不可欠と考えるから
誰でもずっと人生の通過点 窮すれば・即ち変ず 変すれば・即ち通ず、と易経
“易経(えききょう)” は古代中国の書物で儒家の経典。中心思想は、陰陽二つの元素の対立と統合により、森羅万象の変化・法則を説くもの。太古よりの占いの知恵を体系化し、深遠な宇宙観にまで昇華させました。重要な課題の解決法であり、占師は政治の舞台で命がけの責任を背負うことに。 “易” という語は変化を意味し、占いというものが過去・現在・未来の変転・流転を捉えていくということから、何らかの意味で “天変地異” に関わるということ。人生の価値は、時間の長さでなく、その使い方で決まるもの。まずは “昨日どうだったか” から始まり、次に “明日どうか” に踏み込んでいく。先々、より良い方向にどう持っていくか。ただ、急速に拡大する事象は、その急速さゆえにどこかで破綻をきたすもの。大事なのは行動を刺激する知識への変換スキル。まさに “窮すれば即ち変ず。変すれば即ち通ず”。 “忍とは心に刃を抱くと書く” と政治家・後藤田正晴。
「遊びは仕事、仕事は遊び」
「仕事は学び、学びは仕事」
「学びは遊び、遊びは学び」
今回とりあげた「遊・献・学」それぞれの4行文は、拙書「ビジネス梁塵秘抄(一)~(十)」(全10巻)及び「続・ビジネス梁塵秘抄(一)~(四)」(全10巻)から抽出したものです。次回以降も「遊・献・学」から各々4行文を一つずつ抽出してご紹介していきたいと思います。
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(第50回了)
大浦勇三(おおうら ゆうぞう) プロフィール
大浦総合研究所 代表 (http://www.mmjp.or.jp/ooura/) 石川県七尾市出身。 筑波大学大学院講師、城西国際大学客員教授、名城大学講師、産業能率大学講師、中小企業大学校講師などを歴任。 主な著作物:
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ランニングが大好きで、月に150kmほど走っているというヨコハマNOW編集長の辰巳隆昭が、お気に入りの新横浜公園のランニングコースを紹介します。 |
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