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アートのひみつ(第5回) 日本のゲージュツ、海を渡る

by staff on 2017/5/10, 水曜日

第5回 日本のゲージュツ、海を渡る

みなさま、こんにちは! ゴールデンウィーク(GW)はいかがお過ごしでしたか? 海外旅行にいらした方もいらっしゃるのではないでしょうか。近年は海外から観光で日本を訪れる方が増えましたね。
先日、外国の友人を和紙だとか文房具の専門店に案内したという方にがいたので「日本が好きな方ならば、江戸千代紙のお店もご案内したらいかが?」とおすすめしてみました。やはり、外国の方が日本の文化に興味を持ってくださるのは嬉しいものですよね。

東の果ての国、日本。日本は海に囲まれてますから住んでいる私たちは横浜のようなエキゾチックな街の雰囲気は、海外へのあこがれをいつも高めてくれます。
現在は飛行機もあるのでたいていのところへは行くことはできますが、「あー、この海の向こうにはどんな世界があるのだろう~~」と海を眺めたことはありませんか?

かつて、日本がこのようなあこがれを一心に集めたことがありました。
19世紀半ばのヨーロッパでの万博に日本が参加して出品したことをきっかけに日本文化・美術・工芸などが世界に驚きを持って迎えられました。(この頃の世界は主に西洋を指します)
初めはジャポネズリー、「日本趣味」と呼ばれて、日本の浮世絵などをコレクションするところから始まったようです。その前にヨーロッパで流行したシノワズリー「中国趣味」とはちがって100年近くもの長い間、西洋の芸術家たちに大きな影響を与える「現象」になりました。
それが「ジャポニスム(ジャポニズム)」です。

浮世絵がフランスに紹介されたのが、1867年のパリ万国博覧会でした。印象派に名を連ねた画家たちが浮世絵の影響を受けたのは知られているところですね。
こちらのクロード・モネの2つの作品はモデルは妻のカミーユ。サイズもほぼ同じ。(2メートル超える大作です!) 「緑衣の女性」(左側)の10年後、「ラ・ジャポネーズ」(右側)が描かれました。振り向くようなポーズは似てますが「ラ・ジャポネーズ」は浮世絵の美人画のようにも見えます。

モネがド派手な極彩色を取り入れたのも当時の日本の浮世絵版画の多色摺の技術が極まり完成された、一番華やかだった時期と重なります。(錦絵と呼ばれます)
もしかしたら「緑衣の女性」(左側)の色彩のほうが現在の日本の私たちには馴染みのある「和」を感じさせるかもしれませんね。

そして「日本趣味」が物珍しいだけではなく当時の芸術家の心をとらえた理由とは?

ワオ! こんなの見たことないよ~!!
新しい~! 使ってみたい!

これまでに見たことのない物、表現を取り入れたい!
この時、美術もすでにモダニズムへと走り出していたのでしょうね。芸術分野の他にも急速に近代化が進み始めた、あらゆる物を貪欲に飲み込もうとする熱を帯びた時代。
そこへ日本の文化が世界の前に現れたというわけです。

「組み合わせの妙」という言葉があります。その組み合わせが「不思議なほど優れ、きわめて美しい。巧みである。」という意味になります。しかもそれは似たものを組み合わせても、合わせ方によってガラリと違って見える、また、さらに優れたものになる、という意味です。

組み合わせたらどうなるだろう?
さらには新しいものを取り入れたらどうなるかな?
ここにゲージュツは潜んでいます。
「創ること」はゼロから成り立つものだけではないのです。

また、「ラ・ジャポネーズ」(右側)は見てわかりやすく、ザ・日本の要素をふんだんに取り入れてることに目を奪われます。ですが、実は「緑衣の女性」(左側)の頃にも時代は動きを加速しはじめていました。

長く長く続いた歴史的な、または寓話的テーマに沿った作品が良しとされていた時代から「眼に見えるものしか描かない」(写実主義)というクールベの言葉どおり、絵画は近代的な歩みを始めていたのです。例えば、今では当たり前のようにテーブルに置かれた花瓶の花を絵のメインテーマにすることは「なにそれ?」と評論家たちにフフンと笑われるような時代。肖像画も芸術的な価値は低いものでした。

ですから、モネの日本文化に強烈に影響を受けたテーマや色彩は突然の変化ではなく「緑衣の女性」(左側)の頃から続いた「進化」なのだと私は思うのです。
屋外で絵を描く(それまでは絵の具は屋内でしか使えなかったのです!)、リアリティあふれる絵画手法は戸外制作ができるようになり生まれたものでした。そして画家たちが描く風景画の絵の色彩はぐんと明るくなりました。
こうした印象派を経て、さまざまなものを取り入れて描かれたのが「ラ・ジャポネーズ」(右側)なのではないでしょうか。

取り入れ、融合させていく。
モネはカルチャーショックを受けた影響が大きいけれど、この極彩色にはそこにたどり着くまでにたくさんの「組み合わせ」のエピソードが隠されているのです。

ふだん、あなたが意識しなくてもこの画家のようにゲージュツ的組み合わせを創り出しているかもしれません。料理やファッション、音楽・・・ゲージュツが潜んでいるところがたくさんあります。ぜひ「ゲージュツ的、組み合わせの妙」を楽しんでみてくださいね。

筆者紹介

 
本 名 山田 明子 (やまだ あきこ)
略 歴 東京都生まれ
1994年 女子美術大学短期大学部卒
美術家 臨床美術士
Art Factory星組 代表
 
通信会社勤務を経て、2014年より高齢者施設などへ出張アート教室をおこないながら、横浜元町で「感性を生かし、育てる」アート教室「横浜MOTOMACHIアトリエ星組」を運営中
星組、臨床美術についての情報
  ☆横浜MOTOMACHIアトリエ星組☆
~「自由な感動」を育む「感性のレッスン」を~
http://artfactory-hoshigumi.crayonsite.com/
 
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☆臨床美術について☆
「臨床美術」は医師と芸術家によって作られた芸術療法です。
現在では学校やオフィスでの感性教育、病院や高齢者施設でのリハビリテーションに取り入れられています。

 

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