ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第53回)
大浦総合研究所 代表/大浦勇三
ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第53回)
遊びをせんとや生れけむ、戯れせんとや生れけん
遊ぶ子供の声きけば、我が身さえこそ動がるれ
- 梁塵秘抄 -
立川志らくは、辛口の師匠・立川談志が落語家として一人前と認めた数少ない一人。その談志から “修業とは不条理・理不尽に耐えること” と言われたとか。最近の時代感覚からすると修業は無茶・無駄の塊。 “同じ仕事を繰り返し、毎日同じことで叱られる” “己のダメさをいやほど認識する” “世の中の底辺を見る” 。以前、ミラノ・スカラ座で長年プリマを張った老女優が、最近のプリマが彗星のごとく現れすぐ消える理由を問われ、言下に “ドサ回りが足りない” と答えたのとピッタリ。高いレベルに到達し長期間持続するための土台は洋の東西を問わないのかも。それでは、AI時代における修業とは何なのか。 “笑いは手段” という落語の修業から得られるヒントは、少なくとも昔の落語噺を山ほど身につけるということだけではなさそう。これからの時代、AI一筋というより人間世界全般に関わる “リベラルアーツ” が鍵なのかも。梁塵秘抄では “媼の子どもの有様は 冠者は博打の打ち負けや勝つ世なし 禅師はまだきに夜行好むめり 姫が心のしどけなければ いとわびし” とあります。どんな時代も博打・夜遊びする放蕩息子の存在は尽きないもの。 “歴史の教訓:背伸びをするな” と政治学者・片山杜秀。
“遊びをせんとや生れけん” 「遊」
見方一つで世界が別の景色を見せてくれる 視点をずらすことを修得する
ハンディを有利な方向に切り返すスキル 好球が来たら思い切り振りきる
遠道こそ近道 勝たむと打つべからず 負けじと打つべきなり、と徒然草
吉田兼好の “徒然草” は、清少納言の “枕草子” 、鴨長明の “方丈記” と合わせて日本三大随筆の一つと評価されています。 “つれづれなるまゝに 日ぐらし硯に向かひて 心にうつりゆくよしなしごとをそこはかとなく書き付くれば あやしうこそ物狂ほしけれ” の序段はあまりにも有名ですね。内容は多岐にわたり、思索や雑感・逸話を長短かつ順不同に語っています。執筆後約100年間は注目されなかったようですが、応仁の乱の時代に入ると “無常観の文学” “多面的で相反する考えを一つにとりこんだ宇宙” という観点から共感を呼んだようです。 “花はさかりに月は隈なきをのみ見るものかは” は心に沁みますね。 “自分の直感を信じる。直観こそ磨かなければ” と写真家・坂田栄一郎。
“仕事をせんとや生れけん” 「献」
新たな視点・考え方・技術は 未知の世界や領域を切り開く上での大切な道具
日本の不得意分野はルールの構築・変更・見直し グランドデザインを鍛える
成分律だけでなく不分律にもメス 不文律を逆手にとってリスク制御に生かす
“不文律” とは見えざる明文化されてないルールで、直接コントロールし難いもの。日々の行動の拠り所となるものであり組織文化風土の岩盤。最近は企業変革の必要性が叫ばれますが、組織・プロセスにおける目に見える成分律の変革では表層レベルに留まり大抵は頓挫。不文律がすべて悪いわけではなく、むしろプラスに作用することも多々あり。大事なことは、成分律と不文律という二つのルールを両輪とする創造の場をどう実現するか。それでも、ビジョン・戦略が組織の不文律を常に踏まえる訳ではないため、不文律が革新&推進の壁となってしまうことも。撃破には動機付けと具現化への引き金。 “正解を選択しようとするのでなく自分の選択を正解にする” とサッカー・長友佑都。
“学びをせんとや生れけん” 「学」
信頼できる新規ネットワークを持てる、異分野での深い経験知から学ぶことができる
どうやるか、肝腎なのは正解でなく考え方 ルールで縛らない、独自のルールを創る
理解可能な知の範囲で納得しない 混沌を素直に受け止め、成すに足ることを欲する
“メンタリング” とは人材育成において、指示や命令でなくメンターとの対話による気づきと助言を通じて全人格的な成長を持続的に動機付ける手法。“メンター” という言葉はホメーロスの叙事詩に登場し王子の教育に卓越した成果をあげたメントールの名に由来。方法には個別にパートナーシップを組むクローズ型と、組織などからアサインされるオープン型の二種類。自律的に考えて判断していく能力を強化・向上させることが主眼。タイガー・ウッズほどのプロでも技術コーチは必ずつきますが、メンターも欠かせない存在。それを担ったのがお父さん。タイガー・ウッズの崩壊には、病気のお父さんを喪ったダメージの影響も。 “自由に生きる・自分らしく生きる” と作家・永井荷風。
「遊びは仕事、仕事は遊び」
「仕事は学び、学びは仕事」
「学びは遊び、遊びは学び」
今回とりあげた「遊・献・学」それぞれの4行文は、拙書「ビジネス梁塵秘抄(一)~(十)」(全10巻)及び「続・ビジネス梁塵秘抄(一)~(五)」(全10巻)から抽出したものです。次回以降も「遊・献・学」から各々4行文を一つずつ抽出してご紹介していきたいと思います。
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(第53回了)
大浦勇三(おおうら ゆうぞう) プロフィール
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大浦総合研究所 代表 (http://www.ne.jp/asahi/oura/ohura-research-institute/) 石川県七尾市出身。 筑波大学大学院講師、城西国際大学客員教授、名城大学講師、産業能率大学講師、中小企業大学校講師などを歴任。 主な著作物:
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