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ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第56回)

by staff on 2017/11/10, 金曜日

大浦総合研究所 代表/大浦勇三

ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第56回)

遊びをせんとや生れけむ、戯れせんとや生れけん
遊ぶ子供の声きけば、我が身さえこそ動がるれ

- 梁塵秘抄 -

生誕300年を記念して開催された昨年春の伊藤若冲展(東京都美術館)は最長の入場待ち時間が4時間を超えるほどの人気を博しました。目玉は宮内庁が所蔵する “動植綵絵” 30幅で、一堂に展示されるのは初めて。江戸時代の画家トップ3は円山応挙・伊藤若冲・池大雅。当時、若冲の評価は必ずしも高くなく “千載具眼の徒を俟つ” と1000年先の目利きに期待したそうです。ゴッホも生前は3000点のうち売れたのは0に近く、 “100年後の人々に感動してもらえる絵を描く” と覚悟、確かに100年後ブレイクしました。一方で、若冲は再評価に250年前後かかりました。もともとは京都・錦小路の青物問屋の長男。号の “若冲” は “大いに充実しているものは空っぽのようにみえる” の意味。絵を描くこと以外には関心なし。商売には不熱心・芸事もしない・酒も嗜まないで生涯独身。40歳には家督を弟に譲り、はやばやと山奥に隠居。梁塵秘抄では、 “厳粧狩場の小屋並び しばしば立てられ閨の外に 懲らしめよ 宵のほど 昨夜も昨夜も夜離れしき 悔過は来たりとも来たりとも目な見せそ” とあります。待ちくたびれても落ち込まず強気。 “アイデアは二、三のセンテンスに纏める” とノーベル賞作家カズオ・イシグロ。

“遊びをせんとや生れけん” 「遊」

どんなに気に入った仮説でも 事実に反すると証明されれば放棄する
生活者の関心は あこがれの追求から限られた予算での合理的判断へ
碁の厚みとは、何よりも先行投資 碁に戦闘力をもたせて挑み続ける
碁打ちなんて大したことないのだから死ぬほど努力する、と藤沢秀行

藤沢秀行の囲碁の棋風は豪放磊落で、厚みの働きを最もよく知るといわれました。ポカで好局を落とすこともありましたが “異常感覚・華麗” と称される鋭い着想は天才肌。盤上での活躍と、盤外の酒・ギャンブル・借金・女性関係などとの破天荒な合わせ技は “最後の無頼派”。意外にも日中韓の若手棋士からは尊敬され人気がありました。死を覚悟したベッドでは、箸も持てない中で渾身の力で筆を持ち “強烈な努力” と揮毫。 “囲碁は人間がやるものだから、人間を高めないと囲碁も上達しない” との言は人間世界の全てに当てはまりそう。囲碁の血は孫の藤沢里菜女流棋士にしっかり受け継がれています。 “文化は非効率。いいと思うからそうする程度の効率しかない” と詩人・長田弘。

“仕事をせんとや生れけん” 「献」

設計とは価値を生み出す仕事 絵を描く製図作業が設計ではない
稽古、端から好きなものはいない 少しずつ慣れていくしかない
地道にやる 論理が正解でも前提に間違いがあれば結論は間違い
努力だけが自分を支える 苦しむのも才能、とドストエフスキー

ドストエフスキーは日本でも人気のロシアの作家。モスクワの貧民救済病院で生まれ、17歳にサンクトペテルブルクへ移る少し前までモスクワで暮らしました。10数年前にモスクワへ出張の折、仕事をサボって貧民救済病院を訪問する時間をやりくり。病院内の家族の部屋は保存されており、 “罪と罰” の初期草稿が書かれた机を許可をもらい撫でまわしました。賭博好きから貧乏とは生涯縁が切れず、借金返済のために無理な契約をして締め切りに追われる日々。同じく借金で首が回らず原稿を書きまくったバルザックにそっくり。価値創造は追い詰められた環境から生まれるものかも。 “苦しむのも才能” は実感では。 “問題を解決しようとせずに、それを切り抜けなさい” と哲学者・スピノザ。

“学びをせんとや生れけん” 「学」

幼い頃から塾や習い事に通って安全運転、ほとんど養殖に近い
養殖の良さはあるが天然ではない 人生は短距離競走とは違う
振れ幅を許容、組織に厚み 未知の変化に対する有効な手立て
浮世を棄つるは即ち浮世を活発に渡るの根本なり、と福沢諭吉

福沢諭吉は著述家・教育者、慶應義塾の創設者で一万円紙幣でも有名。著書 “福翁自伝” は自伝として最高傑作との評価も。山ほどの障害を乗り越えた “したたかさ・しぶとさ” はお見事。父親は中津藩の下級武士で大変な勉強家で俊秀ながら、身分格差の激しい中津藩での門閥の壁に阻まれ仕事には恵まれませんでした。そのため諭吉の行く末を案じ、坊主にして名を成さしめんとまで苦悩。後年、諭吉をして “門閥制度は親の仇” とまで言わしめました。緒方洪庵の適塾での強烈な勉強を土台にしたリベラルアーツの凄み。 “浮世を棄つるは即ち浮世を活発に渡るの根本なり” との捨て身の人生観。 “グローバル経済の進展は資本をもつ人と能力の高い人に有利” と作家スティーブン・キング。

「遊びは仕事、仕事は遊び」
「仕事は学び、学びは仕事」
「学びは遊び、遊びは学び」

今回とりあげた「遊・献・学」それぞれの4行文は、拙書「ビジネス梁塵秘抄(一)~(十)」(全10巻)及び「続・ビジネス梁塵秘抄(一)~(五)」(全10巻)から抽出したものです。次回以降も「遊・献・学」から各々4行文を一つずつ抽出してご紹介していきたいと思います。

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(第56回了)

 

大浦勇三(おおうら ゆうぞう) プロフィール

大浦勇三(おおうら ゆうぞう)  

大浦総合研究所 代表 (http://www.ne.jp/asahi/oura/ohura-research-institute/

石川県七尾市出身。
早稲田大学卒業、筑波大学大学院修了。
米国経営コンサルティング会社 アーサー・D・リトル 主席コンサルタントを経て現職。
主担当領域は、経営改革/企業再生、経営戦略/情報通信技術戦略策定、業務改革/組織改革、研究開発/商品開発マネジメント、マーケティングマネジメント、ナレッジマネジメント、イノベーションマネジメント、サプライチェーンマネジメント、人材マネジメント、コーチング/メンタリング、プロジェクト/プログラムマネジメント、ベンチャービジネス支援等のコンサルティング。

筑波大学大学院講師、城西国際大学客員教授、名城大学講師、産業能率大学講師、中小企業大学校講師などを歴任。

主な著作物:

  • 「続・ビジネス梁塵秘抄(一)~(五)」<全10巻>(大浦総合研究所:PDF版)
  • 「ビジネス梁塵秘抄(一)~(十)」<全10巻>(大浦総合研究所:PDF版)
  • 「イノベーション・ノート」(PHP研究所)
  • 「ITプロジェクトマネジャーのためのコーチング入門」(ソフトリサーチセンター)
  • 「図解 日本版LLP/LLCまるわかり」(PHP研究所)
  • 「IT技術者キャリアアップのためのメンタリング技法」(ソフトリサーチセンター)
  • 「よいコンサルタントの見分け方、かかり方」(清話会)
  • 「日本のモノづくり - 52の論点」<共著>(日本メンテナンス協会)
  • 「現場主導型の組織運営とスピード戦略」(日本監督士協会)
  • 「eコミュニティがビジネスを変える」<訳>(東洋経済新報社)
  • 「ナレッジマネジメントが見る見るわかる」(サンマーク出版)
  • 「図解 ナレッジ・カンパニー」(東洋経済新報社)
  • 「ナレッジマネジメント革命」(東洋経済新報社 )
  • 「図解 グローバル・スタンダード革命」(東洋経済新報社)
  • 「業務改革成功への情報技術活用」(東洋経済新報社)
  • 「情報化戦略と投資評価・システム運用管理の実際」<編著>(企業研究会)
  • 「会社改革実務辞典」<共著>(産業調査会)
  • 「プロジェクトマネジャー(PM)の育成・スキルアップのためのメンタリングの進め方と実践法」 (ソフトリサーチセンター:CD-ROM版)   など

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