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ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第59回)

by staff on 2018/2/10, 土曜日

大浦総合研究所 代表/大浦勇三

ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第59回)

遊びをせんとや生れけむ、戯れせんとや生れけん
遊ぶ子供の声きけば、我が身さえこそ動がるれ

- 梁塵秘抄 -

“金継ぎ(きんつぎ)” とは壊れた器をポイ捨てするのでなく、繕いを通じて新たな命や美を吹き込もうとするもの。器を漆で継ぎ、金や銀で化粧・装飾して魅力や価値を再創造するもので、日本独特の技・美意識・文化。21世紀のイノベーションにも様々な示唆を与えてくれそうです。ひと手間加えることで今までにない “景色” を産み出すもので、細部の魅力を再発見するもの。窯から出した器をわざと壊し、そこに “金継ぎ” を施し、新次元の美を創出しようとすることもあるとか。西洋では傷はあくまでも傷であり、それは隠すべきもの。日本ではそこに化粧を施し新たな景色を創りだすという発想。五感に訴え、歴史を感じさせるものが21世紀の価値創造。東京芸大が挑む法隆寺・釈迦三尊像やゴッホ・自画像など、直接触れて共有も可能な “クローン文化財” も本質は同じ。データ化されていない状況を飲み込み、異次元の世界を最善の形で考察していくのがAI時代のヒトの強みで武器。梁塵秘抄では “小鳥の様がるは 四十雀鶸鳥燕 三十二相足らうたる啄木 鴛鴦鴎魚狗川に遊ぶ” とあります。鳥もさまざま、みんな違ってみんないいという世界。 “外へ目を向けるのでなく自らの内へ入れ” と詩人・リルケ。

“遊びをせんとや生れけん” 「遊」

早く競争の土俵を変える さもないと市場から抹殺される
歩みは遅くとも しかし歩んだ道を引き返すことはしない
身過ぎ世過ぎは草の種 ピアニストの腕は小さな音がカギ
憂きことをクラゲに語るナマコかな、と京の俳人黒柳召波

黒柳召波は江戸時代中期の俳人で、別号は玄亭・春泥舎。漢詩から俳諧に転じて与謝蕪村に師事しました。俗調を排して離俗の生活を重視。海月(くらげ)に語る海鼠(なまこ)という構図は何とも奇想天外。AIの強みはデータに基づく記憶力・計算力・分析力。人間はデータ化されていない状況を突破する洞察力・直観力が強み。人間の極みは修練による直観と遊びのバランス。マグロやノドグロの世界から、クラゲやナマコの世界への180度の転換。一度設定して歩み始めた道は絶対引き返さない。これからは労働の道具と遊戯の装置を並立させ、AIと俳句を止揚。 “その時代に徹底して不興を買ったものは、何年か何十年か後に必ず浮上する” と美術家・グラフィックデザイナー横尾忠則。

“仕事をせんとや生れけん” 「献」

GDP実質成長率と長期金利はイコール
筆触に染った和様を唐様の骨組みで洗う
一見矛盾する二つの要求を同時に満たす
四回失敗でも五本目に決める、とジーコ

ジーコ(Zico)はブラジル・サッカー界の至宝で、2006年FIFA・W杯の日本代表監督。愛称のZicoは “やせっぽち” の意味。ブラジルスタイルの抜群のテクニックを持ち、ドリブル・パス・シュートの三拍子を持ち合わせた代表的な10番。得点能力はFWを凌駕するほどで、常に得点を狙う攻撃的MF。日本のサッカー文化を向上させたことへの貢献と世界的なネームバリューから、日本では “サッカーの神様” との評価。ゴールを狙うシュート練習は義務と心得、サッカーは90分という時間を頭に入れて戦うゲーム。逆転はサッカーに限らず、どんな世界でもありうる構造。 “うまい・へたではなく良いか悪いか。無我夢中でやれば他のことも見えてくる” とジャズミュージシャン・渡辺貞夫。

“学びをせんとや生れけん” 「学」

教師とは自らの消滅に向かって活動するもの
精神はつくりだす観念のネットワークで制御
知性の諸法則に学びながら学習を積み重ねる
上手な死に方と生き方は裏表、と日野原重明

亡くなった日野原重明医師は、聖路加国際病院名誉院長など様々なお仕事を務められました。新米の医師よりも治療に精通した看護師もいるとして、医療行為を広く医療従事者に行わせるべきだと主張。米国の大学教授選考も年齢は不問であり実力・実績を尊重とも。ただ組織風土からは適合・不適合の両面。座右の銘は、ウィリアム・オスラーの “医学は科学に基づくアート” 。食事は夕食をメインにしたもので、朝食はジュースにオリーブオイル、昼食は牛乳・胚芽クッキー・林檎。夕食は週2回の肉料理など、体調に合わせて食べ物を変えたといいます。大切なことはすぐにはわからないとの強い思い。 “過去が現在に影響を与えるように、未来も現在に影響を与える” と哲学者・ニーチェ。

「遊びは仕事、仕事は遊び」
「仕事は学び、学びは仕事」
「学びは遊び、遊びは学び」

今回とりあげた「遊・献・学」それぞれの4行文は、拙書「ビジネス梁塵秘抄(一)~(十)」(全10巻)及び「続・ビジネス梁塵秘抄(一)~(六)」(全10巻)から抽出したものです。次回以降も「遊・献・学」から各々4行文を一つずつ抽出してご紹介していきたいと思います。

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(第59回了)

 

大浦勇三(おおうら ゆうぞう) プロフィール

大浦勇三(おおうら ゆうぞう)  

大浦総合研究所 代表 (http://www.ne.jp/asahi/oura/ohura-research-institute/

石川県七尾市出身。
早稲田大学卒業、筑波大学大学院修了。
米国経営コンサルティング会社 アーサー・D・リトル 主席コンサルタントを経て現職。
主担当領域は、経営改革/企業再生、経営戦略/情報通信技術戦略策定、業務改革/組織改革、研究開発/商品開発マネジメント、マーケティングマネジメント、ナレッジマネジメント、イノベーションマネジメント、サプライチェーンマネジメント、人材マネジメント、コーチング/メンタリング、プロジェクト/プログラムマネジメント、ベンチャービジネス支援等のコンサルティング。

筑波大学大学院講師、城西国際大学客員教授、名城大学講師、産業能率大学講師、中小企業大学校講師などを歴任。

主な著作物:

  • 「続・ビジネス梁塵秘抄(一)~(六)」<全10巻>(大浦総合研究所:PDF版)
  • 「ビジネス梁塵秘抄(一)~(十)」<全10巻>(大浦総合研究所:PDF版)
  • 「イノベーション・ノート」(PHP研究所)
  • 「ITプロジェクトマネジャーのためのコーチング入門」(ソフトリサーチセンター)
  • 「図解 日本版LLP/LLCまるわかり」(PHP研究所)
  • 「IT技術者キャリアアップのためのメンタリング技法」(ソフトリサーチセンター)
  • 「よいコンサルタントの見分け方、かかり方」(清話会)
  • 「日本のモノづくり - 52の論点」<共著>(日本メンテナンス協会)
  • 「現場主導型の組織運営とスピード戦略」(日本監督士協会)
  • 「eコミュニティがビジネスを変える」<訳>(東洋経済新報社)
  • 「ナレッジマネジメントが見る見るわかる」(サンマーク出版)
  • 「図解 ナレッジ・カンパニー」(東洋経済新報社)
  • 「ナレッジマネジメント革命」(東洋経済新報社 )
  • 「図解 グローバル・スタンダード革命」(東洋経済新報社)
  • 「業務改革成功への情報技術活用」(東洋経済新報社)
  • 「情報化戦略と投資評価・システム運用管理の実際」<編著>(企業研究会)
  • 「会社改革実務辞典」<共著>(産業調査会)
  • 「プロジェクトマネジャー(PM)の育成・スキルアップのためのメンタリングの進め方と実践法」 (ソフトリサーチセンター:CD-ROM版)   など

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