たち別れ　因幡の山の　峰におふる　まつとし聞かば　いま帰りこむ

♪ たち別れ　因幡の山の　峰におふる　まつとし聞かば　いま帰りこむ ♪

絵・千絵崇石

読み人：中納言行平 （ちゅうなごんゆきひら） 現代語訳・・・私はこれからあの因幡の国に赴任いたします、が　因幡山の峰にある松のように、貴方が私をマツていると聞いたなら　もうすぐにでも戻ってまいります。 最近　鳥取県の因幡山のふもとで在原行平のこの歌碑を読む機会に恵まれました、万葉集にも歌われている因幡山はさほど高くはなくて小ぶりの山でしたが、やはりなんとなく威厳があってその山にある松を見てみたいと思いました。

作者の在原行平は美男子の代名詞になっている在原業平の腹違いのお兄さん。弟の方が美男で有名だったのですが、お兄さんの方もなかなかモテ君で恋多き人生を送ったようです。

まず源氏物語の光源氏が須磨に蟄居した時のモデルはこの行平さん。彼が因幡から都に戻ってきた後に何かの理由で須磨に蟄居することになり、その須磨で出会った　松風と村雨と言う美しい海女姉妹とのエピソードからヒントを得て作られたとされています。

又　世阿弥の作で　松風　と言う能の物語も残されていて、日本文化にだいぶ貢献している歌人です、現在日本に現存する最古の歌会も彼が主催しています。

私は、在原業平さんのお名前は知っていましたが、行平さんの事は殆ど知りませんでした。調べてゆくうちにやはりお二人とも　当時のトップスターだったのだと理解しました。

私は持っていませんが　行平鍋なるものも有名です。厚手の土鍋で取っ手と蓋がついて居ておかゆなどを焚く時に用いた鍋の事です。名前の由来も　彼がその蟄居していた須磨で塩を焼いていた鍋だったとか、今ではその鍋は様変わりして　蓋無しの取っ手が付いたアルミの鍋、料亭などでは必ず見かけるデコボコした両脇にそぎ口がついている底の浅い鍋の事を言うようになりました。鍋にも彼の名前が受け継がれているとは驚きです。

又最近　この百人一首の彼の歌を突然　居なくなってしまった家猫探しにも効き目があるという話を聞きました。いわゆる猫探しのおまじないです。ちょっと調べただけでも沢山あって　突然いなくなってしまった猫が見つかるように、色んなおまじないのやり方が出てきました、共通点はこの和歌を紙に書くという所。

この和歌を紙に書いて　猫の出入り口に猫の食器を伏せてその上に貼っておく。
猫の出入り口で　このおまじないを三回唱えてから紙に書き　東側の壁に貼っておく。
猫の食器の上にこの歌の上の句だけを書いて　貼っておき、猫が帰ってきたらその紙に下の句も書いて燃やす。とか　なんか手の込んだものまでありますが、猫の帰趨本能を飼い主が刺激する歌として　かわいい猫ちゃん！早く帰ってきておくれ！といったメッセージ効果があるのでしょうか？　私は仕事柄　住所不定人間みたいなところがあるので、生き物は　鉢植えも持つことは禁じておりますが、横浜ナウの読者の方やスタッフの中で　どなたか猫を飼っている方、いなくなったら是非試してみて下さい。

他には　お金に困って質屋に着物などを持ってゆくときに　この和歌を書いて袖口に忍ばせておけば必ず戻すことができる？とかいろいろと発展していますが、やはりこの歌は　今春に、単身赴任してしまった恋人には絶対知ってほしいメッセージの筆頭でしょう。

（早苗ネネ♪）

三十六歌仙ＣＤアルバムによせて

10代の頃、じゅん＆ネネのネネとして歌っていた時、多くの方から「北の政所のねね様と同じ名前ですね」と言われ、歴史上に残る方と同じ名前を頂いた事で直ぐに覚えて頂き、良い事が沢山ありました。時が経ち、50歳を過ぎた頃にやっと自分のライフワークを見つけ、「和歌うた」を歌い続けて13年程に成りますが2014年の京都高台寺音楽祭に出演させて頂いた折に、三十六歌仙が高台寺様に遺されているのを知りました。その時にぜひ三十六歌仙にメロディーを付けて同じ名前のねね様に奉納したいとの思いを抱き、2015年9月6日、ねね様のご命日に発表させて頂く事に成りました。

和歌のアルバムとしては10年ぶりでやっと二枚目アルバムです。一枚目のアルバム「花のいろは」は蟠龍寺スタジオの仲間に助けられて生まれました。そして今回のアルバムも製作費は今まで私の和歌うたを聞いて応援して下さった方々のご支援で賄われています。暗中模索と無我夢中で今までよろよろと歩いてきましたが、そんな私を支えてくれる大きな愛情に気が付いて、なんて幸せ者なのかしらと思います。有難うございます。これからも自分の道を信じて歩いてゆきます。

早苗ネネ／京都・高台寺　北の政所・ねねさまに捧げる三十六歌仙 『和歌うた』ＣＤアルバムは、 ヨコハマNOWオンラインショップ で販売しております。

早苗ネネさん　和歌うたLIVE

早苗ネネさん　プロフィール

木々や鳥や魚や精霊…人間以外の存在達との交流が当り前に語れるくらい、いのちのひろがりに気づくと、共に生きている喜びや、苦しみや悲しみにもナイーブになる。

心と野生がひとつながりになると……こんな風に人は年を重ねられる。ひとりひとり、ユニークにもっと自分になれる。

早苗 Nene さんは、そういう人生の先駆者です。　感性を解放しながら、４０代で高校生に仲間入り卒業後、マウイのカレッジに留学中、突然半生記が受賞しました。

そんな新たなシーズンを迎えて、今エッセンスを分かち合いたい。

＜天性の歌い手＞というだけでなく、その存在感、溢れる活性のバイブレーションは、光のシャワーのよう。彼女と語り歌い、魂の成長を旅している現在の、自分の位置を確かめてみませんか？

早苗ネネさんHP