ゆるマナー講座(第32回) 衣替えと就活生
マナーアドバイザー/フレアLLP 岡田 承子
紫陽花の咲く頃となりました。6月は衣替えの季節ですね。
最近は気候の温暖化で、学生たちの制服が一気に夏服になることもなくなったようです。
5月の中頃からでしょうか、段々と夏服を着ているのを見かけるようになります。私が若かりし頃は、6月1日と10月1日は全員が一斉に夏服や冬服に着替えていました。制服が変わるだけなのに、何となく新鮮で前日からワクワクするような気になったのを思い出します。
衣替えの決まりごと
衣替えの時期になると、クローゼットやタンスの中の夏物と冬物を入れ替えるのが面倒だなと思いますが、昔はそれどころではなかったようです。
衣替えの歴史は古く平安時代には年2回宮中行事として行われていたのだそうです。
それが江戸時代になると、年に4回。武家社会で始まり庶民にまで広がったようです。
衣替えの時には、同じ着物の裏地を外して夏用に、裏地をつけて冬用に、もっと寒い時期には綿を入れてと、縫い直していたのだとか。家族全員分を縫うのは大変だっただろうと思います。お裁縫が得意でない女性はどうしていたのでしょうね。
今でも、和服には季節ごとに衣替えがあります。さすがに同じ着物を縫い直したりはしませんが。
10月~5月は、「袷(あわせ)」と呼ばれる裏地の付いた着物。
6月と9月は、「単(ひとえ)」と呼ばれる裏地の付いていない着物。
7月は、「絽(ろ)」と呼ばれる縦糸と横糸を絡ませて織った目の粗い着物。
8月は、「紗(しゃ)」と呼ばれる絽より目が粗く薄い生地の着物。
「季節感」が大切にされるのが和装です。生地の厚さや裏地のある無しなどもそうですが、絵柄にも季節の風物、草花、動物や虫までが描かれ、季節感をまとうのです。季節に合ったものや少し先取りするのは粋だけれど、外れると野暮とみなされるなど、着物を着こなせるようになるまでにはなかなか難しい決まりごとがあります。
一方、西洋での装いで大切にされるのは「時間」と「場所」です。パーティなどに欠かせない「ドレスコード」と呼ばれる服装規定は、まさにその「時間」と「場所」によって厳格に決められています。ドレスコードの基準はイギリス、そして男性です。
ドレスコードは、昼間か夜か、フォーマルかインフォーマルかに大きく分けられます。
フォーマルの中で、昼間の正礼装といわれるのは「モーニングコート」。よく花嫁、花婿のお父様がお召しになっているものです。
夜の正礼装は「ホワイトタイ」。燕尾服と呼ばれるものです。儀式や晩餐会などで着用する第一級の正礼装。蝶ネクタイの色が白色です。ノーベル賞の授賞式での山中教授もこの装いでした。
そしてそれに次ぐ正装が「ブラックタイ」。タキシードと呼ばれるもので、蝶ネクタイの色は黒色です。
女性は男性の基準に合わせたドレスを選びます。
イギリスの貴族の生活を見ると、外出や散歩、乗馬や狩りなど場所や用途によって一日のうちに何度も着替えをしていたようです。
同じ衣替えでも、国が違えば様々ですね。
就活生だって衣替え
さて、そんな風に衣替えに思いを巡らせるこの季節、周りは段々明るい色や爽やかな色を身につける方が増えてきます。そんな中、どうしても気になってしまうのが黒いリクルートスーツの「就活生」です。男性はネクタイで色を取り入れられますが、女性は全員黒いスーツに襟のついた白いブラウス。そして一つに結んだ髪。
決して彼らが自らそのスーツを着たいわけじゃないのはわかっています。一人ひとりを見れば、それぞれの個性も見えてくるだろうこともわかります。
しかし、彼らが集団になると少々異様な感じを受けてしまうのです。
いつ頃からみんなが一様に黒い色のスーツを選ぶようになったのか不思議に思っていたところ、新聞にある記事を見つけました。
バブルがはじけた後、就職氷河期といわれた頃から、厳しい競争に勝つためにみんな同じ無難な黒を選ぶ傾向になったようです。それまでは紺やグレーのスーツ、女性はパステルカラーやリボンのついたブラウスなども着ていました。
「他人より浮いた存在になりたくない、目立って減点されたくない」そんな気持ちもわからなくはありませんが、そろそろ「私は私、スーツの色とは関係ない」と思う学生が出てきても良いのではないでしょうか。採用する側の基準はスーツの色ではないでしょうから。
それに黒は、フォーマルな場の装いの色です。洋装の正装は昼夜を問わず黒色です。モーニングコート、燕尾服、タキシードも、全て黒色。そして黒は喪の色でもあります。日本で重宝されるブラックスーツも、慶事と弔事でネクタイを変えれば使えるもの。
実は黒いスーツはフォーマルすぎて、本来ビジネスの場には不向きなのです。
各国の政治家やビジネスマンを見ても、黒いスーツの方は見かけませんよね。
学生ですから何着も持つことは難しいでしょう。
それなら、それぞれに一番似合う色や形のスーツを選んだ方がいいですよね。そして一着のスーツでもネクタイやブラウスの色や柄などを変えて季節感を出したり、気分を変えてみてはいかがでしょう。もちろん派手であれといっているのではありません。ビジネスの場に相応しいというのが大前提です。それでも自分に似合う服を着ているだけで気分は明るく前向きにもなると思うのですが。
「就活生の皆さんそれぞれに似合うスーツをお選びいたします」なんてお店が出てこないでしょうか。
そろそろ就活生も衣替えの時期ではないかと・・・!
鎌倉・明月院
筆者プロフィール
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岡田 承子(おかだ しょうこ) 携わる。現在は、自治体、企業での接遇研修や、NPO法人日本マナー・プロトコール協会認定講師として大学で指導をしている。 |
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柳田 圭恵子(やなぎだ けえこ) 座を行っている。NPO法人日本マナー・プロトコール協会認定講師。 |
本の紹介です |
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