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書評「これからのリーダー贈る船井幸雄の言葉」 中経出版 佐藤芳直(著)

by staff on 2018/6/10, 日曜日
 
タイトル これからのリーダーに贈る船井幸雄の言葉
単行本 255ページ
出版社 中経出版(2012/5/31)
ISBN-10 4806144045
ISBN-13 978-4806144045
発売日 2012/5/31
購入 これからのリーダーに贈る船井幸雄の言葉

「今」を活かす者にだけ未来は開ける(船井幸雄)。帯の言葉に魅かれてしまった。

「運命に対する態度は、私たちに委ねられている。どんないまを選択するかは自分次第。いまを真剣に生き抜く中に未来が見える。」著者は先がみえないときはどう生きればよいのかと問いかけます。東日本大震災後の相次ぐ余震も、人の心をその都度、弱らせました、崩れた荷物が散乱した部屋を、片づけても片づけても余震がまた崩していきます。「崩されても崩されても“整える”。余震が再び書棚を崩してしまってもよいのです。元に復する。整える。覚悟を決めて積み上げることを、最大余震のあった4月7日の翌朝、私は全員に指示しました。それが“人間の営み”だと確信するからです。」船井先生は、危機の対応について語っています。「今を必然だと思って臨むには勇気が必要だよな。その勇気が何よりも大事なんだ。逃げたらダメだぞ」「どんな大変なことでも、その人間にとって乗り越えられないことは来ないのだよ。乗り越えることで何かが見えてくる」著者は先が見えないそのときは、いまを真剣に生き抜くのですと語る。その中に未来があると。「現実を見続けなければ、見えていた目も確実に退化するものです。いまを見ながら未来を“観る”。心がけたいことです。」

「グローバリズムの進展によって、 “絶対多数の国民の最大幸福” という目的を失った資本主義は崩壊せざるを得なくなる。」著者は、みんなの“幸福”というテーマが失われたと言います。本来、資本主義もそこに存在する経営も“絶対多数の国民の最大幸福”という、たった一つの目的の下に存在すべきものです。国家の成長も、世界の進化も、その共通の目的を共有するからこそ、暴走暴虐が抑止されてきたと言います。「いまや富・資本は、瞬時に世界を駆け巡ります。そこには情・良識・純粋な善意・などが介在することはありません。それが、資本主義を崩壊の瀬戸際に追い込んでいます。」船井先生は次のように言われます。「グローバリズムは、世界経済の断末魔現象なんだよ。安く売らなければ売れない。それは馬鹿者の戦略だ。」

「私たちの強みは、いったいどこにあるのか」「すべての答えは自分の中にある。自問自答によって大切にすべきものがわかる。日本の強みは古くからある “縁” と “公” である。」

著者は「すべての答えは、自分のなかにあるものだよ」と船井先生がよく語ってくれたと話される。日本風土の特徴は、稲作中心の農耕社会によって育まれてきた、人間のもつ経験値、暗黙知が尊ばれる社会をよりどころとしてきました。ところが大家族制が崩れ、土地は投機の対象にとなり、地縁、血縁、国縁が失われてきた戦後、社縁だけが日本人のよりどころになっていました。その社縁すら、行き過ぎた成果主義、リストラ、そして派遣法の導入などで失われたこの20年、無縁社会といわれた、砂漠のような風景のなかを私たちは漂流していたのではないでしょうかと表現される。そして、大震災がそんな私たち日本人を襲ったのだと言われます。

「未来を決めるのは自分である。すべての危機は自己決定能力を喪失した時から始まる。自己決定こそが、挑戦なのである。」著者は、自らの未来を決めるのは自分たちであり、その当たり前の意識を一人ひとりがもてていること、組織の活力の源はそこにあるのだと言われます。大震災から始まった「お菓子のさかい」の挑戦を紹介しています。

1.絶対に家業を潰さない
2.絶対にこの土地を見捨てない
3.必ず代を継いでみせる

この厳しい環境ですることは、確かな未来を語り合い、その未来へ向けて今できることをやる、それしかないと言います。そして、未来を語り、今行動する人間を “大人” というのだと心の底から思うのだと言います。

「喜ばれる自分を発見することが、成長の原動力である。そしてもっと喜ばれる自分でありたいから、成長を続ける。」著者は人間はどんな存在であれ、役割をもって生まれてくる、不必要な人間など一人もいないと言います。人間は誰もが喜ばれるために生まれてきます。喜ばれることが、あらゆる人間のもつ共通の役割であり、人間の根源的な願いでもあると思えます。 “喜ばれている自分の発見” こそが人間の幸せ感の中心です。そして喜ばれている自分を発見し、 “もっと喜ばれる自分であるために” という思いが、人間を成長させる起動力になるのですと言われます。

「人は何のために “学ぶ” のか」「学ぶとは、人間の幸せとは何かを知ること。どんな場にも、どんなときにも、学びはある。学びは人間性を高め続けるためにある。」著者は、人間の使命・人生の目的は、”幸せになる”ということです。それは、この世に生を受けた人間の責任ともいえます。学ぶとは、人間の幸せとは何かを知ることでもあると言います。人間の幸せとは何かと、それはお金だけではないと誰でもわかっています。一番の幸せは誰かの役に立ち必要とされ、誰かによろこばれることでしょう。学ぶとは自分を活かし、だれかに喜ばれる方法、道を知るということだと言われます。

「より良く生きるために一番大切なことは、すべてを受け入れ、認めて肯定し、教えられたことに向き合う姿勢にある。」著者は、一瞬一瞬を丁寧に慈しむように生きる、すべてを大切にする船井先生のすがたから教えられる人生の極意と語られる。

1.決して差別しない
2.常に相手の立場で親身に考える
3.即時、相手が必要とする答えを出せる

人生の達人として、弘前市郊外にある「森のイスキア」代表の佐藤初女さんのお顔を時々おもいだすという。森のイスキアは、初女さんの姿に接し、言葉にふれ、初女さんが握ったおむすびをいただくことで、未来に絶望した人々が、未来への希望を抱いて帰っていく場所です。初女さんの言葉と、船井先生の言葉は時にシンクロし、物語の本質を示してくれます。初女さんはこうおしゃります。「私はイスキアに初めてくる方の素性や状況を事前に聞くことはしないのですよ。ただ来る人を受け止めるだけです。ただただ、受け止める」初女さんの行動とは、相手の言葉一つひとつを、愛おしむように聞き続けること、その姿が、悩みを抱く人々の心を開いていくのだと教えられたと言います。

「人間の生き様だけが多くの人の勇気となり、人を惹きつける。人生は長短ではなく、何を残せたか。だれかの心のなかに何を残し得たのかが大切なのだよ。」

著者は “おわりに” で次のように語っています。
「大震災は、真の人間のありさまと社会の向かうべき方向を私たちに語るべく、厳としていまも目の前に存在します。崇高な人間の生き様、助け合い、譲り合い、思い合う社会の本来の姿、美しき未来」「今私たちは、資本主義という一つのパラダイムの終焉を直覚しています。そのなかで、私たちの戻るべき原点を、心の中で理解していると思います。原点に向けて思考し、行動する。そのエネルギーを大震災は心の中に満たしてくれたと感じるのです。」

(文:横須賀 健治)

 

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