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ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第65回)

by staff on 2018/8/10, 金曜日

大浦総合研究所 代表/大浦勇三

ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第65回)

遊びをせんとや生れけむ、戯れせんとや生れけん
遊ぶ子供の声きけば、我が身さえこそ動がるれ

- 梁塵秘抄 -

先日、所用で故郷の石川県に帰りました。北陸新幹線の開通で、金沢は内外の観光客でどこも混雑。駅前の寿司屋は新幹線が走る前後で、売上げが10倍に増えたとか。もともと商売は隣の越中・富山の専売特許で、百万石の加賀・石川は徳川幕府の睨みもあり、武力でなく文化の世界で対抗。富山は安田善次郎を筆頭に、青井忠治(マルイ)・吉田忠雄(YKK)などキラ星のごとく。それに比べ、石川は能・謡をはじめ、蒔絵・九谷焼・輪島塗。更には泉鏡花・室生犀星などの文学者や日本を代表する二人の哲学者の鈴木大拙・西田幾多郎を輩出。鈴木大拙館・西田幾多郎記念哲学館は海外客にも絶大な人気。鈴木大拙館は2011年の開館から昨年末までに30万人を突破したとか。日本でも、ある経済団体トップが魅了され、その影響から経営者の来館が急増したとのこと。ビジネスと哲学は裏表。哲学・禅は世の中の表面にある複雑性を透視するもの。梁塵秘抄では “わが子は二十に成りぬらん 博打してこそ歩くなれ 国ぐにの博党に さすがに子なれば憎う無し 負い給うな 王子の住吉西宮” とあります。バクチ狂いの息子なれど、勝たせたいのも親心。 “コーチが教えすぎて考える訓練がされていない” とサッカー・釜本邦茂。

“遊びをせんとや生れけん” 「遊」

原子力発電所事故と、スペースシャトル事故 原因には共通項がある
リスク対象範囲を専門家集団の世界に限定 事故発生の確率を極小化
更には、事故発生時における対策の不備 反論を許さない空気の醸成
専門家の傲慢と素人の遠慮 生半可な知識は怖い、生身の直観が大事

学問の細分化が進み、深い知見が次々と明らかに。一方で、学問や専門の間には、多くの隙間が生まれています。新たに生まれる隙間の中にこそ、重要な課題が隠れているもの。原子力発電所の事故と宇宙に挑むスペースシャトルの事故の原因には共通項があるといわれます。重視すべきリスクの対象範囲を専門家集団の世界に限定し、事故発生確率を極小化してしまうこと。隙間を専門外として排除する力が働くこと。事故発生時の対策も専門領域の範囲内に限定してしまうこと。専門家としての自負と素人であるが故の遠慮が思考停止をもたらすこと。最後の砦は、命を懸けた生身の直観。 “不幸になってはじめて、人は本当の自分が何者であるのかを知る” とマリー・アントワネット。

“仕事をせんとや生れけん” 「献」

知識労働 コラボレーションは、仕事の標準モデル チームは五人から二〇人
仕事のしやすい環境をつくる 限られた時間の中での価値創造の最大化を狙う
ランチミーティングやコーヒーブレイク オフィスでの掃除・整頓の肉体労働
緩い連携行動を通じた情報共有はアイデア創出の源 多様性と持続性は表と裏

戦争は反対ですが、なかなかなくなりません。その中で、戦地の兵士を支えるものは、食糧・水・医薬品・安全な寝床。しかし、それだけでは不十分。何よりも精神の糧としての書物が不可欠。これこそ人間であることの “表現力・想像力” の源。今後の労働の中心は知識労働であり、コラボレーションは仕事の標準モデルになりそうですが、大事なことは表現であり想像。アウシュビッツ収容所の怖さは読み書きの手段を奪ったこと。それが知的活動を抑圧することに。AIとのコラボレーションも読み書きによる往復運動。その持続が多様性に直結。縄文時代の人骨には、殺されたとみられる痕跡が極めて少ないとのこと。 “往復の力とは、具象と抽象の間を行ったり来たり” と藤垣裕子教授。

“学びをせんとや生れけん” 「学」

若者を鍛えてプロにする 大工職人の育成に教えられる わかるか、できるか、好きか
理解や成績が、ただ良いというのでなく 一生努力を継続できる人材が採用の優先基準
要素技術/スキルは属人性 異種の技術/スキルの融合は、人が出会う場での格闘競技
良質なネットワークの形成 他人とは異なる優先順位で、ものを観ることを大事にする

宮大工の世界は “つまらない仕事の積み重ねの後にこそ、自身の心に通う所作が生まれる。教わったものは自分のものではない” が鉄則。鍛えてプロにするには “わかるか・できるか・好きか” の三つの問いかけだけ。理解や呑み込みが早いだけでなく、一生努力を継続できる人材かどうか。AI時代も頭が良いだけでなく、AIと協働できるしたたかさ・しぶとさが不可欠かも。要素技術/スキルは属人性、異種の技術/スキルの融合は場での格闘競技。良質なネットワークを築き、そこで他人とは異なる視点や優先順位でモノを観ることを鍛え続けられるか。武術の世界も究極は対応の技術。 “なくてはならない存在になる” との覚悟が分水嶺。 “音の河から確かな音を選ぶ” と作曲家・武満徹。

「遊びは仕事、仕事は遊び」
「仕事は学び、学びは仕事」
「学びは遊び、遊びは学び」

今回とりあげた「遊・献・学」それぞれの4行文は、拙書「ビジネス梁塵秘抄(一)~(十)」(全10巻)及び「続・ビジネス梁塵秘抄(一)~(七)」(全10巻)から抽出したものです。次回以降も「遊・献・学」から各々4行文を一つずつ抽出してご紹介していきたいと思います。

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http://www.syplus.jp/ooura/

(第65回了)

 

大浦勇三(おおうら ゆうぞう) プロフィール

大浦勇三(おおうら ゆうぞう)  

大浦総合研究所 代表 (http://www.ne.jp/asahi/oura/ohura-research-institute/

石川県七尾市出身。
早稲田大学卒業、筑波大学大学院修了。
米国経営コンサルティング会社 アーサー・D・リトル 主席コンサルタントを経て現職。
主担当領域は、経営改革/企業再生、経営戦略/情報通信技術戦略策定、業務改革/組織改革、研究開発/商品開発マネジメント、マーケティングマネジメント、ナレッジマネジメント、イノベーションマネジメント、サプライチェーンマネジメント、人材マネジメント、コーチング/メンタリング、プロジェクト/プログラムマネジメント、ベンチャービジネス支援等のコンサルティング。

筑波大学大学院講師、城西国際大学客員教授、名城大学講師、産業能率大学講師、中小企業大学校講師などを歴任。

主な著作物:

  • 「続・ビジネス梁塵秘抄(一)~(七)」<全10巻>(大浦総合研究所:PDF版)
  • 「ビジネス梁塵秘抄(一)~(十)」<全10巻>(大浦総合研究所:PDF版)
  • 「イノベーション・ノート」(PHP研究所)
  • 「ITプロジェクトマネジャーのためのコーチング入門」(ソフトリサーチセンター)
  • 「図解 日本版LLP/LLCまるわかり」(PHP研究所)
  • 「IT技術者キャリアアップのためのメンタリング技法」(ソフトリサーチセンター)
  • 「よいコンサルタントの見分け方、かかり方」(清話会)
  • 「日本のモノづくり - 52の論点」<共著>(日本メンテナンス協会)
  • 「現場主導型の組織運営とスピード戦略」(日本監督士協会)
  • 「eコミュニティがビジネスを変える」<訳>(東洋経済新報社)
  • 「ナレッジマネジメントが見る見るわかる」(サンマーク出版)
  • 「図解 ナレッジ・カンパニー」(東洋経済新報社)
  • 「ナレッジマネジメント革命」(東洋経済新報社 )
  • 「図解 グローバル・スタンダード革命」(東洋経済新報社)
  • 「業務改革成功への情報技術活用」(東洋経済新報社)
  • 「情報化戦略と投資評価・システム運用管理の実際」<編著>(企業研究会)
  • 「会社改革実務辞典」<共著>(産業調査会)
  • 「プロジェクトマネジャー(PM)の育成・スキルアップのためのメンタリングの進め方と実践法」 (ソフトリサーチセンター:CD-ROM版)   など

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