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アートのひみつ(第15回) 花の命は長いから

by staff on 2018/8/10, 金曜日

第15回 花の命は長いから

みなさま、こんにちは!
今回は「花」についてのお話です。季節の花をテーブルに一輪飾るだけでホッとします。気に入った花をそのままとっておけたらいいのに、と思ったこともありませんか?
今回は「押し花」を使ったアート作品を手がけていらっしゃる、横浜在住の押し花インストラクターの上坂文子さんにお話をうかがいました。
押し花が絵になるというより、押し花で描いている!という、ちょっとめずらしい方法で作られている上坂さんの花のアート作品は、どれも可憐でかわいらしいだけでなく大人の女性のエレガントさと美しさを感じます。



---山田
「押し花で絵を描く」ということに私はすごく興味をひかれました。絵の具のように押し花を使われてますね? 作品づくりは押し花を作るところからとうかがいました。
上坂さんが押し花を始めたきっかけはなんだったのでしょう?

---上坂さん(以下敬称略)
23年ほど前、私の結婚式の時にテーブルに飾ってあったチューリップの花を友人が押し花額にしてプレゼントしてくれました。友人は押し花を習っていたので、チューリップを押し花にしたり、額に入れて密封することが出来たのです。
それを見て、押し花に魅せられ、ぜひ習ってみたいと思いました。習い始めてから出産や育児に追われる日々もありましたが、月に1度だけ夫に娘を預けて押し花教室に通いました。
押し花インストラクターの免許を取得するのには、とてもたくさんの種類のお花を押さなくてはいけません。5年の歳月をかけてようやくインストラクターになれました。

当初は趣味だけで楽しむつもりでしたが、幼稚園に入った娘のお友達のお母さんたちが我が家を訪れた際に私の作品を見て「ぜひ、習いたい!」と言ってくれましたので、まずは4人の生徒さんから押し花教室を始めました。
そしてさらには生徒さんの押し花を見た方が、「私も習いたい!」とおっしゃってご紹介を受けたり、作品展をするうちに生徒さんが集まってきました。

---山田
チューリップも押し花になるんですね! そして素敵なエピソードですね。また、押し花はその技術の点でも奥が深そうです。特に、大きな花の作品は間近に見るととても繊細に見えます。
上坂さんが思う押し花の魅力とはなんですか?また、押し花を作るときに苦労されたことはありますか?

---上坂
押し花の魅力は、「花」そのものの美しさ、色や形を活かして、作品が作れることです。小さな花一輪、落ち葉一枚でも、カードにしたり額に入れることでひとつのアートが生まれます。
もともと私は生け花やアレンジフラワーも習っていましたが、花が枯れてしまうことに寂しさを感じていました。しかし押し花は額(フレーム)の中で生き続けることが出来ます。

作るときに苦労する点は、自然の素材であり、画用紙や絵の具とは違うので、変色することや立体的な花をいかに押し花にするかです。
花によって押し方も違います。方法もさまざまで、スポンジを使ったり、お湯にくぐらせたり、半分に割ったり…。バラなどは花びらを全て外して、組み立てることもあります。
そして赤い色素の花は乾燥すると変色をするので、それを戻す技術もあります。当然、花の自然な色は画材屋さんに行けば売っているというものではないので、自宅で花を育てたり、買ってきた花を押し花にしてストックする必要があります。

---山田
なるほど、花の命は長いのですね。それも自分で育てた花が美しく残るのはうれしいでしょうね。自然の色が最大限に生かせるのは押し花の醍醐味でしょうか。
こちらのハイヒールをモチーフにした作品はシルクの艶やかさを感じます。押し花を使った作品(絵)のモチーフはどのようなものから着想を得ているのでしょう?



---上坂
作品のモチーフは特に決まっていません。草花本来の枝の曲がり具合をいかした自然なものもあります。ハイヒールなどの女性らしい題材は好きですし、それらは繊細な花の色彩で表すことができます。
私はフランスや北欧の色彩やデザインが好きで、特に「エディオン・ドゥ・パリ」の本は何冊も私の本棚に並んでいます。また、学生時代に「美術鑑賞」の授業がありましたので、本やスライドではなく美術作品を観に行く授業でした。
毎週必ず東京の美術館に行ったり、銀座の画廊などにも観に行きました。そのような中で、マティス、ピカソ、パウル・クレー、モネなどを観る良い経験をさせてもらいました。

---山田
パリ好きにはたまらないインテリアや庭園、アートにふれること。上坂さんの作品のエレガントな美しさのひみつはそういった経験にあるのですね。
拝見した作品には押し花以外の材料も使われています。透明なアクリル板を使ったものや、オードリー・ヘップバーンの写真…。材料の組み合わせ、または飾る場所によって押し花は生花とちがった「花」の顔を見せてくれますね。
上坂さんは横浜山手西洋館でも作品展示をされていました。今後、どんなシーンで押し花を見せていきたいですか?また、チャレンジしたい表現はありますか?

---上坂
押し花は、自然な素材ですので癒しの効果もあるかと思います。先日、海の見えるとても素敵なホテルに滞在した時に無機質なイメージの絵が飾られていました。こんなお部屋に押し花が飾ってあったなら、きっと心も一瞬和らいでくれることだろう、と感じました。
私の押し花の作品は乾燥剤を入れて密封をする技術によりインテリアとして飾ることができます。
ホテルや病院、レストラン、美容院などに飾っていただけると嬉しいですね。また、一般のお宅のリビングに飾っていただいたり、カードなどでの贈り物にも使っていただきたいです。
今後は、さまざまな紙や絵の具を使った作品づくり、アクリル板を使った透明感のある作品のバリエーションを増やしていきたいです。ワークショップなどでたくさんの方に押し花の魅力をお伝えできればと思っております。

上坂さんの花とともにある生活は、気持ちを豊かに、やさしくしてくれるように感じます。これまで私はどちらかというと押し花はそっとしまっておくもの…、とイメージしていたのですが、草花そのまま思い出と一緒にアートとして身近に置いて楽しむことができることは新しい発見でした。
もっと保存技術が進んでいくとインテリアにも材料として長く使うことができるようになるかもしれません。
アートはいつもかたちを変えて私たちの暮らしに融け合いながら歩んでいると感じます。
上坂さんの作品はいわゆる額縁(フレーム)をこえて広がりを見せつつあります。
押し花のある新しいアートの風景を眺めてみませんか?

◆上坂文子さんの主宰する「Gnome」のホームページはこちら
https://www.asflow.yokohama/
※ネットでの作品販売を只今準備中です。

【今回お話をうかがった上坂文子さんのプロフィール】

  • 静岡県出身 横浜市在住
  • 2001年 押し花インストラクター免許取得
  • 2001年 自宅にて押し花教室を始める
  • 横浜山手西洋館や元町のギャラリー、ヨコハマイングリッシュガーデンなどで展示会を開催
  • ヨコハマアートデパートメント、ヨコハマハンドメイドマルシェなどのイベントに参加
  • 東京のフレンチレストランにて作品展示
  • 東京、横浜にてワークショップを開催

筆者紹介

 
本 名 山田 明子 (やまだ あきこ)
略 歴 東京都生まれ
1994年 女子美術大学短期大学部卒
美術家 臨床美術士
Art Factory星組 代表
 
通信会社勤務を経て、2014年より高齢者施設、企業などへの出張アート教室をおこなう。横浜山手で「大人のためのアート講座」を開催中。
星組、臨床美術についての情報
  Art Factory星組Facebookページ
https://m.facebook.com/art.hoshigumi
 
☆臨床美術について☆
「臨床美術」は医師と芸術家によって作られた芸術療法です。
現在では学校やオフィスでの感性教育、病院や高齢者施設でのリハビリテーションに取り入れられています。

 

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