書評「ディズニーと三越で学んできた日本人にしかできない “きづかい” の習慣」 クロスメデイア・パブリッシング 上田 比呂志(著)
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「気づかいのルーツ」が第1章のコラム1で出てくる。気づかいのルーツは江戸時代に遡ると言われます。「ひっそりした村だった江戸が、幕府が開かれて100年後には当時の世界で最大の人口を擁するまでになりました。現在の東京の一平方キロメートルあたりの人口密度は5700人ですが、当時の江戸は6万人だったと言われています。」そこで、人付き合いの中で守るべきルールをさだめようということになり、そのルールをまとめた本が「江戸しぐさ」であった。「お互いに配慮する」ということです。第1章のまとめの話です。
第2章は「日本人にしかできない“気づかい”の心意気」です。
①「情けは人の為ならず」
②「自分が楽しまなければ人は気づかえない」
③「意識の差がそのまま気づかいの差となる」
④「善意は悪意で返せない」
⑤「放っておくという気づかいもある」
⑥「我慢ほど奥ゆかしい気づかいはない」
それにはつぎのような問いかけが設定されています。
1.‘あなたが働くことで周囲の人は楽になっていますか?
2.‘気づかいとサービスを取り違えていませんか?
3.‘「どう思うか」意識していますか?
4.‘遠慮しすぎていませんか?
5.‘必要以上にかまっていませんか?
6.‘我慢をしていますか?
第3章に「もう一度会いたくなる仕掛けをする」というところがあります。
「細かい配慮を欠かさず、人に興味を示し、約束を守り、行動を積み重ねていくことです」。とあり、つぎのことばが現れます。
衣服は身のあらわれなり。
人にまじわるに、先ずかたちを見る。
次に言葉をきき、次に行いを見る。
貝原益軒「五常訓」
第4章に江戸の知恵として次のモノを出されています。
「三つ心、六つ躾、九つ言葉、十二文、十五理で末決まる」
最初の「三つ心」とは、3歳までに心の豊かさを教えなさいということ。心の豊かさとは何。「人間は生まれたときには心と体が繋がっていません。だから一日一日心の豊かさや感性を磨いてあげて、心と体の糸を繋いであげる。すると、3年で千本以上の糸ができます。」
次に、「六つ躾」とは、6歳までに躾をしなさいということ。
「九つ言葉」というのは、9歳までに世辞が言えるようにしなさいということ。
「十二文」とは、12歳までに文章を書けるようにしなさいということ。
そして、「十五理で末きまる」とは、15歳までに世の中の理、森羅万象を理解させなさいということ。15歳にもなれば、あとは親の責任ではなく、その子自身の人生だと了解されていたのです。「心、躾、言葉、文、理」。大事なのはこの順番ということです。
心を教える前に躾をしてはいけないとも言います。著者は語ります。「どんな分野でも、“職人” “達人”と呼ばれる人たちは、何十年のキャリアをつんでいても、基本に忠実に立ち返る厳しさがあります。ぶれない心をもっているのです。」そして問いかけられます。
心を教えていますか?
基本を徹底させていますか?
第5章は「周囲のだれをも満足させるプロとしての気遣い」です。
「日々の一挙手一投足が人格をつくる」とあります。「人格や人望をつくるのは、ほかでもなく自分自身の行動です。普段からの素行がよくなければ、人にご飯をおごろうと何をしようと、一宿一飯の義理以上の関係にはなれません。恩を売れば信頼関係ができるかと言えば、決してそういうことではないのです。」いつも、何をしているか。人はそうして人を判断します。すべては日々の習慣なのです、と言われます。いいところだけ残して、改良できる所があればどんどん磨いていくことだと言われます。まさに落語家などの名人芸がそれだと言われます。変えるべきもの、変えてはいけないもの、それが何か常に意識する必要があると言われます。
「余白を感じ取る、行間を読む、感性を磨く」という処があります。日本人というのは、余白や行間、その裏に情緒といったものを感じ取るのが上手です、と言われます。「古池や蛙飛び込む水の音」といった俳句や「千利休のわび茶」、歌道、舞踊、座禅、和歌等といったものの活動の中で、余白を感じ取ったり、行間を読んだり、感性だったりを磨いてきたのではないかと言われます。気持ちを汲み取り、仕組みとして動かしていく。それこそこれは日本人しかできないことだと思うと語られます。
最後の問いかけが凄い! 「あたりまえのことを、当たり前にしていますか? やめてしまっていませんか?」 「日本人にしかできない気遣いの心は和の心。それは自尊心を持ち、己を磨いていくことで育っていくものだと思います。」日本人に生まれてよかった。
(文:横須賀 健治)
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