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ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第68回)

by staff on 2018/11/10, 土曜日

大浦総合研究所 代表/大浦勇三

ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第68回)

遊びをせんとや生れけむ、戯れせんとや生れけん
遊ぶ子供の声きけば、我が身さえこそ動がるれ

- 梁塵秘抄 -

日本映画が活況の時代、多くの世界的映画監督が誕生しました。小津安二郎・溝口健二・黒澤明などキラ星のごとく。映画を支える重要な役割が脚本。黒澤監督は、映画監督を目指す若者には脚本を徹底的に勉強するよう助言しました。脚本は映画におけるデザイン。AI時代の21世紀は “デザインマネジメント・スキル” の大切さが叫ばれていますが、日本映画から学ぶことが少なくないかも。その脚本家の代表の一人が橋本忍。芥川龍之介の短編小説 “藪の中” を脚色した作品を書き、それが黒澤監督の手に渡り映画化へ。ただ、黒澤監督からは長編化するよう注文がつき、即座に芥川の “羅生門” を加筆。1950年に映画 “羅生門” が完成、ベネチア国際映画祭でグランプリを受賞しました。その後 “七人の侍・日本沈没・砂の器” などの名作を執筆、黒澤監督をして “映画のばくち打ち” と言わしめました。大胆な構成を腕力で書く勝負師。回想シーンを多用して時間軸を自在に操る職人。梁塵秘抄では “よくよくめでたく舞うものは 巫 小楢葉車の筒とかや 八千独楽侏儒舞手傀儡 花の園には蝶小鳥” とあります。踊りは古代から人間の本能からくるもの。 “歩き続けて沈黙の言語を捉える” と詩人・吉増剛造。

“遊びをせんとや生れけん” 「遊」

死んだら終わり 愚に徹して、本気で生き抜く 後悔はしないという覚悟
いいことばかり望まず、神仏は敬って頼らない 軸さえぶれなければいい
リーダー 安易にレールの上へ乗らないこと 周囲と違ったレンズで観る
指示は明快に 複数でやるデメリットと、一人で闘うメリットを見極める

経営コンサルティングに “RTR:Right Things Right” という手法があります。正しく、うまくいくことばかり検討するのでなく、間違った、うまくいかないことも併せて探索するというものです。いいことばかり考えないこと。想定外のことも当然ありうること。リーダーも安易にレール上に乗らず、周囲と異なるレンズで観察する余裕も。日本には日本のリーダーシップ。欧米は上からのリーダーシップ。日本は周囲・裏方などと協働しながら下から支え、上から見守るスタイル。激動の世紀では両方とも必要。ICT時代はグループワークが主体ですがほどほどに。複数でやるデメリットと一人で闘うメリット。 “合理を超えた問いに合理的な答えはありえない” と哲学者・内山節。

“仕事をせんとや生れけん” 「献」

自分が大事といいながら、組織に気を使いすぎる 自分の居場所をつくる
プレッシャーは重たいが プレッシャーがかからない仕事も、面白くない
世界を知る手がかりはお金でなく創造 具象性と抽象性のキャッチボール
生きるには、強さ以上に弱さを押さえる 病気になっても病人にならない

ブラジル・サッカーで評価される選手は試合で結果を出せる選手。ドリブルがうまいだけで試合に貢献できなければ役に立たない。日本はまず “人” ありきで、欧米は “仕事” ありき。日本は組織や人に気を使いすぎかも。今後は仕事の居場所を自ら築くことが必須。嫌われてもやり遂げる意志・勇気を持つこと。昆虫の生態から学び、 “多様化・分散化・小型化” をめざす道も。その土俵の上で、イノベーションのDNAである “関係性構築力” “観察・質問力” “試行・実験力” を活性化させる。具象と抽象のキャッチボールをどこまで続けていけるか。たとえ失敗しても、そこから学習すれば成功のもとに。 “孤独でなければ、真実を見据えた作品はつくれない” と映画監督・鎌仲ひとみ。

“学びをせんとや生れけん” 「学」

基準を正義におくか利益におくか ただ教わるだけでは知が深まらない
成功のポイントは 相手を信頼する・常識を疑う・自信過剰に陥らない
許容度の振幅を拡大、新しい発見こそ命題 同時並行的な生命体になる
社会は様変わり 人材育成はアートと心得、投資効果だけに固執しない

日本人の素晴らしさはシニア世代を観察すれば一目瞭然。 “生真面目に仕事をしてきた・形式より自らの感覚を大切にしてきた・精確さに拘り理想に向かい命をかけてきた” など。これらの資質をしっかり踏襲した上で、今後はもう少し許容度の幅を広げ、同時並行的な生命体となって新しい道を切り開くことになるのかも。一本道に限定しないこと。インテルの成功は持っているイノベーション力と並行して、培ってきた顧客の期待に応える感性との両立。社会は様変わりで、人材育成も一種のアートと心得、目先の投資効果に固執しないこと。一つのアイデアも、いくつかの抽象化作用を紆余曲折させながら生み出すもの。 “科学の領域を飛び越えないと人間は描けない” と小説家・加賀乙彦。

「遊びは仕事、仕事は遊び」
「仕事は学び、学びは仕事」
「学びは遊び、遊びは学び」

今回とりあげた「遊・献・学」それぞれの4行文は、拙書「ビジネス梁塵秘抄(一)~(十)」(全10巻)及び「続・ビジネス梁塵秘抄(一)~(七)」(全10巻)から抽出したものです。次回以降も「遊・献・学」から各々4行文を一つずつ抽出してご紹介していきたいと思います。

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(第68回了)

 

大浦勇三(おおうら ゆうぞう) プロフィール

大浦勇三(おおうら ゆうぞう)  

大浦総合研究所 代表 (http://www.ne.jp/asahi/oura/ohura-research-institute/

石川県七尾市出身。
早稲田大学卒業、筑波大学大学院修了。
米国経営コンサルティング会社 アーサー・D・リトル 主席コンサルタントを経て現職。
主担当領域は、経営改革/企業再生、経営戦略/情報通信技術戦略策定、業務改革/組織改革、研究開発/商品開発マネジメント、マーケティングマネジメント、ナレッジマネジメント、イノベーションマネジメント、サプライチェーンマネジメント、人材マネジメント、コーチング/メンタリング、プロジェクト/プログラムマネジメント、ベンチャービジネス支援等のコンサルティング。

筑波大学大学院講師、城西国際大学客員教授、名城大学講師、産業能率大学講師、中小企業大学校講師などを歴任。

主な著作物:

  • 「続・ビジネス梁塵秘抄(一)~(七)」<全10巻>(大浦総合研究所:PDF版)
  • 「ビジネス梁塵秘抄(一)~(十)」<全10巻>(大浦総合研究所:PDF版)
  • 「イノベーション・ノート」(PHP研究所)
  • 「ITプロジェクトマネジャーのためのコーチング入門」(ソフトリサーチセンター)
  • 「図解 日本版LLP/LLCまるわかり」(PHP研究所)
  • 「IT技術者キャリアアップのためのメンタリング技法」(ソフトリサーチセンター)
  • 「よいコンサルタントの見分け方、かかり方」(清話会)
  • 「日本のモノづくり - 52の論点」<共著>(日本メンテナンス協会)
  • 「現場主導型の組織運営とスピード戦略」(日本監督士協会)
  • 「eコミュニティがビジネスを変える」<訳>(東洋経済新報社)
  • 「ナレッジマネジメントが見る見るわかる」(サンマーク出版)
  • 「図解 ナレッジ・カンパニー」(東洋経済新報社)
  • 「ナレッジマネジメント革命」(東洋経済新報社 )
  • 「図解 グローバル・スタンダード革命」(東洋経済新報社)
  • 「業務改革成功への情報技術活用」(東洋経済新報社)
  • 「情報化戦略と投資評価・システム運用管理の実際」<編著>(企業研究会)
  • 「会社改革実務辞典」<共著>(産業調査会)
  • 「プロジェクトマネジャー(PM)の育成・スキルアップのためのメンタリングの進め方と実践法」 (ソフトリサーチセンター:CD-ROM版)   など

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