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100年企業を目指して世代交代。ムカヰベーカリー向泰輔さん

by staff on 2010/10/10, 日曜日

ムカヰベーカリー外観

「ヨコハマこの人」第6回目は、今年創業80年を迎えられたムカヰベーカリーの向泰輔さんにお話を伺いました。昔からの変わらない味と品質を守り抜くことで、地元住民に愛され続けている老舗のパン屋さんです。

ムカヰベーカリー 専務の向泰輔さん  
名前 向泰輔(むかいだいすけ)さん
出身地 横浜市中区
年齢 38歳
家族構成 妻1人
現在の住居 川崎市
職業 合資会社ムカヰベーカリー 専務
趣味 映画鑑賞
自分の性格 温厚、小心者…?
TEL 045-321-1848

 

ムカヰベーカリー誕生秘話

創業から現在に至るまでのお話をいただけますか

1930年(昭和5年)に馬車道で創業しました。創業者は祖父です。祖父は、大正時代に天草から上京し、食べるものを扱う仕事につけば食いっぱぐれることはないだろうと、まず銀座の「木村屋」に住み込みでパン作りを学びました。
数年間の修業ののち、外国人も多かった横浜の馬車道に自分のお店を出しました。二階が喫茶室になっていて、内装には大理石も使った当時にしてはかなりモダンなパン屋だったそうです。

 
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しかし戦争でお店を没収されてしまいましてね…。戦後に横浜市西区の藤棚へ移りました。

初代の祖父は新しいパンを作ることに積極的で、戦後の当時はまだどこにもなかったデニッシュなどもすでに作り始めていたそうです。しかし、先を行き過ぎたのか、あまり売れなかったようですね。

私の母が昭和43年に向家に嫁いできて、ちょうどその頃、祖父が倒れてしまい、パン修行を全くしたことのなかった私の父がお店を継ぐことになったようです。

それはそれは…、大変だった、と母から聞きました。
父と母は、毎朝3時に起き、必死でパンを作り続けました。パンの中に入れるあんこもクリームもカレーも、一から全部自分たちで煮て、祖父からの味を守りました。あんこは煮ているとプツプツはねてきて、もう腕やら顔やらやけどだらけでしたよ。あれは辛かったようですね…。

でも、やはり「血筋」なのでしょうね。
父は一生懸命勉強して、色々と新しいパンのかたちを作っていきました。自慢のサンドイッチも父が作り始めたんです。
カリフォルニアのくるみを使った「くるみの時間」というお菓子は、コンクールで全国1位になって賞金をいただきました。
「ゴールデンヨット」という当店で一番高い食パンは総裁賞をいただいています。

「自分が食べておいしいと思わないものは売らない」という考えのもと、素材の品質を決して落とすことなく、添加物も極力使わないことにこだわりました。
だから当店のパンは、とても素朴で人に優しい味がするのです。クリームだって、赤ちゃんが食べても平気なのですよ。

お店が軌道に乗ってきたと実感できたのはいつ頃ですか

1990年、関内に出店しました。1日に600~700人のお客さまに来ていただきました。合同庁舎からも「ぜひお願いします」と言っていただいて庁舎内に出店し、そこだけでも10人の売り子が立つほど売れました。全盛期には全部で7店舗ありました。

関内店を開くときには、ドイツから先生を呼んでお店に立っていただきました。父はドイツの固いパンが好きで、ドイツのバーデン地区に留学したこともあったのです。お店の名前もそこからいただいて「Baden-Baden」としました。

 
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藤棚の本店


しかし、父の考えも色々な意味で早すぎたのかもしれませんね。固いパンはなかなか日本人には受け入れられませんでした。当店で販売をやめた頃になって、よそのパン屋で作り始め、それがテレビで話題になったこともたくさんありましたよ。

現在は3店舗(藤棚の本店、山田町店、第二合同庁舎店)になりましたが、店舗を広げていくことが重要だとは思っていません。やはり食べ物関係は、大量に作ろうとするとどうしても手元が雑になります。そこに目が行き届かなくなると、そのお店はダメになります。
それよりもひとつの場所でしっかりと売上を伸ばし、昔からのお客さまに飽きられないお店になることの方が、本当に大切なことだと思っています。

 
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山田町店

 

「三本の矢」若い世代へたすきをつなぐ

8年前に先代の父が倒れ3年前に亡くなりました。以来、それまでは全く別の仕事をしていた3人の姉兄妹でお店を引き継ぎ、力を合わせて頑張っています。私の姉が経理を担当し、私と妹がパン作りや配達などをしています。

父が亡くなったとき、たくさんのノートが出てきました。パンに関して、独学で一生懸命学んできたことがぎっしりと書き連ねられたノートです。それを目にした時、「お父さん、こんなに苦労してたんだね」と、はじめて父の苦労が伝わってきました。

経営も火の車状態からのスタートでしたが、3人で話し合い「まずは“ムカヰ”本来のパンをしっかり作り、昔からの味と暖簾を守り抜こう」と決めました。
あらゆる種類のパンを作っていましたが、ハード系などの難しいものは思い切って一度止めることにしました。本当は作りたかったのですが、特殊な技術や設備投資を必要としますから、いつかしっかりと力をつける日まで、ひとまず「お預け」としました。

今ではお店も持ち直して来ています。
これからも3人で頑張って若い人が安心して働けるような体制のしっかりした会社をつくっていきたいと思っています。

 

100年企業を目指して

お店を継ごうと思われたのはどうしてですか

もともと継ぐ気はありませんでした。両親の働く姿を見て育ちましたから、商売は休みもなくて大変だな…という思いがありまして。(先ほどもお話しましたが)私が30歳のときに父が病気になりまして、お店の方もうまくいかなくなったのです。そのとき、両親の方からは特に「継いで」とは言われませんでしたが、自分から継ごうと決意しました。力になりたいと思いました。

現在は経営全般や配達の仕事を中心にしています。パン作りに関しては見習い中です。父から学び、かれこれ20年以上も工場で頑張ってくれているパン職人がとケーキ職人がおりまして、その職人たちが代々の父の味を守ってくれています。

やはり、パン作りに関しては全く何も知らないところから入りましたので、お客さまにいろいろと商品のことを聞かれても、うまく答えられず大変に思うときもあります。でも、焼きたてを喜んで持っていってくださる姿を見たり、「昔からずっと通ってるんだよ」とおっしゃっていただけることがとても嬉しいです。

お客さまはどのような方たちですか

9割が常連さんです。毎日来てくださる方もいます。
戦後、まだ幼なかった当時から通ってくれていたというおばあちゃんが、お孫さんと一緒にいらしたりと、親子三代でムカヰのパンを食べてくださっているご家庭もたくさんあるんですよ。
幼稚園の給食のパンも作っていますから、そのお孫さんが幼稚園でうちのパンを食べてくれているのです。「ムカヰのパンがいい!」とお子さんにせがまれて買いに来てくださるお母さんもいらっしゃいます。幼いお子さんでも本当の味が分かるのですね。それが「食育」に通じているのだと思います。

 
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ムカヰベーカリーのこだわりを教えてください

添加物はほぼ使いません。そのため日持ちもしないし、放っておくとカビも生えます。しかし、それでも続けていきたいと思っています。当店に来てくださるお客様は、品質や味でそのことを分かってくださっている方々ですから。

また、近所にスーパーやコンビニ、100円ショップもありますが、値段では太刀打ちできません。だからこそ、昔からの味を守り抜くことで勝負しています。

以前、どうしてここのパンがおいしいのか、専門の方に調べていただく機会がありました。すると、もう60年もパンを作り続けている工場なので、工場内が生きた酵母だらけで、そこらじゅうに住みついているというのです。生きた酵母がウロウロしてパンや人にくっついているから、それを浴びたパンもおいしいし僕たちも元気なのです。
これは時の長さだけが育めるものです。デパートのパン工房で焼いても同じ味は絶対に出せません。

今後の目標を教えてください

100年企業を目指します!
今年で創業80年ですから、あと20年は何としても頑張りたいと思っています。
そしていいものはきちんと残していき、地道に歩んでいきたいです。

 

3代目、生粋のハマっ子です

ご自身の横浜歴を教えてください

昨年結婚して川崎に引っ越しましたが、それまではずっと横浜の実家にいました。
今でも職場は横浜ですから、38年になります。

「横浜」という土地に対する向さんの思いを教えてください

横浜は大好きです。特に中区が好きです。
海があり、夜景が綺麗ですよね。観光スポットとしても素晴らしいし、デートをするにもいい場所です。
東京にも買い物や遊びで行ったことはありますが、横浜にいるとそれほどの必要性を感じません。他の土地にも行きたいとは思いませんし、祖父の代から3代続く生粋のハマっ子だと思っています。

横浜の魅力を一言で表すとしたら何ですか

「おしゃれな町」です!

 
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「ヨコハマNOW」で「ムカヰベーカリー」様の商品のご購入ができます。
ご購入はこちらからです。
バーデン・バーデンのガーリックブレッド

 

人気があるパンを伺って「ヨコハマNOW」編集部で購入させていただきました。
お勧めは・・白あんが入っている「白あんぱん」、具も作っている「カレーパン」、品の良い甘さの「チョコレートパン」や「クリームパン」、・・・あげれば全部になってしまいます。クロワッサン生地に大納言豆の組み合わせが絶妙の「大納言」や全国に冷凍で発送「ガーリックパン」は、他ではお目にかかれない逸品です。
パウンドケーキやアップルパイも素朴な味わいでとても美味しいです。

 

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