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第72回 引き継がれる暮らしの器(家と街並み)

by staff on 2019/2/10, 日曜日

山田スタジオ一級建築士事務所
山田慎一郎

引き継がれる暮らしの器(家と街並み)

以前設計を担当した戸建住宅のはなし。
あたらしい住まいに引っ越されて数年、すっかり都市の別荘となった(トランクルーム化した)旧ご自宅の今後についてクラインアントから相談をうけました。使われなくなると建物はすぐに愚図りますし。これまで幾度となく改築をして、その時の暮らしにあわせ住まわれてきましたが、新規開業されているクリニック近くの住まいのほうが診療業務にもよいのではとの判断から別の住まいへと移られたのです。(クリニックビルは私が設計、新居は著名な建築家の力作)

旧ご自宅、結論からいえばそのまま使ってもらえる方に引き継いでもらうことになりました。クライアントもそうでしょうが、不動産価値が土地のみだったとしても更地にならずに済んだのは、設計する立場でも嬉しい限りです。

さて話は昔に遡ります。今から15年前、夫婦と3歳の男の子、生まれて間もない次男4人家族のための住宅設計がスタートしました。当時のコンセプトは「内部に大きいボリューム(吹き抜け空間)をもったワンルームで将来内部の増改築が自由にできる」ようにすることでした。
同時期にクリニックを開業する(お金かかります!/いま考えるとものすごい決断)タイミングでもあり、ローコストで実現させる必要がありました。設計アイデアとしては「まず最大気積の家形」をつくる。その後余裕ができたら「内部を充実」させれば良いじゃないかと。いま思うと随分と勝手なことを提案していますが、竣工後10数年の間、実際その通りになったわけです。

この住宅、方形屋根を持った平面5間(約9メートル)四方の2階建て、構造は木造です。木造といっても集成材の柱と梁を金属板とピンを使って固定していく、いわば鉄骨造ならぬ木骨造と呼べるものです。ダイナミックな空間です。中央に太い柱を据えてその頂部に斜め掛けした梁と垂木で屋根がつくられ(写真01)、その中央の柱と四方差しの梁によって大きく4つのエリア分けがなされました(写真02、03)。一階は1)外部駐車スペース、2)玄関居間、3)ダイニングキッチン、4)寝室、水まわり、中二階に1)アトリエ(と呼んでいた家族のフリースペース)、二階は2)主寝室とスタディルーム、そして吹き抜け空間二つです。

(写真01)

(写真02)

(写真03)

程なくして1階キッチン、水まわりの改築が行われました。キッチンの位置を移動し、クライアント自らが設計した対面カウンター式のブースと収納量を増やした洗面カウンターの改修です。クライアント夫人の趣味であるライフスタイルコーディネートのための改修でもありました。(写真04)

(写真04)

次の主な改修はもともと子供部屋だった1階を夫婦の主寝室に、2階にトイレ増設+こども部屋を作り直すことでした。吹き抜けに面したスタディルームは文字通り子供たちの勉強スペースとなりました。大きな吹き抜け空間にスペースがあるので、親子での会話をしながらの家事、勉強時間だったそうです。(写真05)

(写真05)

結果最後の改修は平面約半分あった吹き抜けスペースを閉じ、夫婦の主寝室として内部増床させました(写真06)。理由は数年前に誕生した長女のためのスペースをつくるため。結果2階の子供部屋(男子部屋)は1階の元の場所に戻り、2階の壁の位置を変更して小さな個室ができあがりました。おまけといっては何ですが、小さな階段付き収納のおかげでその個室と主寝室上にロフトスペース(ゲストルームと名付けられたごろ寝スペース)が誕生しました(写真07)。何度かのリフォームの結果大きな吹き抜け空間の中にいくつものスペースが積み重ねられていきました。その後残った吹き抜けの上部に部屋をつくることも検討されましたが、「この家の最大の特徴がなくなる」からと途中でストップ。代わりに敷地を少し買い足し、パーゴラがある庭(第二の居間と呼ばれていました)が生まれました。その土地を使った外側への増築ももちろん候補としてあがりましたが、これもまた「当初のコンセプトから外れる」ので結局取りやめ、このことが建物の環境をより良くしたように思います。

(写真06)

(写真07)

この家族の家としては役割を終えましたが、新しい家族のために活躍してくれることを願っています。暮らしの器としてまだまだ改築できる余力をもっていますし、街並みとしてはまだまだ若造ですから。年始に届いた年賀状には、最後にと家族全員での記念写真が載っていました。15年前(と数年前)の手形(写真08)のある外階段での笑顔の5人でした。

(写真08)

さて前回前々回と寄稿した「街のはなし」の続き。温泉施設どころかそんなに古くないマンションも解体中。当初小さかった新駅の工事現場と異なり、近傍の施設も含めて本格的な工事が地上部で始まっています(写真09)。知らない間に地下空間が広がっているのでしょう。この計画に設計者として参画出来ていないのは大変残念なのですが、昔の方が良かったなんてことのない新しい暮らしの器(街並み)となることを住民として期待したいです。

(写真09)

 

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