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田中健介の麺食力-それから- 第6回 「不審に思ったら街の喫茶店へ」

by staff on 2019/3/10, 日曜日

第6回 不審に思ったら街の喫茶店へ

2010年に出版した自著「麺食力 -めんくいりょく-」。横浜の麺料理とその周辺の情景を描きながらほとんど売れなかった可哀想な本。著者自身も出来上がった本に向き合うことなく、ついに来年に出版10周年となるのを機に、改めて当時の内容を振り返り、現在の移り変わりを綴っていく、ついでに啜っていく企画の今回が第六回目でございます。

駅前には古くから「純喫茶」などと呼ばれるような喫茶店があって、チェーン店がしのぎを削る時代の中で、そのエリアに長く根付く条件とは何か。
それを再確認すべく、今回は京急南太田駅前の「珈琲ぱぁらー泉」の今をレポート。
拙著をお持ちの数少ないファンの皆様は101ページを開いてこちらと合わせてお読みくださいませ。ない人は、ないなりに楽しめるよう書いていきますのでご安心ください。

ぱぁらー泉店舗外観。
長年取引している「キャラバンコーヒー」の尽力により、
最近看板を一新した。

南区に住んでいる人ならば知らなければモグリ、と言い切っても決して大げさではないほど、地元では名の知れた喫茶店。かつては南区内に4店舗ほど展開していましたが、現在は京急弘明寺駅そばの六ッ川店とここ南太田店のみ。六ッ川店は神奈川県喫茶飲食生活衛生同業組合理事長の八亀忠勝氏が、南太田店は忠勝氏の息子・淳也氏が担当しています。

淳也氏いわく「俺が学生の頃からあった」ベロア調の椅子。
吉野町のベル・ファニチャーで修理をしてもらいながら大切に使用している。

1967年創業、もう半世紀以上この街に根付いています。周辺が住宅街ということもあり、近所の人々に愛され、南区の多くの主要人物も出入りしている憩いの場となっています。
アンティークな木目調の内装も2階へ上がれば一転して白を基調としており、コンパクトな店舗の中にも見どころが詰まっております。

2017年「カゴメナポリタンスタジアム」関東ブロック予選に出場したナポリタン、
「ポラタ」のサンプル。
京急駅名変更騒動の折には南太田駅を「ポラタ駅」にすると本気で息巻いていたほど、
淳也氏のメニューに対する思い入れは深い。

ここは何と言ってもナポリタン。「ポラタ」という不思議な名前で供されていることに強いインパクトがあります。なんでもオムライスなどに使われる「シポラタソース」から転じて「ポラタ」になったのだとか。
我が日本ナポリタン学会でも2011年より認定店舗として横浜のナポリタンを盛り上げることに寄与いただいております。また、この「ポラタ」で2017年に「第二回カゴメナポリタンスタジアム」関東ブロック予選に出場、惜しくも予選落ちとなりましたが、奇をてらわずに普段お店で出しているもので勝負した姿は立派でした。

「ポラタ」画像。玉ねぎ・ピーマン・マッシュルーム、ベーコンとウインナー。
ウインナーが入っていることがネーミングの由来となっている。
中央にパセリが散らされ、脇にサラダが付いている。
安定のクオリティー。ナポジェニック。

そしてやはり喫茶店では珈琲を。
キャラバンコーヒーのオリジナルブレンド「泉スペシャル」で。

私はこのポラタを度々食べています。ネーミングのインパクトと、ベーコンとウインナーのダブル肉の力強さという部分については特徴的ではありますが、ベースはシンプル。だからこそ飽きが来ずに食べ続けられるのではないでしょうか。
カゴメトマトケチャップの特級を和えてしっかり炒めているシャツに飛ばない系。ブラックペッパーが香ばしく。
サラダとともに完食したら珈琲で至福のひととき。

甘味も充実しているのが喫茶店の醍醐味。
「クリームあんみつ」は地元感が詰まった一品。

ぱぁらー泉でもう一つ特筆すべきは「クリームあんみつ」。伊勢佐木町の「銚子屋」の寒天に、中村町の「清水製餡」のあんこを使用している「ザ・地元」な一品。まさにここでしか食べられない、いや、ここで食べるからこそグルーヴ感が出てくるのではないでしょうか。お腹いっぱいです。

お客の振り込め詐欺被害を防いだことで南警察署より表彰された淳也氏。
困ったことがあれば地元の喫茶店が救ってくれることだってあるという一例だ。

ある日、一人の老婦が不安げな表情でぱぁらー泉に来店しました。息子(を名乗る人物)から突然のトラブルに巻き込まれたから大至急お金を振り込んでほしいと頼まれたので、ATMへ行く前に珈琲で一息つこうとしていたようです。聞けば金額は300万円!! 怪しいと感じた淳也氏はその老婦をお店に引き留め、110番通報。やがて実の息子はそのような催促はしていなかったことが判明し、振り込め詐欺被害を未然に防ぐことができたとのこと。
高齢社会において、ご近所付き合いなども希薄になっているとも言われますが、相談できる誰か、心配してくれる誰かは身近なところにいたりするもの。この世の中、まだまだ捨てたもんじゃない。

八亀淳也氏と拙著。
「身体もお店の備品もところどころにガタが来てますが、商いは『飽きない』です!」

駅前には古くから「純喫茶」などと呼ばれるような喫茶店があって、チェーン店がしのぎを削る時代の中で、そのエリアに長く根付く条件とは何か。
時に面倒臭いかも知れないけど、やはり血の通った人の絆、ふれあいに満ちた憩いの場になっているということ。
そして私にとってはもう一つ、美味いナポリタンがあることでもあったりして。。。

筆者紹介

 
本 名 田中 健介(たなか けんすけ)
略 歴 1976年9月生まれ。横浜市出身。横浜市在住。
武相高校、神奈川大学卒業。
自称エッセイスト、本業は福祉関係。
ベイスターズファン歴35年、CKBファン歴17年。
 
2009年9月、日本ナポリタン学会設立、会長となる。
http://naporitan.org
 
2010年3月、著書「麺食力-めんくいりょく-」(アップロード)刊行
https://amzn.to/2DGVqiU(Amazonへ短縮リンク)
 
2017年5月~ 連載「はま太郎」(星羊社)「田中健介のナポリタンボウ」
https://www.seiyosha.net/
 
連絡先:hamanomenkui@gmail.com

 

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