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ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第77回)

by staff on 2019/8/10, 土曜日

大浦総合研究所 代表/大浦勇三

ビジネス梁塵秘抄「遊・献・学」(第77回)

遊びをせんとや生れけむ、戯れせんとや生れけん
遊ぶ子供の声きけば、我が身さえこそ動がるれ

- 梁塵秘抄 -

“人生100年時代・金融資産2000万円” の言葉が独り歩き。時間やお金はいずれも手段系の話。手段も大切ですが目的があっての話。手段の目的化は大きな落し穴。会議では目的系からスタートしますが、いつのまにか “できる・できない” “ある・ない” などの手段系に論点シフト。目的がはっきりすれば、時間やお金は精度が高まるもの。100年や2000万円ありきではありませんよね。米国GEは20世紀を代表する世界企業で戦略論ではお手本。しかし最近、最古参のNYダウ銘柄からも除外に。全盛時代のCEOのジャック・ウェルチは20世紀を代表する経営者の一人。戦略家でありながら、戦略より人材を上位に位置付けました。何より人材ありきで、次に戦略がきて手段系の戦術はそのあと。人材育成が最優先事項で、ものの見方の深耕こそが核心。ダ・ヴィンチはデッサンの効用を指摘、2人でやって比較し合えば一挙両得と説きました。柔軟に老いるのが黄金律。梁塵秘抄では “山の様がるは 雨山守山しぶく山 鳴らねど鈴鹿山 播磨の明石の此方なる 潮垂山こそ様がる山なれ” とあります。何ごとも面白がるに越したことなし。“老いの悲劇はまだ若いと思っていること”と作家のオスカー・ワイルド。

“遊びをせんとや生れけん” 「遊」

経は人生・組織の縦糸 縦糸を取り付けてから横糸を織り、表からは見えない
いい畳かどうかはイグサでは決まらない 眼には見えない縦糸で決まるという
近道も王道もなく縦に真っすぐの道 やりたいことがあれば、自分の力でやる
何をすべきか、何ができるかは人材次第 組織の縦糸が人材、縦糸こそ生命線

いい畳かどうかはイグサでは決まらず、眼には見えない縦糸で決まるというのがプロの見立て。最近の我々は目に見えることばかり追いかけすぎているのかもしれません。ある予測では、2025年までに世界で高スキル労働者は5000万人不足する一方、低スキル労働者は1億人余剰になる恐れがあるとか。組織の縦糸が人材であり、横糸は教育・教育また教育。 “協働も個の力量が前提” “知のシェアリングもまた個の力量が前提” “コミュニケーションもまた個の力量が前提” 。どの世界も、日々の単調なトレーニングなしにプロとしての大成はないこと。イチロー選手の準備体操における単調さと継続性の凄み。 “子供というのは親の目が届かないところで育つ” と心理学者・河合隼雄。

“仕事をせんとや生れけん” 「献」

二〇世紀は手足に重点を置いた 二一世紀は脳に重点を置く研究技術開発
研究開発費率と研究開発効率は、通常反比例する 二つの積は一定になる
競争 皆と同じ方向に進んで、タイムを競うゲームに限定する必要はない
競争の方向は無限 競争ルールの創造と選択 何であれ継続が一番難しい

20世紀は手足に重点、21世紀は脳に集中。“ブルーオーシャン戦略”では、何より他がやっていないことをやるのが第一。しかも自らを信じてひたすら打ち込むのが第二。視野は世界で、ゲームのルールは異次元へ。皆と同じ方向に進んで、タイムを競うゲームに固執することこそリスク。競争の方向は360度で無制限。創造プロセスをジャズの即興演奏で実験すると、自己表現に関わる脳の神経ネットワークが活発に働く一方で、自己監視に関わる外側の活動は弱まるとのこと。脳が自らにダメ出しする回路を遮断。シニアの後期・義務教育では、この創造プロセスを鍛えあげれるかが勝敗を左右。“映画ではセリフを言うことより表情・行動が大事。要はたたずまい”と映画監督・降籏康男。

“学びをせんとや生れけん” 「学」

若者を鍛えてプロにする 大工職人の育成に教えられる わかるか、できるか、好きか
理解や成績が、ただ良いというのでなく 一生努力を継続できる人材が採用の優先基準
要素技術/スキルは属人性 異種の技術/スキルの融合は、人が出会う場での格闘競技
良質なネットワークの形成 他人とは異なる優先順位で、ものを観ることを大事にする

人間教育を考える上で参考になるのが、昔から受け継がれている職人世界の “わかるか・できるか・好きか” の三原則。もはや知識偏重の教育では将来への備えは不十分。一生努力を継続できる人材の育成。ホモ・サピエンスは、抽象化能力を獲得し、農業で生産能力を向上させ、科学技術力で今日を築いてきました。今後はじっくり時間をかけて高度人材の育成に勤しむことが肝要かも。 “養殖ウナギ” では、急ぐとオスが多くなるらしく、ゆっくり育てるとメスが増えるとのこと。オスとメスがいてなんぼの世界。 “脳” の才能だけでなく “心” の才能も。理論の基盤からデザイン・モノづくりまでの繊細な統合力が決め手。 “満開だけが花でなく、満月だけが月でなし” と美術家・篠田桃紅。

「遊びは仕事、仕事は遊び」
「仕事は学び、学びは仕事」
「学びは遊び、遊びは学び」

今回とりあげた「遊・献・学」それぞれの4行文は、拙書「ビジネス梁塵秘抄(一)~(十)」(全10巻)及び「続・ビジネス梁塵秘抄(一)~(九)」(全10巻)から抽出したものです。次回以降も「遊・献・学」から各々4行文を一つずつ抽出してご紹介していきたいと思います。

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http://www.syplus.jp/ooura/

(第77回了)

 

大浦勇三(おおうら ゆうぞう) プロフィール

大浦勇三(おおうら ゆうぞう)  

大浦総合研究所 代表 (http://www.ne.jp/asahi/oura/ohura-research-institute/

石川県七尾市出身。
早稲田大学卒業、筑波大学大学院修了。
米国経営コンサルティング会社 アーサー・D・リトル 主席コンサルタントを経て現職。
主担当領域は、経営改革/企業再生、経営戦略/情報通信技術戦略策定、業務改革/組織改革、研究開発/商品開発マネジメント、マーケティングマネジメント、ナレッジマネジメント、イノベーションマネジメント、サプライチェーンマネジメント、人材マネジメント、コーチング/メンタリング、プロジェクト/プログラムマネジメント、ベンチャービジネス支援等のコンサルティング。

筑波大学大学院講師、城西国際大学客員教授、名城大学講師、産業能率大学講師、中小企業大学校講師などを歴任。

主な著作物:

  • 「続・ビジネス梁塵秘抄(一)~(九)」<全10巻>(大浦総合研究所:PDF版)
  • 「ビジネス梁塵秘抄(一)~(十)」<全10巻>(大浦総合研究所:PDF版)
  • 「イノベーション・ノート」(PHP研究所)
  • 「ITプロジェクトマネジャーのためのコーチング入門」(ソフトリサーチセンター)
  • 「図解 日本版LLP/LLCまるわかり」(PHP研究所)
  • 「IT技術者キャリアアップのためのメンタリング技法」(ソフトリサーチセンター)
  • 「よいコンサルタントの見分け方、かかり方」(清話会)
  • 「日本のモノづくり - 52の論点」<共著>(日本メンテナンス協会)
  • 「現場主導型の組織運営とスピード戦略」(日本監督士協会)
  • 「eコミュニティがビジネスを変える」<訳>(東洋経済新報社)
  • 「ナレッジマネジメントが見る見るわかる」(サンマーク出版)
  • 「図解 ナレッジ・カンパニー」(東洋経済新報社)
  • 「ナレッジマネジメント革命」(東洋経済新報社 )
  • 「図解 グローバル・スタンダード革命」(東洋経済新報社)
  • 「業務改革成功への情報技術活用」(東洋経済新報社)
  • 「情報化戦略と投資評価・システム運用管理の実際」<編著>(企業研究会)
  • 「会社改革実務辞典」<共著>(産業調査会)
  • 「プロジェクトマネジャー(PM)の育成・スキルアップのためのメンタリングの進め方と実践法」 (ソフトリサーチセンター:CD-ROM版)   など

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